2019年08月05日

Big Boy の復活

 アメリカではかなりの騒ぎになっている。筆者も行きたいが、手の中を針金が貫通していて、その上にギプスを巻いているので、空港での検査に通るかどうかが怪しい。過去に筆者が見ていた範囲では、別室に通されて、金属探知機と犬による検査があり、さらに医師の判断でX線で見る。要再検査の乗客が一人だけならよいが、何人か居るとそれだけで長時間かかって、飛行機に乗り遅れということになるのが目に見えている。

 さて、動画をたくさん見た。分岐をくねくねと曲がるところが面白い。模型でも同じなのだが、実物の動きを見るのはまた格別だ。蒸気は洩れまくっている。Tom Harveyが言うには、
「夏は良いのだ。冬は、蒸気管継手から漏れた湯気で真っ白になって、前なんて全く見えやしない。」
 球面の高圧蒸気管自在継手はネジとバネで締め込んであるが、効果があまりなかったそうだ。現代の工具で研削してもダメなのだろうか。 
 もう一つ気になるところがある。シリンダの前蓋がない。鋳鋼製の鋳物が丸見えだ。Tom はそれをとても嫌がっていた。ニッケルめっきの部品を付けるべきだ。

 石炭を焚かないというのが興味深い。アメリカには妙な法律が出来てしまい、石炭を燃やした排気ガスを、そのまま大気中に放出してはいけないことになっているのだそうだ。それなら重油は良いのかというと、それも怪しい。
 今回燃やしているのは、ディーゼルエンジンの廃潤滑油という説がある。潤滑油には硫黄化合物、場合によっては塩素化合物が含まれているので、却ってよくないような気がする。

 ところで、先日TMSの最新号を見た。田舎に住んでいるものだから、この種の雑誌には遭遇しない。友人に見せて貰った。

 その中にBig Boyの特集記事があり、最後の部分には首を傾げた。Big Boyが二本煙突の理由を書いているが、全く筋が通らない説明だ。

 煙突下の2組のノズルが付いている排気管には、中間に仕切りは無く、前後のノズルから、同時に全く同じ圧力で噴出する。前後のエンジンからの排気が独立に噴出するわけではないのだ。それは動画を見ていればよく分かる。片方だけが噴出することがあれば、他方の煙突では煙が吸い戻されるだろう。ドラフトで、煙室の空気を吸い出し燃焼を助ける、という理屈が分かっていれば、こんな理屈が通らないことは書けない。大きな図面があるのでチェックしたが、当然のことながら、中間の仕切りはない。
 写真の説明には、エクスパンションジョイントという言葉も書いてある。前部高圧蒸気管は屈曲して長さの変化を吸収するが、継手部分での伸縮はしない。だからエクスパンションという言葉は使わない。後部エンジンの上の継手は温度差による多少の伸縮を吸収する機能を持っているが、それのことを指しているは思えない説明だ。

 詳しい人はたくさんいるので、電話一本で解決することだ。この種の間違いがあると、だれも信用しなくなる。10,000トンを牽くという話も書いてあるが、重連でも無理だ。ちょっと高校一年の物理の計算をすれば理解できることなのだが、それをしないのはどうしたものか。
 ちなみに、勾配を緩く(10‰)した第3本線でなら、1輌で6,000トン牽けた。こういうことは文献を調べた上で、計算すると正しいかどうかわかる。この記事は2009年2月号の平岡氏の記事をなぞっただけである。それだけなら間違いはないが、上積み分が間違っているというのは編集者の能力の問題だ。
 査読者が必要であることは、論を待たない。 

コメント一覧

1. Posted by YUNO   2019年08月05日 14:52
これは私の想像ですが、継手からの蒸気漏れは、「昔から漏れたまま走っていたのだから問題ない、わざわざコストをかけて直す必要もない」という合理的な判断をしたのではないでしょうか。
2. Posted by たづ   2019年08月05日 21:59
シリンダーの前蓋の写真を検索してみたのですが、真っ黒の塗装仕上げの車両も複数両あるものの、基本的に化粧蓋があります。他形式も同様です。
今回の4014号復元車だけ、むき出しです。
化粧蓋の省略は野戦鉄道では合理性を持つのでしょうが、通常の鉄道ではほぼ世界中付けているので、外観以外に何か必要性があるのだと思います。
Big Boyの煙突は模型などの写真を上から見ると確かに中に円筒が2つ並んでいますが、火室は一つですからあれが「2本煙突」だと思ったことすらありません。
日常で「火を燃やす」事すらなくなると、そういう極自然なことも忘れ去られるのでしょうか。
3. Posted by たづ   2019年08月06日 00:27
>手の中を針金が貫通していて、その上にギプスを巻いているので、空港での検査に通るかどうか

後から思い出したことなので恐縮ですが、第二次大戦に従軍した欧州の男性が、心臓近傍に銃弾が生涯刺さったままだったそうです。適切な処置は受けていたので弾の金属は支障しませんが、飛行機に乗るのに必ず金属探知機に引っかかるため、常時胸部レントゲン写真を持ち歩いていたとのことでした。
レントゲン写真と英文カルテを予め用意という手もある気がします。
4. Posted by コン   2019年08月06日 01:32
右手のワイヤーの件ですが、レントゲン写真持参なら大丈夫と思います。股関節や膝関節に人工関節が入っている人は、飛行機に乗る為に常にレントゲン写真を持参しています。
 別件で、フランスの4気筒のパシも煙突が2本ですが、煙突間に区切りがあります。このことも理解出来ましたが、3気筒ではどうなんでしょう?
6. Posted by dda40x   2019年08月08日 09:41
 コメントありがとうございます。
 球状関節部からの漏れは、試運転開始時に比べるとかなり減って来たようです。冬になるとどうなるかは楽しみです。前部排気管は圧力が低いので多少の伸縮が利く様になっています。ここは漏れても問題ありません。
 それより、ピストンロッドのグランドのパッキンはひどいものです。あんなに洩れるのは見たことが無いです。

 煙突が2本なのは通気を良くするためです。UPは長年に亘って、その研究をして来て、結論としては煙突断面積を大きくするということになりました。
 2気筒の通常型の機関車でも就役当初から徐々に煙突を太くしていき、2本煙突が実用化されました。3本煙突は実験済みで、4本煙突の図面も用意されましたが、実現しませんでした。

 2本の煙突のノズルから、独立に吹き出すと通風効率が一挙に落ちます。ノズルの取り付け部のplenumの断面積は、4×2で8本あるノズルの断面積よりはるかに大きく、前後の排気は均等に排出されます。
 煙を吹き出す瞬間の動画を見ていればよくわかるように、全く差はありません。
 このことは40年ほど前 Tom Harvey に直接聞いたことです。それまで前後は独立しているのかも、と思っていましたが、完全に否定されました。
7. Posted by ゆうえん・こうじ   2019年08月10日 15:29
真っ当な査読制度を持った学術雑誌でも、「Letter to Editor」のページはありますので、今回の記事に対するddx40aさんの見解をTMSの「私の鉄道」あたりに投稿してみられてはどうですか?修正を申し入れて、たとえそれが認められて修正記事が出ても、従来のTMSだと編集者の手帳覧の下あたりに小さく囲み記事で出るだけです。みなあまり注目しておらず、大きな意味はないと思います。
8. Posted by dda40x   2019年08月22日 06:54
 皆さんコメントありがとうございます。
 それでは投稿してみましょう。さてどうなりますか。正誤の問題ですから、極めて客観的であり、ごまかすことはできませんからね。

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