2021年07月19日

続 クラウンギヤ

 クラウンギヤは、径が十分大きければラックと同等とみなせるが、20枚歯程度では歯型がでたらめである。点接触をしているから、摩耗がひどく、徐々に崩れていく。ピニオンが硬い材料なら、クラウンギヤが適度に減ってそれなりの形で、ある程度の時間使える。しかし、音がするし、効率も良くない。要するに、減ることを前提にしている。

 ところが以前見たものは、大きな40枚歯を硬質クロムめっきしてあった。これはまずい。そもそも、歯車をめっきすると歯型が狂うから、常識的にはしてはいけないことである。光っているから滑らかだと思うのは、勘違いである。顕微鏡で見ると、表面は粗雑だ。(自動車のエンジンのシリンダ内壁はクロムめっきしてから研磨してある。そうすると、その粗雑面の突起が削り落とされ、無数のクロムの金属結晶の隙間に潤滑油が満たされて摩擦を減らしている。)
 
 ところがそれを使っている人は、嬉しそうに「クロムめっきしてあるから減らない」との”効果”を謳うのだ。大ギヤが硬いと、ピニオンがどうなるか、である。そこで見たピニオンは8枚歯のブラスであった。小さいものを軟らかい材料で作れば、たちまち寿命が尽きる。潤滑油が飛び散る開放されたギヤであったから、あっという間であろう。ギヤボックスを付けない人は大半である。密閉式にして油溜まりがあれば、かなり違うはずだ。

 ギヤ比は、8:40=1:5 であった。割り切れるし、ピニオンが小さ過ぎて、歯型がおかしい。走らせるとギャーという音がするが、本人たちは至って無関心で、静かだと言う。重負荷を掛けると音がひどくなるが、そういう走らせ方はしていない。勾配がない線路しか走っていないのだ。また、各動輪が個別に駆動されるから、牽引力が大きいとは思えない。

 こういうことに注意を払わない人は多い。いわゆる腕の良い模型人にも、この種の人はいる。合葉氏の言う「正しい鉄道模型」の実現は遠いと感じる。

コメント一覧

1. Posted by 一式陸攻   2021年07月19日 21:08
我が国の模型の歯車の扱いはかなりぞんざいですね。
歯数、歯車比、材質、どれをとっても完璧と言える模型は多くありません。
そもそも最適解というものが存在すること自体知らない人が多いといえます。
この辺りメルクリンはよくできています。
かつて我が国の模型雑誌の広告で歯車を自慢していただけのことはあります。

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