2021年01月10日

scientific であるということ (5)

 誰がやっても同じ結果になることを、「再現性がある」と言う。再現性がないものはサイエンティフィックではない。それはマジックかもしれないし、錯覚かもしれない。

 筆者は、サイエンティフィックでない人とはお付き合いできない。それは、物理や化学をしっかり勉強していない人とは付き合わない、という意味ではない。「正しいことは何か」を追求し、なおかつ物事の論理性を大切にし、客観性のある人でなければ、議論しても噛み合わないからだ。例えば、ある話をしているときに、それとは異なる次元の話をしようとする人がいる。


 しばらく前にこういうことがあった。石炭の燃焼熱は、無煙炭(anthracite アンスラサイト)のそれが一番大きく、瀝青炭(bituminous coal ビチューミナス・コール)のそれはやや小さい。燃焼熱の定義は、完全燃焼のプロセスで得られる熱量である。そこには時間の次元は入っていない。酸素を十分に与えて、ゆっくり燃焼させたときの値だ。

 ところが、蒸気機関車での燃焼はそういうものではない。どんどんくべると揮発分が出て、それに火がついて大きな明るい炎を作り、その輻射熱で加熱している。そのためには煉瓦アーチで炎を大きく曲げることが必要で、燃焼室が大きいほど有利である。当然煙も出て不完全燃焼しているが、早く燃える燃料は機関車の出力増大に直結する。出力(仕事率)の次元は、時間当たりのエネルギィであるから、多少燃焼熱が小さい瀝青炭であっても、燃焼速度が大きければ出力が大きくなるのである。それなのに、その人は「無煙炭を燃やす機関車の出力が小さいのは、燃焼熱が小さいからだ」と言って聞かない。燃焼熱は最大であることぐらい、理科年表を見れば載っている。含まれている炭素分が多いからだ。データを読み、何が問題かを正しく捉える姿勢が無いと、議論の入り口まででさえ、たどり着けない。

 これは極めて客観的な話であるのに、先入観に左右されている。次元というものに対する理解がないため、聞く耳を持たない状態であって、大変疲れた。多分、その方は今でも自分の間違いには気付いていないだろう。不思議なのは、その方が実物業界(もちろん技術系)の方であったことだ。


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