2021年01月16日

むすこたかなし氏の実験

 ブログでの連載記事が始まってから、毎回の更新がとても楽しみであったと同時に、異なる結果が出るのではないかという、期待と不安があった。
 すべての段階で、筆者の歩んだ筋道を全く同じように歩まれた。なかでも、旋盤を使って旋削していく様子は、緊迫感があった。

 高梨氏はサイエンティストであるから、実験の手順が正しい。この報告は、今後いろいろな場面での模範となるべき例である。意味のない実験をしても気が付かない場合もあるから、参考にされたい。

 基礎実験は手間がかかる。その多大な手間を惜しまず、丹念に一つの次元を少しずつ変化させ、データを取っている。先の伊藤剛氏の実験も、簡単なことなのだが、やらない人が大半だ。
 データ取りの仕事は単調でつまらない。やらねばならないことではあるが、それをしない人は多い。この場面で二つの次元を変化させるようでは、何の価値もない

 筆者も30年前、かなりの時間を掛けてデータを取った。サンプルを作るのが大変であった。サンプルはたくさん作って、所定の寸法のものを選り出し、実験の再現性を高めた。

 車輪を均一に作るのはなかなか難しい。総型バイトを使うのは駄目である。負荷が大きく、組んだ車輪など挽けるわけがない。
 小型の旋盤ではうまくいかない。フィレットは、先を調整した剣先バイトで作る。拡大鏡と特殊なスケールが必要だった。高梨氏は先端Rの決定に、スローアウェイ・バイトの丸みを利用している。これはうまい工夫だ。
 踏面の勾配を決めて、フィレットまで一気に旋削している。これは筆者と同じである。基本を守ったやり方で、負荷が小さく、削り面がきれいである。

 総型バイトを過信する人は多いが、結果は見えている。失敗例はアメリカでもよく見た。挽き目が残るようでは、車輪として用をなさない。総型バイトを特注したと自慢する人は居たが、挽き目を見せてもらったことはない。
 そういう筆者も1つだけ、細いヤスリから総型バイトを作った。削ってできたフランジの角を落とすためのものである。この部分は適当で良く、表裏両面を早く旋削できることに価値があった。

 旋盤作業は熟練が要る。高い旋盤を欲しがる人が居るが、要は骨(コツ)であって、価格はあまり関係ない。うまい人の作業を横から見ていないと、進歩できない。最近は、youtube で素晴らしい例がたくさん見つかるので、見るべきである。それと、旋盤を買ったままで使う人が多いが、一度ばらして整備すべきである。それと、どんどん改造して、自分の”工具”として使えるようにした方が良い。筆者の機械は殆ど原型を留めていない。

 車輪を挽くのは大変だ、と述べた。機関車の動輪8枚を挽くくらいは、やるかもしれないが、貨車の車輪を1000軸挽くのは不可能である。こういうところでケチるのは間違いで、量産屋に発注するべきだ。昨今は不景気で、引き受けてくれるところはあるはずだ。最近の機械の精度は驚くべきものがある。
 今回の発注でできた車輪の径、厚みは1/100 mm以下の誤差範囲である。マイクロメータでも測定できない程度のばらつきしかない。精度の高い車輪を装着すると、それだけで走行抵抗が減少する


コメント一覧

1. Posted by NA   2021年01月16日 06:21
総型バイトについての記憶をたどると、模型人に知られたのは40年位前の〇欧精機とかいう店が作って売ったRP25のバイトが最初ではないでしょうか。高かったですね。
現物を見ましたけど使えそうもないものでやめました。左右の勝手が逆なのです。
フランジ側を突っ切りで切り落とすのが常識なのに、軸端側を落とさねばなりません。逆回転でやれということなのでしょうかね。

あれが正しい設計で皆が使うと、それでまた問題が生じたので、間違っていてよかったのかもしれません。

総型バイトについての今回の警告は価値があります。旋盤作業をしたことのない人はできるものだと思っているでしょうからね。フランジだけの切削は問題なくできますね。

これからもこのような”常識”を伝えてください。
2. Posted by dda40x   2021年01月16日 21:46
 確かにその総型バイトは逆勝手でした。故内野日出男氏が、駄目だ、と言っていたことを思い出しました。
 私のフランジ部だけの総型バイトは小さいので、問題なく使えました。

 総型を使うと省力化できると信じている人は多いと思います。正しい旋盤の使い方をマスターしたいものです。
3. Posted by NA   2021年01月18日 07:13
>負荷が大きく、組んだ車輪など挽けるわけがない。

ここが大事なところですね。剛性のある旋盤で、太い材料から直接挽き出すことはできるかもしれないが、軸に打ち込んだ車輪を軸をつかんで回すのが駄目だとおっしゃっていますね。その通りなのです。
おかしなことを、できもしないのに得意そうに書く人が居ますから、このことは大きな声で伝えて行きたいと思います。
この度はありがとうございました。
4. Posted by むすこたかなし   2021年01月18日 16:34
カツミの車輪を使ったのは、容易には動かせないほど圧入が固かったからという理由もあります。他社の圧入車輪も挽いてみましたが、特に絶縁側がクルクル回って外れてしまいました。ヤトイが必要ですね。

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