2020年01月14日

”Super 800”

 Union Pacific鉄道は、大型の4-8-4(four-eight-four FEFという)を採用し、類稀なる信頼性の高さを誇っていた。これは、高出力、長大な航続力、低メンテナンスの点で、世界最高の性能を持っていたことは間違いない。その他の鉄道会社は、UPほど高頻度の長距離高速運転をしていなかったので、比較しようが無いのだ。Tom Harvey は、 その実力を称して、"flying machine"と言った。

 その圧力は300 lb/insq(約21気圧)であった。新型は350 lb/insq(約24気圧)を予定していた。想定される連続最大出力は6500馬力以上であったそうだ。これの単機で、当時の特急に使われたディーゼル電気機関車の3重連の出力を凌ぐのである。 

 機種名はFEF4、”Super 800”である。20輌を発注するつもりだったらしい。このあたりの情報はDon Strack氏から聞いたことを基にしている。当然Tom Harvey からの情報とも重なる。設計者は1946年にイギリスに行き、帰りの飛行機が落ちたため死亡した。同時にこの計画は廃案になってしまった。

 外観の変化は、Franklin式ポペット弁、4本煙突、allweather cab(密閉式キャブ)Worthington式給水加熱器、小さな除煙板、重油テンダ、シールドビームである。ある程度の図面を描くと、テンダの下廻りにはかなりの変更点が生じることが分かる。キャブが伸びた分だけ、テンダの下廻りを延長しないとつながらないのだ。

 一番面倒だったのは、キャブの形である。このような大型機の場合、キャブの後ろを絞らなければならない。オウヴァハングが長いと曲線(たいていは分岐)で隣の車輛に当たってしまう。何機種かの図面を確認し、実際に作図して当たり具合を調べた。

Modified UP 9000 cab UPの9000という4-12-2のキャブは、驚くべき絞り方をしている。機炭間のバッファを更新した時に12インチ(約300 mm)の延長が必要になり、その分キャブをうしろにずらすことが可能になった。それまではキャブ内が狭くて困っていたので、これ幸いとキャブを後ろに下げた。ボイラの後端が、相対的に前にずらされたのだ。
 そうすると、ただでさえ、ボイラが太くて前が見えなかったのが、余計苦になった。思い切ってキャブ前端を最大限に膨らまして視界を確保すると同時に、後端を伸ばしたことにより当たる分を、狭くしたのがこれである。12輌ほどがこの形に変更されている。

 過去のTMSには、日本型の 4-8-4 などの空想大型機の作例がいくつか載っていたが、どれも建築限界に当たりそうである。レイアウトで実際に走らせていないと、こういうことには気付かない。その様な思慮に欠けた機関車を無節操に褒めそやす記事は二次被害を増やしている。さすがに祖父江氏の機関車は、正しく絞られていた。

 ベースになった模型は、以前テキサスから持ち帰ったFEF3で、事故車であった。かなり修復してはあったが、ひどい壊れ方をした部分があり、ボイラは一部新製するつもりであった。煙突、煙室、キャブ、ヴァルヴ・ギヤは捨てて作り直した。
 これらはハンダを剥がして、板を延ばし、新しい板に寸法を写し取って新製した。当然設計変更をしている。パイロットは更新した。
 機関車内に、ボールベアリングは34個使っている。滑るように走る。

 クイズの正解者はLittle Yoshi氏とRailtruck氏のお二人であった。Little Yoshi 氏はかなり早い段階から正解を出された。”UP” ”4本煙突” ”Poppet” で検索すると見つかったそうである。 

コメント一覧

2. Posted by Tavata   2020年01月14日 20:18
キャブから身を乗り出して前方確認するのは相当危険なのでしょう。実際スケネクタディ製の900形(サイドタンクが大型)のキャブから身を乗り出して、信号確認した機関助士が架線柱に衝突して事故死、という話を読んだことがあります。、
建築限界ギリギリのこのキャブから乗り出すのは自殺行為に思えます。(というより乗り出さないで済むという設計思想だと思います。)

ボイラとキャブの重なりは少ない方がキャブも広くなり、暑くないので望ましい設計だと思うのですが、古い機関車では火室後端がキャブ後妻まで来ているものもあり、不思議です。また、図面のように火室後端から突っ張り棒でキャブ屋根を抑える方式もアメリカではよく見かけます。
3. Posted by dda40x   2020年01月15日 22:31
 数字を確認すると、キャブ前端は150 mm近く拡がり、前窓のガラスが2倍近くになっています。
 SPのAC9という関節機のキャブは大きいので、後ろをかなり絞っています。 ナイアガラのキャブも同様です。キャブは絞られても手摺が飛び出している模型をよく見ます。仏作って魂入れずですね。
 UPの近代機はこの吊りボルトによるキャブ支持が好きです。どれも走行するとキャブが撓んで後ろに傾きます。それも魅力の一つです。私のUP機は殆どキャブを垂れ下がらせています。曲がっている、とお叱りを受けますが、苦労してハンダを剥がして下げているのです。
 このUP9000も、改造して当初の支持方式を踏襲できなかったので、この吊りボルト形式にしたのでしょう。するとキャブの床下には三角の支持板がつくはずです。
4. Posted by Tavata   2020年01月20日 13:19
そうですね、吊りボルトですね。
突っ張り(圧縮荷重)には、あの細さでは無理でしょう。
コロラドで見たK-27ではボイラ上端から斜め上向きにキャブを支える突っ張りだったので、誤解してしまいました。(あまりよい写真がありませんでしたが、以下のリンクです)
https://fineartamerica.com/featured/inside-the-cab-tim-mulina.html?product=canvas-print

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