2022年08月05日

ラージ・エンジン・ポリシー

 表題の言葉を使おうと、何回か思ったことがあるが、今まで控えてきた。
 この言葉が英語であるのか、和製英語であるのかが今だにわからないからだ。I田氏が使っているのを見て、それほど違和感を感じないので、今回は使ってみることにする。

 この言葉は高木宏之氏の著作にたくさん出てくる。大きなボイラを持つ機関車を使うと、運転も保守も楽であるということを、繰り返し述べている。車も、アメリカの大排気量の車の運転は、実に楽である。
 井上 豊氏も同様のことを言った。
「C62になって楽になった。C59ではギリギリだった。ほんの少しの余裕があるだけで、こんなに違うものか。」
と思ったそうである。 

 筆者が最初に作った4-8-4は当時最大級のコアレスモータを用い、低ギヤ比にして効率を稼いだ。ギヤ比は低いほど伝達効率が大きいというのは常識である。同じギヤを使っても小動輪の貨物機関車の効率は低い。同速度でもモータの回転が多いからだ。
 そういう意味では大動輪の4-8-4のエネルギィ伝達効率はすこぶる高い。今でも50%以上をマークする。
 もう一つの秘密は、主動輪のクランクピンには複列のボールベアリングが入っていることだ。これだけでも10%弱の差が生じる。寒いときに高速で重負荷を掛けて走らせると、貨物機のこの部分が温かくなるのが分かるのだ。

 筆者は犬に馬車を牽かせるのには反対である。なるべく大きなモータを入れたい。むしろそんなことより、牽かれる物の責任を追求するほうが、生産的である。


コメント一覧

1. Posted by I田   2022年08月06日 23:59
同じギアを使用した場合、動きの滑らかさは、21.5mm(C54)>17.5mm(D52)>15.5mm(9600)で、大動輪ほど良好に感じます。実際に定量化できるか考えてみたいと思います。
とれいん1985-3に全車軸・メインロッドへの玉軸受け装着が載っていましたね。35年以上経ち、漸くHOでも高効率伝動の一端に触れることができました。「ふさわしい」走りの為に、牽かれる側の改善も進めないといけませんね。
2. Posted by dda40x   2022年08月07日 00:25
 やはりそのように感じられますか。父が、回転数の大きな原動機を使ったものでは、ろくなろくな結果が出なかったと言っていました。その理由はいくつかあると思いますが、自動車でも同じ傾向があります。
 押して動くという点では、大きいものが有利ですが、モータから駆動するときの効率の高さについて調査されるのは価値があると思いますね。
3. Posted by 英国型ファン   2022年08月11日 21:37
"large engine policy" は四大私鉄に合併される前の時代の英国の、ミッドランド鉄道が採用した "small engine policy" に対する言葉だと思っておりました。

small engine policy についてはこちらに詳しいです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Locomotives_of_the_Midland_Railway

日本語のカタカナで検索して知った意味とは少し異なるようですが、どちらが正しいのか等は不勉強にしてわかりません。

以上、非常に曖昧な情報にて申し訳ありませんが、一応お知らせまで。
4. Posted by dda40x   2022年08月12日 08:53
 情報ありがとうございます。やはりイギリスでしたか。アメリカの資料にはなく、次はイギリスをと思っていたところです。イギリスは勾配線が少なく、この方法でも行けたのでしょうね。
 
5. Posted by 通りすがり   2022年08月13日 07:22
large engine policy の用例として Ivatt に関する言及がありました.
https://www.gracesguide.co.uk/Henry_Alfred_Ivatt
Google 検索によれば
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0534283X4703720003?journalCode=jila


The G.N. and later the L.N.E. went in for a large engine policy, starting with the Ivatt Atlantios with their enormous boilers.

という記述がある様です (現物未確認).いずれも,Midland の small engine policy に比べると漠然とした意味で使われているのではないかと思います.尚,用例としては big engine policy の方が多く見つかります (Google 検索で large が 332 件,big が 1770 件,small が 3060 件.Google Scholar だと large 1 件,big 18件 small 10件).

一方,片仮名表記の定義的なものとしては,英米で「スモール・エンジン・ポリシー」と呼ばれるものの典型がプロイセン邦有鉄道で,その反対が「ラージ・エンジン・ポリシー」だとありました (高木宏之『国鉄蒸気機関車史』).尚, https://syura-muramasa.hatenablog.jp/entry/20120205/p1 に引用されている記述では「思われます」と断定を避けています.

プロイセン邦有鉄道について small engine policy だとした文献があるのかどうかわかりませんが,Kleinmotorenpolitik で Google 検索しても LMS 関係のものしか見つからず,Kleinlokomotivenpolitik ではヒットしませんでした (politik を分けると LMS 関係が 1 件ヒット).仮にそうした語がプロイセン邦有鉄道について使われていたとしても,Midland の small engine policy と同一視するのは難しいのではないかと思います.

まとめると,Midland の small engine policy に比べ漠然と big engine policy や large engine policy と言うことはあるが,「スモール・エンジン・ポリシー」「ラージ・エンジン・ポリシー」の意味とされていること及び big に対する large の用例の少なさからすると,少なくとも「ラージ」に関しては和製英語と考えた方が良さそうに思われます.
6. Posted by dda40x   2022年08月13日 09:45
 さらなる情報、ありがとうございます。
 私もドイツ語の文献をかなり見ましたが、高木氏のおっしゃるほど出てこないのです。言葉としての、big、small の対比も同様に感じます。

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