2020年09月30日

GTEL

 GTELとはGas Turbine Electric Locomotiveである。ヂーテルと発音する。アメリカ中探しても、UP以外の大量採用例はない。 

 どうしてGTELが登場したのかという理由は、燃料の安さということに行きつく。ガスタービンというものは連続燃焼であり、燃えるものなら何でもエネルギィに変えることができる。天然ガスだろうが、石炭ガスだろうが、重油だろうが構わない。ただし効率はそれほど高くないから、燃料が安いということが条件となる。
 戦後のアメリカでは低品質の重油がとても安かった。Bunker Cというグレードのものが極端に安かったらしい。これは石油を蒸留して順にガソリン、灯油、軽油、軽重油を取った残りで、常温では流動しにくいが、温度を上げれば流動するというものであった。1950年頃は原油の15%ほどがこの残渣油であり、船で燃やす以外の用途があまり無かった。その中でも最低級のものは極めて安価だったらしい。
 これを使えれば、大きな経費節減となる。一方、当時のディーゼル・エンジンはそれほど高性能ではなく、また故障も多かった。そういう時代に、次世代のエンジンとしてガスタービンは華々しく登場したのだ。
 もう一つのファクタとして、UP本線の沿線には海がないことである。潮風に含まれているナトリウムイオンは、重油の中のバナジウムと結合し、タービンブレード上にガラス状のバナジン酸ナトリウムとなって析出する。UPでは、その種の心配がなかったからだ。ガスタービン動力の船はその問題をクリアするのに、苦労している。

 その後、石油化学が進歩すると同時に、プラスティックが大量消費される時代が来た。プラスティックの原料はエチレンである。エチレンは、その重油を高温で触媒に接触させて分解する(steam cracking)と、容易に得られるようになった。するとタダ同然だった重油が価値を持ち始め、燃料費を節約することができなくなってしまった。
 また、安い重油を燃やすと燃え残りもあり、それがタービンの羽根に付着することもあって、意外と保守費も掛かるものであった。

 燃料費の高騰につれディーゼルエンジンの価値が増し、高性能エンジンの開発と高効率で保守不要のオルタネータ、シリコン整流器の採用により、1960年代末にはGTELの時代は終わった。


 筆者はその機関士であったTom Harvey に、運転状況等を詳しくインタヴュウしているので、紹介していこう。ガスタービン機関車の運転に関する記事は世界中見ても稀なことであるから、徐々に進めていきたい。

8500HP GTEL まず、運転マニュアルを見てみよう。これは意外にページ数が少ない。言い換えると、運転に際してはあまり難しいことがなかったようだ。


コメント一覧

1. Posted by YUNO   2020年10月11日 20:36
燃料費が高騰した要因がとても興味深いです。
これは鉄道業界だけを見ていると、とても想像が付かないですね。
ポリエチレンは現代の生活に欠かせない材料になりました。
2. Posted by dda40x   2020年10月16日 14:19
ガスタービンを導入したUPも、まさかここまで重油が高くなるとは思わなかったのでしょう。燃料費がタダの次でも、機関車の維持費がかなり高いものだったそうで、重油が高くなれば即廃車だったようです。
同時に高性能ディーゼル機関と交流発電機、シリコン整流器の採用により、ディーゼル電気機関車の信頼性が急上昇したのです。

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