2021年06月29日

車軸の太さ

 M10000の改造依頼があったSE氏に完成した部品を送ったら、その日のうちに組付けして、youtubeにupされていた。あまりにも素早くて、驚いた。

 当方としての心配箇所は、付随車の台車の摩擦だった。送られてきた台車の車軸の回転は悪く、機関車の牽引力では牽けないだろうという感触があった。油を替えてみようと思い付いて、洗浄スプレーで溶剤を吹き付けた。もちろん回転させながら、念入りに洗った。乾燥後、Wako'sのエンジンオイルを注し、しばらく回転させて馴染ませた。再度洗って注油した。かなり軽くなったような気がする。200 gの錘を載せて斜面で調べると1.56%でも滑り降りる。 
 油は低粘度であるが、ミシン油より粘い。車のエンジンオイルを替えた時に缶の中に少し残ったのを取っておいたものだ。これでなくてはならぬと言うものではないが、適当な粘度で具合が良い。

 軸の太さ(半径比、テコ比)については、友人たちからいろいろな話題が出た。分かっている人にとっては当然のことだが、初めての人もいるだろうから、少し話をしたい。

 小学生のころ、インディアンが馬で引き摺って荷物を移動させる様子をテレビで見た。簡単なソリの片方を持ち上げて馬で牽かせるのだ。一緒に見ていた父は、「車輪にするとどうして楽に牽けるか、分かるか?」と聞いた。

 もちろんこの問題では、ソリには油を注す条件であり、それと比較するわけだ。これは小学生には難しい質問であった。答は、「車軸が細いから」であった。
 説明は、車軸の直径を車輪の直径の半分にするとどうなるか、から始まった。摩擦部分の速度が半分になるから、熱になるエネルギィが半分になる。それなら1/10にしたらどうなるというわけで、「車軸は折れない限り細くしたほうが有利だ」という結論を導いた。
 それ以来、車軸は硬い材料を用い、できる限り細くしている。潤滑は最重要項目である。


dda40x at 06:29コメント(3)台車 | 物理 この記事をクリップ!

コメント一覧

1. Posted by Tavata   2021年06月30日 17:56
梃子比は本当に大切です。製品でもギヤや車輪フランジの側面がフレームに擦るものなど梃子比を無視したものが散見されます。
また、図鑑などでも、「コロ」から「車輪」への発展を梃子比に言及して説明したものは殆どなく、「転がり摩擦」という言葉で年少者を惑わしているのは問題に思います。
2. Posted by 私も愛読者   2021年06月30日 18:06
素晴しいお父様でしたね。
確かに、車輪と同じ大きさの軸では何の意味もなく、半分にするとかなり楽になり、1/10にすればほとんど損失を感じなくなります。これを中学校で教えないのはおかしいですね。
3. Posted by dda40x   2021年06月30日 20:28
コメントありがとうございます。
父親は、そういうことにはとても熱心で、子供に物理を教えるための工夫をしていました。
理学としての物理ではなく、工学の中の物理を楽しんでいたようです。電気、磁気、力学の話を始めると止まりませんでしたね。好きなことを勉強して、その分野で青春期を過ごした人でした。

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
Recent Comments
Archives
Categories
  • ライブドアブログ