2021年05月26日

続 UP M10000 を整備する

 走らなかった原因は、すぐ分かった。トレーラの車輪径が17.5 mmであるのに、内側軸受の軸径が4.5 mmもある。つまり、車輪径の1/4以上あるのだ。半径比の理解がない。これでは損失が多すぎる。軸を細くして、内側軸受を細く作り替えるべきだ。最大Φ3、できればΦ2にしたい。今回は牽かれるものが3輛以下だが、細ければよく走るはずである。
 たとえボールベアリングを使うとしても、径の大きなものは感心しない。グリースをかき回す損失は、バカに出来ないからだ。

 あるいは、この台車と車輪セットを捨てて、Low-Dのピヴォット軸で外側軸受にするのが、最も簡単な方法である。この台車は外側に流線型のカヴァがあるので、そこに軸受を仕込めば良い。しかし、実のところ、筆者はカヴァが無い方が好きである。

power truck1 前後の動力台車は実に無駄な設計で、ドライブシャフトが中央で折れるようになっている。折れても何の利益もないが、それによって起きる不都合はたくさんある。
 一本の曲がらないドライヴ・シャフトを通しておくだけで、問題は解決する。ギヤボックスを分解すると、径の大きなウォームで、歯の切削は極めて粗い。何もかもが悪い方向に行っている。少しは考えろよ、と言いたい。しかし、考えた結果こうなったのだろう。困ったものだ。

power truck2 ギヤボックスは、反トルクで倒れるような、救いのない構造だ。作用・反作用の法則を知らないらしい。左右の傾きと同時に、前後の傾きも生じる。これでは走らないのも当たり前である。またユニヴァーサル・ジョイントの位相は、もちろん間違っている。(筆者がアジンのところに行ったのは、この発売後2,3年経った頃である。)

 分解検査の結果は、零点である。どこにも正しい部分がない。元の持ち主は怒っていた。
 実は、アジンの工場にこの列車が飾ってあったのを見た。社長にあれを譲ってくれないかと聞いてみたことがある。彼は顔をしかめて、「走らない」と言った。「じゃあ、私が直して動くようにしてあげよう。満足したら、その動力を売れば良い。」と申し出たことがある。
 その気になったようだったが、その後うやむやになった。そのチャンスが30年以上経ってから巡ってきたわけだ。

 ギヤを取り替えてトレーラの車輪を改良すれば、なめらかに走るはずだ。全ブラス製で重いから、素晴らしい惰行を見せてくれるはずである。当時、韓国には鉄道模型を嗜む人がいなかったのは、明白である。アマチュアでも、中学校の理科を100%理解していれば、こんなおかしなものは作らない。

コメント一覧

1. Posted by 読者   2021年05月26日 08:01
今月号のTMSにMPギヤのユニバーサルジョイントの位相が間違っている、という記事が載っています。ようやく月刊誌上でそれが指摘されました。
もう10年以上前からここでは扱われているのに。ほとんどの人は走らせていないのですね。
2. Posted by YUNO   2021年05月26日 12:31
残念なことですが、全人口の過半数は義務教育の内容をあまり理解できていません。これは理科に限らず、すべての教科に言えることです。
企業はその中から人材を奪い合うわけですから、財力のない会社に優秀な人が来る可能性はとても低くなります。
これが資本主義の現実なのです。
給料は安くてもいいから優秀な模型を作りたい、そう考える野心家が何人も現れない限り、模型メーカーが量産する既製品のレベルには期待が持てないということでもあります。
3. Posted by Tavata   2021年05月26日 21:13
まったくもって酷い設計ですね。
工業的なコストダウンや妥協ですらなく、無駄な手間をかけて性能を悪化させているとは愚かな話です。
さて、「重いから、素晴らしい惰行を見せてくれるはずである」という一文が気になりました。摩擦係数が一定(つまり重さに応じて摩擦が増える)なら、惰行距離は変わらないはずです。重いだけではなく、摩擦係数が小さくなれば惰行距離は伸びますし、フライホイールも有効でしょう。
この模型の場合、片台車駆動でしょうから、両軸モータを使って台車と反対側にフライホイールを乗せたら面白そうです。

韓国は趣味として模型が好きな人が居ないのが不幸ですね。経済的な職業選択肢としては他の産業に太刀打ちできないので、模型業界のレベルはダウンしてしまうでしょう。日本は優秀で模型が好きな人が多数いるので、経済性とは別の要素で鉄道模型業界のレベルが比較的保たれているのだと思います。
4. Posted by dda40x   2021年05月26日 22:17
 コメントありがとうございます。
 
 TMSに載っていましたね。問題はそれを読んで、アクションを起こすかどうかです。読者ももっと突き上げるべきです。

 確かに中学校の教科を完全にマスターしている人は稀でしょうね。しかし、好きなことなら頑張って向上していくはずなのですがね。JAMで行われていたコンテストを見ると、とても無理な気がしています。

>摩擦係数が一定なら、惰行距離は変わらないはずです。
 きっと誰かがそこを突いてくると思っていましたよ。径の小さなボールベアリングを入れるか、ピヴォットにしてLow-Dに取替えます。3条ウォームもより性能の良くなったものを用意できました。それだけでも全く違う走りになります。フライホイールは走りを見て、付けるかどうかを決めます。 

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