2021年01月12日

scientific であるということ (6)

 次元という概念は難しいと思われがちで、敬遠する人は多いが、そんなことはない。日常生活では、時間という次元を含む概念は多く存在する。

 速度は時間当たりの距離変化で、加速度は時間当たりの速度変化である。月給という概念も、ひと月という時間当たりの給金と考えれば、そう難しい話でもない。しかし、昇給があると加速度を感じるかどうかは、微妙である。

 しばらく前の天秤…の件も、剛体の組み合わせでの変位を考えているときに、弾性梁を入れると言い始めたわけだ。弾性があると時間当たりの変位は遅れが生じ、その変位の遅れは、のちに放出されたエネルギィで面倒な動きになる。それを何らかのダンピングを利かせた機構で緩和せねばならない。そういうことを総合的に考えるのは人間の頭ではとても無理だから、とりあえず弾性体を分離し、時間の次元を外して、剛体だけでコマ送りのいくつかの場面での釣り合いを考えるのである。それを最初から弾性梁を導入しようというのであるから、これまたファンタジィに取り込まれているのである。

 議論を始める前に、この話はどの次元での話か、を決めない人とは議論ができないというのはこういうことである。相手が知らない概念を出して、こけ脅しする人も居るが、それは古い手である。実際には、自分自身も理解していない場合もあるようだ。 


 牽引力を測定すると機関車の出力がわかると信じていた人が居た。1950年のModel Railroaderの記事に、それがあった。
 情けないことに時間の次元が抜けていて、全く意味不明の記事であったが、情けないことに、TMSにはその受け売りがそのまま書いてあった。高校一年の物理の教科書レベルの理解ができていない。当時の伊藤 剛氏のクラブ会報での対応は実に見事であったが、TMSには訂正記事は載らなかったように思う。訂正は必要なことだが、尻ぬぐいをしない人たちが雑誌を作っている。

 これは遠い昔の話だと思っていたが、最近もウェブ上にその種の記事があるそうで、進歩が無いことに驚いている。

dda40x at 01:12コメント(3)物理 | 力学 この記事をクリップ!

コメント一覧

1. Posted by 愛読者   2021年01月12日 08:59
5 >昇給すると加速度を感じるかどうか
これには吹き出してしまいました。私の場合転職して給料が増えたときに加速度を感じました(笑)。

さて、イコライザーの説明には感服しました。バネを排除して考えるのは当然です。重ね板バネが使ってある理由もよくわかりました。
イコライザーについての理解が足らない人はかなりいると思います。このブログへのコメントで、かなり前ですが、「落下速度が・・・」と書いた人もいました。本人はいい気なもんですが、横から見ていてお気の毒と思いましたね。
2. Posted by Tavata   2021年01月13日 20:07
連続的な時間変化、特にバネ+ダンパの過渡応答を計算無しで追いかけるのは難しいですね。
慣れればグラフの類型から何となく挙動が予想できますが、やめた方が良いと思います。できるだけ剛体で準静的に考えた方が簡単です。

また、次元は大変に便利なのですが、
ニュートンの運動方程式が身に付いていないと、力の次元[質量×長さ÷時間の2乗]がピンと来ないかもしれません。
運動方程式ma=F(質量×加速度=力)は、
「物体の速度を変化させるには、力が必要」「重いほど速度は変化させにくい」
と考えれば感覚を掴みやすいです。

余談ながら
「カロリーを取ると太る」という話は、カロリーと食品そのものの質量(重さ)の関係性を端折っているために、
「エネルギーが体内で質量に変わる」と聞こえてしまいます(笑)
(エネルギーの次元は[質量×長さの2乗÷時間の2乗]です)
3. Posted by dda40x   2021年01月13日 23:01
 次元はそういう言葉があるので使わざるを得ないのですが、難しく響きます。しかし、日常生活の中には時間当たりとか、面積当たりなどの概念はいくらでもありますから、理解は難しくありません。
 また、勘違いしている人も多く、密度と比重が同じと考えるなどはよくあります。

 データを読む時、その次元を考えない人は多いですね。原発事故の時は極端に多かったのは記憶に残っています。

 貴コメントの最後のエネルギィ→質量は、一瞬、相対論かと思ってしまいました。

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