2019年06月16日

見学者

 先日、親戚の土木工学の専門家から、元同僚2人を連れて見に来たいという連絡を受けた。彼らは、定年まで海外でインフラ工事の監督をしていた人たちだ。
 3人とも鉄道模型にはあまり縁がないが、路盤の設計方針を確認したいという、非常に珍しい申し出であった。筆者にとっては、まさに卒業に当っての口頭試問であって、合格点をとれないと恥ずかしい。

 彼らの興味の対象は、縦曲線、緩和曲線、カントの緩和、曲線上の複線間隔などであった。曲線上で均一な勾配を作る方法も興味があった。

 現場を見せて、質問に答えた。ある程度は説明の図を用意していたので、それを見せれば、なるほどと納得してくれた。
 緩和曲線については直ぐ合格したが、縦曲線は引っ掛かった。筆者は二つの勾配が接するところの縦曲線は3次曲線になると信じていた。作図するとそうなるのでそれで良いと思っていたが、現実には円曲線を嵌め込むだけだそうだ。
 人間は縦方向の加速度変化に鈍感なのかと考えた。現実にはバネも入っているし、加速度の変化率は大きくないだろう。コメントに拠れば、大半径の円弧を入れれば問題ないらしい。

 彼らが1970年に就職した当時は、いつも7桁対数表を持って仕事をしていたが、いつの間にかコンピュータで処理するようになって、もう手計算は出来ないと言っていた。

 カントのある曲線の勾配部分の計算の話は、楽しそうに聞いてくれた。彼らは現場で物を作っているので、工場で作ったものをはめ込む作業とは異なる。だから面白がった。直線で構成された骨に路盤を張って均一な勾配にするのは、なかなか難しいという評価であった。シムを挟む計算法には驚いたようだ。

 レーザで水平を確保し、アラインメントを出す方法は、そりゃそうだろうという感じであった。この辺は本物の仕事をしている人の感覚だ。路盤の強度は、筆者が載った時に変位量3 mm以内という基準で作ったことを話すと、剛性が高いねとのことだった。

 結論としては「高得点で合格」だそうだ。こういう異業種の人と話すと面白い。博物館を開くと、時々こういう人が来てくれるのだろう。断片的につまみ食いした知識ではなく、中身まで詰まった議論は本当に面白いと感じた。

 最後に123輌を1輌の蒸気機関車で牽き出して、勾配を登って下った。まさかそんなことが出来るとは思わなかったらしく、彼らは非常に驚いた。坂の途中で電流を遮断すると、貨物列車がズルズルと滑り落ちていくのを面白がった。
 直ちに列車を引っ張り上げるのに必要な力を測定し、速度を掛けて、機関車に要求される出力を計算した。電流値を調べると効率が分かる。こういうことをあっという間に処理するのは凄い。
 機関車本体を手で押してほとんど抵抗なく動くのには、全員が非常に驚いた。押してやると、発電して前照灯がともるところを見せると仰天した。
 歯車について説明すると、現物を見せてくれという。組み掛けのギヤボックスを見せたら、これがウォームギヤとは信じがたいとのことであった。貨車のほとんどが金属製であることも意外だったようだ。

 摩擦の少ない被牽引車、効率の良い駆動装置、高トルクモータの組合せがこのような運転を可能にする。彼らはかなり満足して帰った。 

コメント一覧

1. Posted by 春岡電鉄   2019年06月16日 20:51
>実はそれは施工上の問題だそうだ。フィニッシャがそういうものを作り出せないのだそうだ

「縦曲線における緩和曲線は、フィニッシャー施工ができないから入れない。」は間違いです。鉄道建設工事固有の技術を知らない方の発言ですね。
それに鉄道構造物のコンクリート床板打設にフィニッシャーは使いたくとも使えません。その理由は、_C婆未貿喊絽配をつけるから、∀盤鉄筋コンクリートの鉄筋に支障するからです。

「縦曲線における緩和曲線は、大きな半径の縦曲線を用いるので入れる必要がない」が正解です。
新幹線  半径15,000メートル以上(現状は25,000m)
     在来線  半径 4,000メートル以上

2. Posted by dda40x   2019年06月16日 22:43
ご教授感謝。
彼らは、海底トンネル、高速道路、橋梁、港湾、飛行場の建設が主で、鉄道建設の経験は少ないそうです。
それとフィニッシャはアスファルトの話で、コンクリートのことではないということでした。
本文は近日中に訂正します。
いずれにせよ、加速度はゼロから始まる訳ではないけれども問題無いのですね。
3. Posted by 春岡電鉄   2019年06月17日 01:31
固定軸距が長いOスケール2-10-2蒸気機関車についてOスケールレイアウトにおける数値を試算してみました。
 幣魴錙
縦曲線半径を実物4,000mの1/48とします。
勾配は手前0.00‰、交点から上り20‰

◆紛弊始点から交点までの距離)=(交点から曲線終点までの距離)
縦曲線半径  4,800m÷48=83.3m
勾配  手前 0‰、交点から 20‰上り
接線長 T=半径/2000*勾配‰)≒83.3/2000*20=0.833m

8鯏世砲ける高さ(縦距)
y≒接線長^2/2*縦曲線半径=0.833^2/(2*83.3)=0.004165m=4.2mm

じ鯏世砲ける勾配
4.2/833=0.00504=5.04‰

サヾ惻峺把蠎患(UP5000の145mmとする)における縦距   

y‘=固定軸距^2/2*縦曲線半径=0.145^2/(2*83.3)=0.000126m=0.126mm

β茖各偉悗諒儖摸漫米偉愼面とレールの隙間)
0.126*0.5-第3動輪位置の縦距=0.126*0.5-0.032=0.031mm

よって半径83.3mの縦曲線を挿入すれば、第3動輪の必要変位量はわずか0.031mmである。(固定軸距145mmの正矢0.031mmと同じ)
なお、縦曲線を挿入しなかった場合、第3動輪の必要変位量は0.73mmとなります。

縦曲線設置は、(模型では動輪の接地が問題ですが)、急激な勾配変更に伴う列車の浮き上がり等による脱線回避を目的としています。
4. Posted by Tavata   2019年06月17日 11:36
縦曲線の式、拝見しました。
勾配は実物も模型も同じ値なので、tanθ=sinθ=θの近似やθ/2と微少量の積を無視するなどをつかった近似式がそのまま流用できますね。

さて、重量に対する垂直抗力の変化率(一軸あたりで考えれば、軸重変化率)とで考えると実物と模型でだいぶ違うと思います。

いわゆる遠心力の式
F=mrω^2=mv^2/rを考えます。
ここで軸重変化率を考えると
F/m=v^2/rですが、
vもrも縮尺の一乗比例(長さ比例)
なので、F/mは縮尺に比例します。
 
別の見方をして、スケールスピードを遵守した上で軸重変化率を実物と同じにするなら、
縦曲線半径は縮尺の二乗比例で構わない、つまり縮尺(の一乗)よりかなり小さくて良いことになり、今回の場合では4000/48^2=1.73mで済んでしまいます。
この事からも、実物のように浮き上がりを防止するための縦曲線は模型では不要と思われます。
もちろん、軸箱の可動範囲の観点からも考慮する必要はありますが、縦曲線なしでも0.73mmと対応できるレベル
(この軸だけで全変位に対応するのではなく、他の軸と分散するので、単独の軸箱変位はおおよそ半減)なので、
結局はある程度の縦曲線さえついていれば大丈夫と言えるのではないかと思います。
また、軸重変化を滑らかにする、つまりジャーク(加加速度)を一定にするなら、三次曲線が有効ですが、以上の考察から模型では軸重抜けはさほど生じないので「そこまで精緻にする必要はなく、ジャーク変化は無視できる」と思います。
(考えた上での「無視できる」と、考えずに「無視する」は違いますよ 笑)

なお、Oゲージの数百グラムの軸重があれば関係ありませんが、Nやナローの小型機では集電のために「最低軸重」に関する考慮が必要に思えます。
5. Posted by dda40x   2019年06月18日 06:35
コメントありがとうございます。
模型の場合、固定軸は論外として、軸の上下動はかなり大きく許されています。しかもフランジ高は 1.0 mm もあります。
イコライズしてある5軸機の場合は完全な2%折勾配でも、全く問題ありません。6軸機は限界に達するでしょうが、バネもありますから何とかなるでしょう。
イコライズさせてある機関車の場合は、却ってこのような状況を作って、楽しむ人が多いのが現実です。展示用レイアウトではそうはいきません。

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