2019年04月03日

mule

mulemule (2)mulesmules 1



 これらの電気機関車は mules と呼ばれている。ラバのことである。荷馬車を牽いて、もくもくと歩く動物だ。
 当初はGE製の機関車であった。運転台が前後にあるもので、三池炭鉱によく似たものがあった。当初は船が小さく、かなりいい加減な曳航でも問題はなかった。1970年頃日本製が納入され、再度新型が納入された。
 新型機は、精密機械である。船がどんどん大きくなり、パナマ運河の幅33 mに対し、32 m幅の船が大半になってしまった。要するに両側の隙間が50 cmしかないのだ。船がどちらにも偏らないように静々と進むのは、一種異様な雰囲気である。風の影響もあるだろうが、ほぼ無事故で毎日の業務をこなしている。先回紹介した事故は、かなり稀な例である。
 旧型機ではそういう仕事ができなくなってしまった。ウインチの張力を手加減で決めたり、速度を目測で合わせるようでは、現代の巨大船は運河壁に衝突してしまうのだ。

Panama canal (5)Panama Canal (4) 曳航索・巻取り装置は windlass という。発音はウィンドラスである。ワインドではない。この張力を一定にする装置の開発がキモであったようだ。一定速度での走行、均一な張力の二つが大切である。船の上から見ていると、運河壁との隙間は完全に一定で、文句のつけようが無い。

コメント一覧

1. Posted by Tavata   2019年04月03日 08:48
係船索を巻き上げるウィンチは一般に水平軸のものをウィンドラス、垂直軸のものをキャプスタンと言います。全線ラックなのも勾配対応は勿論ながら、これだけの外力(索の張力)を受けて走るのですから、摩擦式だと水平区間でも滑走するので正確な位置が定まらないのでしようね。
2. Posted by dda40x   2019年04月05日 06:42
さすがにお詳しいですね。縦横で違うのですか。
この機関車は複数台が協調して定速走行ができるというところが特筆すべき性能です。運河内は時速3マイル 4.8 km/h で動くことになっているそうです。止まるときは機関車で停めるように見えました。大きな船でしたから後ろの4輌がかなり頑張っていました。機関車がかなり唸りました。
動き出す時は船の動力を使いました。
3. Posted by Tavata   2019年04月06日 23:06
前進するときは船の動力で進み、停止するときは機関車が踏ん張るという話はとても興味深いです。
船が後進をかけると(特に1軸船では)プロペラの反モーメントと船体にぶつかるプロペラ後流のために進路が曲がってしまいます。
前進ではプロペラより前に船体があるのと、流体力学的に舵位置などで反モーメント対策してあるため、船体自体の保針性が効いて直進します。
また舵で旋回できるのは速力(なぜ力という文字が入るのか不思議なのですが)が出てからなので、低速では曲がり出したら止まりません。
それゆえ、停止するときは後進を避けて、機関車が踏ん張るのだと思います。

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