2021年01月06日

scientific であるということ (3)

 低抵抗を得るというのは、いくつかのファクタを小さくすることである。

1.フランジがレイルを擦ることによる抵抗
2.行路差による摩擦
3.摩擦係数
4.2点接触による速度差から生じる損失

 これらの中で一番大きいのは、1.である。NMRAのRP25は実物の形態を少しでも真似すべきという幻想にとらわれた結果であって、中世ゴシック建築のアーチにある ogive(オーヂャイヴと発音)をとり入れている。形にこだわって性能を落としているのだ。プラグマティズムとは正反対の方向にある。
 示されている数字はでたらめで、絵が描けないものがあるが、それすら無視して強行している。描けるものについては、筆者の作図によればフランジ角は、79度である。この角度は大きい。描けないものについて、彼らは間違いを認めない。情けない限りである。こんな部局は潰すべきだ。

 2.の行路差は、意外に大きい。模型の線路の曲率が大きい(急カーヴ)ので余計に影響が大きくなる。踏面のテーパでは賄いきれないから、行路差を補償するのは別の要因(フィレット)の効用が大きい。また、2軸台車では後ろの車輪は外周レイルには接触しないから、行路差は殆どそのまま出る。

 3.の転がり抵抗は静止摩擦抵抗の関数である。静止摩擦係数が大きいものは転がり抵抗も大きい。なるべく堅い材質のレイルと堅い車輪との組み合わせが、良い結果を生む。さらに異なる材質の組み合わせが、ベストの結果をもたらす。
 行路差の損失は、摩擦係数が小さいほど小さくなるのは自明だ。 

 4.の 2点接触は、二つの意味を持つ。最初は1.のフランジの接触である。フランジの先が触るような車輪は脱線機そのものであるから、全く考慮に値しない。捨てるべきである。次はフィレット付近の接触(RP25で見られる)である。レイルヘッドの半径と比べて相当に大きな半径のフィレットを与えておけば、いつも1点接触になり、抵抗は大幅に減る。
 このあたりのことについては、実物形状を縮小することにのみ価値を認めている人、また、実物理論を出して来る人は、引き下がらない。このあたりの2点接触は、速度差が小さいから無視できるなどと断言している人まで居る。1点接触にする工夫ができれば、はるかに勝るものができることを否定するのである。全くもってサイエンティフィックでない。実物では無理でも、模型なら1点接触は可能なのだ。レイルも車輪も十分に堅く、潰れることがないからだ。 

 「フィレットは接触圧でレイル・車輪が破壊されるのを防ぐためのものである。」という主張には参った。この種の知識を振りかざして模型に対しても適用すべきだと言う人は、模型作りをするべきではなさそうだ。

 我々は模型を走らせたいのであって、実物を走らせたいのではないのだ。このように現実とファンタジィの区別がつかない人とは、話ができない。ここで言うファンタジィとは、実物を縮小した世界に縮小された自分も存在し、実物の理論が100%適用される世界に生きているという妄想の世界である。縮小模型は本物とは異なる挙動をするという常識が欠落している人の生み出す幻想だ。

 実物理論を模型に適用するというのは、ほとんどの場合において、サイエンティフィックではない。

コメント一覧

2. Posted by Tavata   2021年01月07日 19:49
むすこたかなし氏の方にもコメントしましたが、同じ方向性ですね。
ただ、私は「フランジとの接触」と「2点接触」を区分しておりませんでした。
確かにフィレットの範囲内で2点接触することもありますね。

整理すると
フィレット半径<レールヘッド半径 では2点接触、
フィレット半径=レールヘッド半径 では面接触(最悪のケース)、
フィレット半径>レールヘッド半径 では1点接触
ですね。

実物では、掛かる応力(面積当たりの力)が大きく、弾性変形や磨耗によって、車輪とレールヘッドは常に面接触しますから(そうでなければレールヘッド全体が光りません)
1点接触や2点接触という議論自体がナンセンスでしょう。
3. Posted by dda40x   2021年01月07日 21:37
明日の記事にも書いてありますが、重いものではこの程度のことは無視して差し支えないのですが、軽い模型ですし、急な曲線を曲がっているので、無視できませんね。

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