2020年08月15日

模型とラジオ "鉄道模型部品ものしり帳"

Mokei to Radio (3) ”模型とラジオ”という雑誌があった。”模型と工作”誌には合葉氏が興味深い記事をたくさん書いていたが、”模型とラジオ”誌にはより実践的な工作記事が載っていた。1961年の4月号の別冊付録は珍しいことに、鉄道模型の部品価格の絵入りカタログであった。いったい何度これを読み返したであろう。既にОゲージは斜陽化が始まり、HOの時代が始まっていた。 

 近所の模型屋の店先の3線式Oゲージはトイトレインから脱却できず、子供の眼から見てもつまらないものに見えた。ごく一部の腕のある模型人は、2線式の重厚な模型を作り、座敷に敷いた線路上の運転を縁側から見せてくれた。それに対抗するHOも、さほど素晴らしいものではなかった。大きさ以外に何が違うかと言うと、直流運転で逆行が簡単であったことだ。

 Oでも椙山氏の率いるクラブではDC化が完了していたが、一般にはセレンがとても高価で、DC化は進まなかった。子供の小遣いではとても買えなかった。 1.3 Aで475円という札が掛かっていて、それを見つめてため息を漏らしていた。
 母方の祖母が来た時、何か欲しいものはないかと問うので、それを買って貰ったのは嬉しかった。直流がいくらでも取れるので、鉛蓄電池を充電して、それで機関車を走らせて遊んだ。鉛蓄電池は内部抵抗が小さいので、脱線してショートすると電線が発火した。畳に焼け跡が付いて、それを削り取るのには苦労した。その他、ここには書けないような事故を連発しつつ、DC運転を始めた。父は心配して、二重の安全装置を付けてくれた。楽しい小学生時代であった。

Mokei to RadioMokei to Radio (1)Mokei to Radio (2) この”ものしり帳”を見ると、例の Marn-o-Stat が付いた写真があり、価格は16,000円である。直流電源は高価である。日本製の機器は工業製品を並べたものであり、それなりの機能、正確さを持っていたように思う。アメリカでMarnoldの製品をいくつか見たが、電圧、電流計はひどい物であった。プレスしたブリキでできた箱に怪しい針がつけられていて、誤差は2割くらいあった。しばらく持っていたが、捨ててしまったので写真を見せられないのは残念だ。0 Vがセンターにあるのだけは良かった。
 スロットルの武骨さを見れば、それなりの出来を期待するが、板が薄く貧弱なものであった。

 Marnold の製品は、彼の合理主義の設計思想がよく見えるものばかりだ。安く、効率を高くするにはどうしたらよいかを考えて、実現した人ではある。センタータップ・トランスを使用していたのは知らなかった。セレンが1枚であるのも驚きだ。セレンの性能は、後期には製造所のノウハウによって、随分と差があったことも分かった。高性能なものが存在したらしい。アメリカで見た彼のパワーパックの筐体は薄い板でできていて、いくつかのコンポーネントを完全に組立てて結合しないと、強度が出ない物であった。天賞堂の筐体は、その点、剛性が高く素晴らしい。
 

 これらの写真は小栗彰夫氏の蔵書を撮影戴いた。実は筆者も持っているのだが、書き込みが多く、人に見せられたものではないので、程度の良いものを提供戴いた。

 この記事のレオスタットは日本製であることが判明したので、お詫びして訂正させて戴く。(6/1/2021)

コメント一覧

1. Posted by ゆうえん・こうじ   2020年08月15日 09:42
そういえば昔のカツミのHO完成品には、ヘッドライトの切替用にも小さなセレン整流器が載っていました。
セレン整流器が高価だったためか、カツミのフリーEBシリーズには、車軸にかるく巻き付けた真鍮板がパタパタ動いて前後進でライトを切り替える仕掛けがついていたのを思い出しました。
2. Posted by LOCKE   2020年08月15日 11:01
5 科学教材社の「模型とラジオ」懐かしいです。

出会ったのが休刊直前の末期辺りで、子供の頃のなけなしのお小遣いで何とか買えた数冊を持っているのみですが大事にとってあります。

鉄道模型加工でのエッチング処理の質問を掲載していただいたのも良い思い出です。
3. Posted by 愛読者   2020年08月15日 12:36
レバー型のスロットルの製品名はMarn-O-Stat、 作っているメーカーはMARNOLD社というんですか。貴重な情報ありがとうございます。
ebayで検索できました。少しですが出品されています。
TMS75号(昭和29年11月)のミキストには、H.J.Braun氏の作としてレバー型レオスタットの紹介があり、恰好良いなと思っていました。
運転台の形を模したトランジスタコントローラーも良いですが、この形式もアナログでいいですね。
しかし、このMARNOLD社のカタログ、鉄道模型の電気の基礎がよく分かるカタログと思います。
4. Posted by dda40x   2020年08月15日 16:47
 本文中にも書きましたが、つくりはかなり荒っぽいので、期待して買うとがっかりします。写真を見て自作される方が良いと思います。
 回転軸に可変抵抗器軸を置くだけですから難しくはありません。回転角が130度ほどですから、相応の可変抵抗器を選ぶ(これが一番楽)か、ギヤで連動する必要があります。電圧制御にしないと、現代の模型は制御できませんから、ご注意をお願いします。

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