2018年09月28日

217列車

福井孝之機関士 その日、217列車は6時50分に6輌編成で名古屋駅を出た。機関車はC57139であった。亀山まで2時間弱の乗務である。
 機関士の福井孝之(たかし)氏は30歳になったばかりで、関西線の乗務はその日が初めてである。台風が近づいているので、運休になるかもしれないと思っていたが、定時に発車した。
 最初の駅の八田で停車した時、機関車が風で揺れたのを感じた。ただ事ではない。ところが駅長は信号を進行に変え、発車を促した。厄介払いしたかったのかもしれない、と感じたそうだ。
 列車は強風の中、築堤の勾配を登り、庄内川の鉄橋を渡った。その時、風で吹き落とされそうに感じたそうである。機関車が傾くのだから、客車は片輪が浮いたかもしれない。ともかく無事橋を渡り、次の駅の蟹江に近づくと、すぐ手前の福田川は堤防まで満水で溢れそうであった。
 
 蟹江駅に到着すると風はますます強さを増し、飛んできた瓦が機関車のボイラにガンガンと当った。これはまずいと思う間もなく、福田川の堤防が決壊し、水が流れ込んできた。流木がドドンと客車に当ったが、水の深さは腰のあたりで、まだ命の危険は感じなかった。困ったことに、客車の床下になだれ込んだ木材で、ブレーキ管が破損した。このままでは動くことができない。
 すぐに破損車輛を切り離すことにする。3輌だけにするのだが、連結部は既に水の中で、流木の中の危険な作業だ。手間取ったが、切り離しには成功した。辺りは停電し真っ暗だ。蒸気機関車は有難いことにタービン発電機を持っているから前照灯、キャブ室内灯は点く。近所の人たちは駅に逃げてきた。浸水して家には居られなくなったのだ。その人たちも客車に乗った。その時水はそれほど深くない。まだプラットフォームの上の水が、線路の方に流れ落ちる状態であった。火室の火が消える心配はなかった。


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