2020年03月12日

トロイダル・コア

 昨年末に、むすこたかなし氏から相談があった。炭素棒ハンダ付け機の電源を作る工夫である。トロイダル・コアのトランスを二段階接続して(これを直列接続とは言うべきではない)、100 Vから 5〜6 Vを得る方法だ。素晴らしいレポートがあるので、詳細はそれをご覧戴きたい。

 驚いたのはそのトランスが一つ1000円ほどで出ているということである。パチスロというものがある。筆者にはどんなものか見当もつかないが、ソレノイドを多用した遊戯装置らしい。大電流を使うという話だ。出力は 24 Vで 10 A〜20 Aの電流が取り出せる。このトランスの放出は今だけなのか、それとも継続的に行われるのかも見当がつかないが、現在はインターネット・オークションでいくらでも見つけ出すことができる。 ただ一つの懸念は、たくさんの人が同時に買おうと殺到すると価格が上がってしまうことだ。そこはわきまえて安く買う工夫をされたい。

 トロイダル・コアは、変圧器の鉄心としては最も高効率のものである。昔、筆者の父が作ってくれた変圧器は戦災で焼けたケイ素鋼板をネジで締めたもので、通電するとブーンと音がした。隙間があったからだ。これは全く音などしない。

transformers 仕様を絞って見て行くと、出力 41 Aというとんでもないものが見つかった。要するに1 KVAである。質量は9 kgもある。これを2段目に使い(右) 、1段目に350 VAの(左) を使うと、1段目の容量が無駄にならない。それを購入して、2段目の入力を1段目の出力に圧着端子で固定接続した。総質量は12 kgある。そう簡単には動かせない。

 筆者は、炭素棒ハンダ付け機は既に2台持っているが、いずれも出力不足に悩んでいた。より大きなものを付けたい時には大電流の機種が必要であったので、安価にそれが実現できるわけでありがたい。もちろん、2回も変圧器を通すのだから、損失は多少はある。しかし、長時間使うものでもないので、安くできれば、電気代がわずかに余分に掛かろうとも全く問題ない。

 これをキャスターの付いた台に載せ、作業台の下に滑り込ませるようにする。手元のコードは可撓性のある電線を用いるが、5.5平方mmを使わねばならない。炭素棒も 8 mm径のものを使うつもりだ。ここまで来るとかなりの太さで、自動車のジャンパ線か、熔接機の電線のような感じである。

 以前の頒布終了後、多くの方から再度の頒布を要望されていたが、これで殆ど解決したように思う。前回のキットをまだ組まずに持っているから値が上がる、と信じているおかしな人もいるようだが、これでそんなことは何の意味もなくなる。今回の価格破壊で、どんどん作る方が増えるだろう。この技法を広めて戴きたい。


コメント一覧

2. Posted by HIYAMA kazan   2020年03月12日 19:08
電源が同じ場合、炭素棒の太さで熱量は異なるでしょうか?
お世話下さった5ミリの炭素棒だとHOには太過ぎて使い難く感じる場面があるのです。
3. Posted by dda40x   2020年03月12日 21:02
場合に依ります。
私は細い物は使いませんが、一応1/16インチ(1.6mm)径のを持っています。最低電圧でも白熱します。ですから、足踏みSWを細かく踏んで赤熱程度で止めます。細いから抵抗が大きい筈なのですが、発熱が拡散しないので焼け過ぎます。
多分、HIYAMA様が望まれる大きさは、現在の炭素棒の先端を3mm角程度に削ったものではないかと思われます。先は平面にしておくと良いと思います。お試しの上、メイルでお知らせください。
場合に依っては、私の1.6mm径をお試しになりますか。
炭素棒は押し付け具合とか、尖端の形状で接触抵抗が大幅に変化しますので、確実な答は出来ません。逆に言えば、テクニックが大きく効きます。足踏みの速度をどこまで早くできるか、にかかっています。

4. Posted by Tavata   2020年03月13日 08:02
たかなし氏のレポート(というか学会向け論文)、素晴らしいですね。早速、私も作ってみようと思います。

さて、HIYAMA氏と同じ悩みは私にもあります。特に私はNやHOeまで行うのでΦ5は厳しいです。
実は別の手法で炭素棒ハンダ付け装置(安全面からご紹介は出来ませんが)を作ったことがあり、細かな場所への使用を意図して、Φ1以下の炭素棒を使いました。(勘がよい人は何を流用したか分かるでしょう。)
そうなると白熱電球と同じなので、5Vも掛けると閃光を放って真鍮板に穴をあけてしまいました。試行錯誤して2V程度(電流も数アンペア)でハンダ付けできるようになりましたが、挙動が非常にピーキーで、お世辞にも使いやすいとは言えません。細い炭素棒でのハンダ付けについて、もう少し掘り下げて考えてみたいと思っています。
5. Posted by むすこたかなし   2020年03月13日 13:20
HIYAMAさま、
発熱量は炭素棒の太さよりも、ワークとの接触面積で変わります。私は炭素棒(銅のコテ先でも)を鉛筆形ではなく、傾斜したマイナスドライバー形(先端角<90°)に削り、ワークへの当て方を変えて発熱量をコントロールしています。

Tavataさま、
電圧を低く抑えたいのでしたら、大きなトロイダルコイルの2段階接続より、「4. トロイダル トランス への2次線の“追加”」が簡便です。表1にありますよう、電線を8回程度巻けば約2Vが得られます。
8回で2V、12回で3V、15回で4Vのタップを設けるという手法も考えられます。
2次線を簡単に巻けるというのもトロイダルコイルの利点ですが・・・すでに低圧の電源をお持ちなんですよね。
6. Posted by dda40x   2020年03月14日 07:25
 たかなし氏のレポートを拝見して考えました。この種の客観的なレポートを各分野で集めて編集すると、「鉄道模型工学」として、通用するということです。
”客観的”というところが大切です。先の天秤棒の件では、そこが欠けた意見が喧伝されてしまい、問題になりました。
 手始めに、イコライジング、二乗三乗則、軸受、歯車、ユニヴァーサル・ジョイント、バネ懸架、切削、ハンダ付けなどで書いてみませんか。
7. Posted by ゆうえん・こうじ   2020年03月14日 13:53
天秤棒イコライザーの件で問題になったのは、イコライザーという力学の学術用語が、「いわゆる&なんちゃってイコライザー」として本来の意味とは違う意味で使われてしまったということだと思います。
本来きっちり定義されているはずの学術用語が、世間一般で違った意味で使われることはたくさんあります。鉄道模型の世界でも同じだと思います。
そういうことに目くじら立てずにスルーした方がよいのか、指摘して本来の意味をアピールすべきなのかという話になると思います。ただその場合は、誤用・拡大解釈を非難するだけではなく、本来の意味との違いを丁寧に説明することが必要だと思います。
8. Posted by skt   2020年03月14日 15:02
学術用語から一般化した用語でも、有名人やマスコミメディアの誤用や世間での使われ方で意味や用法がどんどん変化していって普通なので、あまり目くじら立てても仕方がないように思います。例えば「原風景」なんて言葉は、今や完全に心理学分野での意味と乖離しちゃってますが、その言葉が使われている分野や文脈で判別できるので混乱は無いようですし。しかし、用語の解釈で論争するのが楽しみの向きも沢山おられるのが難儀なところですね。
9. Posted by skt   2020年03月14日 23:43
鉄道模型での独特の用語の使い方というのも目立ちますね。例えば「フリーランス」や「プロトタイプ」という用語など、本来の意味と完全にズレてしまっているのですが、いったい何故そうなってしまったのか、興味のあるところです。
10. Posted by むすこたかなし   2020年03月15日 10:18
ゆうえん様、skt様、
(模型雑誌の欠陥点を蒸し返すわけはありませんが…)これまでも「模型雑誌が作者の文章をほぼそのまま掲載していることが問題である」とdda40x氏が警鐘を鳴らしておりました。たとえ趣味の模型制作記事でも、手法や表現に間違いがないかをチェックする「査読」というものが大切であると私も感じます。現行の模型雑誌は編集者 (editor)と査読者(reviewer)が同一なのでは、と私は感じます。
文章中の用語や略号、単位や記号などはその分野に精通した方が一読すれば、すぐに見抜けますね。

また文章のformatに論文形式を使ったのも慣れているからという理由もありますが、「誰でも追試が出来て再現性が得られる」という点と、私も思い描く「鉄道模型工学」にほぼそのまま差し込める状態にしたかったからです。
またChemical AbstractsとMerck Indexの鉄道模型版が発行(今ならWEB?)されれば、知りたい使いたい技術や手法、過去の制作例を素早く検索できるという利点があります。

とにかく、書き手(=著者、author)は模型制作とワープロ打ちで手一杯ですから「査読」して頂けることは有難いです。
11. Posted by ゆうえん・こうじ   2020年03月15日 23:07
今の日本の鉄道模型雑誌は、同人誌の延長のノリだと思うので、学術雑誌とはほど遠い状態だと思います。おそらく査読という概念すらないと思います。
ただそれを憂慮しているのは一部のモデラーのみだと思っています。この前TMSにフカひれイコライザーの記事を投稿したときは自主的にdda40xさんに査読していただいてから、投稿しました。自分はすくなくとも技術系?記事の投稿に関しては、これからも学術雑誌の査読ということを理解している方に、読んでもらってご意見いただいてから投稿しようとは思っています。
12. Posted by ゆうえん・こうじ   2020年03月15日 23:15
sktさんのいわれることはよくわかります。だから鉄道模型領域の用語としての、イコライザー、フリーランス、プロトタイプという言葉をきっちり定義して、もとの言葉と区別して使えば問題ないのだと思います。ただその点を曖昧にして、話をするからおかしくなるのだと思います。
昨今のコロナ騒ぎでも、自称詳しい方がマスコミやネットで、医学用語をあいまいな使い方で連発して、情報を混乱させていると思います。
13. Posted by dda40x   2020年03月22日 21:47
 先回、TMSは詳しい人に確認して記事にしたと言っています。結果として間違いでした。その訂正も載りません。(私の見た限りでは訂正記事はありませんでしたが、もしあればお知らせください。)
 こういう方針なら、この雑誌の存在価値は低くなります。また、機構に関する記事を正しく載せることが出来ていなかったこともはっきりしました。これについては改善を約束されていますが、どうなるでしょうか。
 模型雑誌は鉄道趣味誌の中に含まれるのでしょうが、立ち位置がかなり異なります。やはり工学的な知識の有る人が編集部に居ないと成立しないと思います。

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