2018年03月15日

翻訳

 日本ほど、世界各国の本が翻訳されている国もないそうだ。特に英語の本は、すぐ訳本が出る。素晴らしい訳ばかりではないのが残念だ。

 先日の「走れ‼機関車」は、なかなか良い。英語版が届いたので並べて再読した。なるほどと思わせる訳もあり、感心したところも多い。しかし、一箇所訳を外したところがある。その言葉自体を無くしてしまっている。訳せなかったのだろうか。

tricock valves水面計? それは、"tricock" である。おそらく辞書には載っていない言葉だ。これは蒸気機関車のバックプレートにある三つ並んだコックである。その中心付近に水面が来るように設計してある。水面計はあっても、ガラス管が割れることはよくある。また、水質の悪いところでは、水が泡立って、水面計では用をなさないこともある。そういう時は、この最も原始的な方法を採るしかない。西部ではガラスは貴重品で、ガラス水面計の無い機関車もたくさんあった。

 高いところのコックを開いてブシュッと蒸気が出れば、水面はその下にある。真ん中のコックを開いてジュワッと熱水が飛び出れば、水面はその上にある。もちろん圧力が掛かっているから、気化して泡立つが、水が出ることには変わりがない。Big Boyにもついている
 飛び出した熱水は漏斗で受け、床下に捨てる。こういう単純な装置なのだが、訳者は意味が分からなかったのだろうか。水面計ではまずい。アメリカに聞けばわかる人もいる筈だが、どういう訳か、この言葉は日本語版から削除されている。よく見ると、図には修正の痕らしきものも、見えないこともない。これはまずい。作者に失礼だし、読者にも同様だ。
 gauge cock として、このブログでも近いところまで紹介した。

 翻訳というものはとても難しい。作者と同レベル以上の知識の持ち主でないと訳せない。筆者も時々翻訳を引き受けるが、分からない時もある。そうなると知っていそうな友人を順番に当たり、さらに外国に問い合わせて、やっとの思いで正しい解釈にたどり着いたことがある。そういうときの焦燥感は終わってみると懐かしいが、その当時は大変だった。

 この本は素晴らしい本なので、直ると嬉しい。

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コメント一覧

1. Posted by YUNO   2018年03月15日 11:50
これは非常に難しい問題ですね。
日本の機関車を見ますと、明治初期にアメリカから輸入された弁慶号や静号にも三つのコックは付いておらず、ガラス管式水面計を正副2本付けて破損に備えています。もしかしたら輸入当時はコックがあって後に改造されたのかも知れませんが、少なくとも現在の保存車には見当たりません。ですからコックの意味(役割)のわかる人が少ないのは仕方ないと思います。
もし最初からコック付きの機関車が輸入されなかったのなら、公式の日本語訳も存在しない可能性があります。その場合はカタカナで「トライコック」と書き、長い注釈を入れるしかないでしょう。
2. Posted by たづ   2018年03月15日 23:20
その土地で必要のない物に関する名前はどう訳せばいいんでしょうね、本当に。
無理やり「三連弁」と書いても結局なにもイメージできませんし。
蒸気機関では缶水面のチェックは常時するものだと今日の今日まで思いこんでまして、この手は全く想像の斜め上でした。
3. Posted by railtruck   2018年03月20日 06:42
クラーケンさんのブログにあった魚梁瀬のポーター3号機の写真ですがtricockが写っています。
http://kraken.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2015/02/03/6686319510000l.jpg
4. Posted by dda40x   2018年03月20日 08:26
確かにありますね。
下工弁慶にもついています。
日本に全くないものではないから、訳のつけようはあったと思います。
5. Posted by YUNO   2018年03月21日 15:43
ボイラー技士試験の参考書で見つけました。そのものズバリ「験水コック」だそうです。
解説には、ガラス管水面計と同じ範囲に3個取り付け水位を判断すると書いてありましたので間違いないでしょう。
験水コックと言えば便所付き旅客車の水タンクの付属品として有名ですが、こちらも同じ名前でした。

ボイラー技士の免許なら、動態保存に関わる本職の方から、ライブスチームを趣味とされる方まで幅広く取得される機会の多い資格ですから、それなりに知られていると考えられます。
6. Posted by 18900   2018年03月21日 22:44
明治44年発行の講習会のテキストに「験水器」の章があって、その中で、「テストコックは大抵ウォーターゴージの補助として如何なる機関車にも1つづゝ付いているが、多いのには三四個も取り付けられて居るものもあり....」とあります。
続いて、コックを使ってボイラー内の水量を判断する方法が記載されていますが、写真・図面が添付されていないので形は不明です。
7. Posted by 18900   2018年03月21日 23:44
国立国会図書館デジタルコレクション所蔵「機関車諸部名称図解」の48ページにテストコックの図が掲載されています。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/846733/48
8. Posted by YUNO   2018年03月22日 07:25
機関車諸部名称図解において、英語名が「test cock」と書かれているのが興味深いです。
これが正式な名前で、さらに3つとは限らないとなると、tricockという呼び名はいったいどこから出てきたのでしょう。
9. Posted by たづ   2018年03月25日 10:25
>これが正式な名前で、さらに3つとは限らないとなると、tricockという呼び名はいったい

ひょっとすると、「掛詞」で雅語としてつけたのかと思います。「3個1組(三位一体)」とか「try」とかを掛けた。勿論、その時までに「3個1組」が標準となっていれば、ですが。

「検水(験水)」の字はそう言えば学生時代電車(トイレ付き)の車側床下にありました。ただ、「水質検査」だと思ってました。
10. Posted by YUNO   2018年04月10日 21:54
験水コックが2つの機関車を見つけました。
大井川鐵道で保存されているサブロクのコッペルのうち1両(1921年製)がコック2つでした。
実物を見るまでは半信半疑でしたが、確かに3個とは限らないのですね。
もう1両(1922年製)はガラス管が2本付き、コックはありませんでした。
11. Posted by dda40x   2018年04月24日 16:29
要するに危険水域の間にあれば良いので、最低限で2個ということになりますね。
アメリカの小型古典機には2個のものは、よくあります。

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