2020年07月10日
3D プリンタで用いる樹脂
3Dプリンタでいろいろなものを作ってみた。細かい造作を必要とするものはアクリル樹脂で作ったが、台車はそうはいかない。台車にはいつも力が掛かっている。要するに車重を支えているし、走行時は様々な角度から加速度が与えられるから、瞬間的にはかなり大きな力が掛かる。へたらない材料で作る必要がある。
合成樹脂は熱可塑性と熱硬化性に分かれる。前者はいわゆるプラスティックであり、加熱すると流動する。後者はベークライトで代表されるような加熱しても融けない樹脂である。元々は、plasticとは、こねて形を作れるという意味である。漢字の塑という字に相当する。
さらに熱可塑性樹脂は、非晶性と結晶性とに分かれる。
非晶性のものは、力を入れると少しずつ伸びていく。伸びたものは元に戻らない。塑性変形するのだ。また温めてやると徐々に柔らかくなり、形が変わる。融点がない。即ち、ある温度で急に液状になるということはない。冷やすとその形を保ちながら収縮する場合が多い。
普通の人が想像するプラスティックはこれに類する挙動を示す。これを「流れる固体」と称する場合がある。常温では固体のようにふるまうが、大きな力を掛けると少しずつ変形する。温度を上げると見るからに流体であるが、低温ではその粘性が極端に大きく、固体に見える。このようなものを台車に使うとどうなるだろう。長い年月が過ぎると、台車は少しずつ撓み、ボルスタは線路面まで下がるだろう(いわゆるクリープが起きる)。
常温でその粘りけが無視できるくらい固いもので作ったものが、いわゆるプラスティック・モデルである。これは夏の暑い日でも垂れてくることはない。しかし力を掛けていると徐々に変形するはずだ。80 ℃以上ではくたくたになることがある。それには、ポリスチレンという樹脂が使われている。
軽い物なら良いが、重い物を支えると変形するわけである。また、温度を上げて200 ℃以上にすると極めて流動しやすくなり、ポンプで型に押し込むことができる。これが injection mold 射出成型 だ。非晶性のものは高分子の側鎖が大きく、お互いに近づきにくいものが多い。たとえば、ポリスチレンでは大きなベンゼン環が飛び出していて、邪魔をしている。より耐熱性を持たせたものはABSである。
ここまでを読むと、不思議な気がするに違いない。HO、N のプラスティック車輛にはABSが使ってあるが、へたっているようには見えない。
それは車重が小さく、目に見える変形を起こすほどの力が掛かっていないからである。しかし、何十年何百年も経てば少しずつ変形するはずである。しかし、人間の寿命はそれほど長くはないかもしれないから、それで良いことになっているわけだ。しかし、早く変形する模型もあるだろうし、長生きする人もいる。また、エアコンのない部屋に放置するということもあるかも知れない。
合成樹脂は熱可塑性と熱硬化性に分かれる。前者はいわゆるプラスティックであり、加熱すると流動する。後者はベークライトで代表されるような加熱しても融けない樹脂である。元々は、plasticとは、こねて形を作れるという意味である。漢字の塑という字に相当する。
さらに熱可塑性樹脂は、非晶性と結晶性とに分かれる。
非晶性のものは、力を入れると少しずつ伸びていく。伸びたものは元に戻らない。塑性変形するのだ。また温めてやると徐々に柔らかくなり、形が変わる。融点がない。即ち、ある温度で急に液状になるということはない。冷やすとその形を保ちながら収縮する場合が多い。
普通の人が想像するプラスティックはこれに類する挙動を示す。これを「流れる固体」と称する場合がある。常温では固体のようにふるまうが、大きな力を掛けると少しずつ変形する。温度を上げると見るからに流体であるが、低温ではその粘性が極端に大きく、固体に見える。このようなものを台車に使うとどうなるだろう。長い年月が過ぎると、台車は少しずつ撓み、ボルスタは線路面まで下がるだろう(いわゆるクリープが起きる)。
常温でその粘りけが無視できるくらい固いもので作ったものが、いわゆるプラスティック・モデルである。これは夏の暑い日でも垂れてくることはない。しかし力を掛けていると徐々に変形するはずだ。80 ℃以上ではくたくたになることがある。それには、ポリスチレンという樹脂が使われている。
軽い物なら良いが、重い物を支えると変形するわけである。また、温度を上げて200 ℃以上にすると極めて流動しやすくなり、ポンプで型に押し込むことができる。これが injection mold 射出成型 だ。非晶性のものは高分子の側鎖が大きく、お互いに近づきにくいものが多い。たとえば、ポリスチレンでは大きなベンゼン環が飛び出していて、邪魔をしている。より耐熱性を持たせたものはABSである。
ここまでを読むと、不思議な気がするに違いない。HO、N のプラスティック車輛にはABSが使ってあるが、へたっているようには見えない。
それは車重が小さく、目に見える変形を起こすほどの力が掛かっていないからである。しかし、何十年何百年も経てば少しずつ変形するはずである。しかし、人間の寿命はそれほど長くはないかもしれないから、それで良いことになっているわけだ。しかし、早く変形する模型もあるだろうし、長生きする人もいる。また、エアコンのない部屋に放置するということもあるかも知れない。
コメント一覧
1. Posted by むすこたかなし 2020年07月11日 12:44
屋根裏部屋に保管してあった多くのプラ車両(欧州型)が、夏場の室温上昇で変形した(涙…と知人が申しておりました。
国内のメーカーでも、購入時に車体と床板の嵌め合いがズレた状態のエラー商品は、いくら頑張っても車体が開いたままで直りません。
天賞堂の二軸貨車を「エボナイト製」と呼ぶ人は私の周りにも多くいますが、ワークスK氏の調査によると「プラスティック製」としか書かれていないそうですね。
http://works-k.cocolog-nifty.com/page1/2011/11/tms-faca.html
(後半【追記9】で、IRやGCで「ベークライト」と同定された方には頭が下がります)
国内のメーカーでも、購入時に車体と床板の嵌め合いがズレた状態のエラー商品は、いくら頑張っても車体が開いたままで直りません。
天賞堂の二軸貨車を「エボナイト製」と呼ぶ人は私の周りにも多くいますが、ワークスK氏の調査によると「プラスティック製」としか書かれていないそうですね。
http://works-k.cocolog-nifty.com/page1/2011/11/tms-faca.html
(後半【追記9】で、IRやGCで「ベークライト」と同定された方には頭が下がります)
2. Posted by YUNO 2020年07月11日 13:02
こちらに興味深い実験のビデオがありますので紹介します。
https://www.youtube.com/watch?v=vLrISrkg46g
3Dプリンターの製作物は、印刷したままではなく、一度加熱すると強度が格段に上がるようです。ビデオの中では焼き鈍しと表現されています。さらにコメントでも様々な意見が寄せられています。
耐久性を必要とする用途では、このような手法の組み合わせも有効かもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=vLrISrkg46g
3Dプリンターの製作物は、印刷したままではなく、一度加熱すると強度が格段に上がるようです。ビデオの中では焼き鈍しと表現されています。さらにコメントでも様々な意見が寄せられています。
耐久性を必要とする用途では、このような手法の組み合わせも有効かもしれません。
3. Posted by Tavata 2020年07月11日 13:23
ABSのクリープ現象は私も関心があります。
最近、NやHOスケールで機能性部品を沢山作っているのですが、割れにくいという理由でABS板を使い、ホゾ組の溶着組立構造にしています。車重が直接かかる部品ですが、小スケールなら問題ないとしています。
その一方で、複数の方からOスケールやGスケールで同じものを作って欲しいと言われています。ただ、Oスケール以上では、HO向けをそのまま拡大した設計ではマズいと思い、お断りしている次第です。
形が相似なのと力学的に相似なのは違うので、スケール毎に材料の使い方も変わってくると思います。
最近、NやHOスケールで機能性部品を沢山作っているのですが、割れにくいという理由でABS板を使い、ホゾ組の溶着組立構造にしています。車重が直接かかる部品ですが、小スケールなら問題ないとしています。
その一方で、複数の方からOスケールやGスケールで同じものを作って欲しいと言われています。ただ、Oスケール以上では、HO向けをそのまま拡大した設計ではマズいと思い、お断りしている次第です。
形が相似なのと力学的に相似なのは違うので、スケール毎に材料の使い方も変わってくると思います。
4. Posted by sktrokaru 2020年07月11日 15:53
非晶質ということでは屈折率の違うガラスをうまく組み合わせて射出整形し模型を作ったら綺麗かもなどと考えてしまいました。
5. Posted by YUNO 2023年01月22日 17:35
HOやNでも、設計がまずくてABSが問題を起こした例はたびたび目にします。
例えば、金属の軸が圧入されたABS製のユニバーサルジョイントは機械的ストレスで高確率で破損するため、この動力機構を採用した車両は不動品として中古屋で捨て値になっています。
例えば、金属の軸が圧入されたABS製のユニバーサルジョイントは機械的ストレスで高確率で破損するため、この動力機構を採用した車両は不動品として中古屋で捨て値になっています。