2018年02月27日

職人との会話

 どうしてそんなに職人と親しくなれるのか、という質問があった。

 一つにはそういう時代に生きていた、という運の良さがあった。住んでいるところが町工場がたくさんある地域であったこともある。友人の家がそのような仕事をしているところもあった。
 中学で技術家庭という時間があったが、授業はつまらなかった。教師が分かっていないことが、はっきり分かったからだ。旋盤のある工場で窓の外から見ていると、中に入れてくれて触らせてくれたし、職人芸を見せてもらった。

 そういう時に、「この仕事をやりたい」と思っていたから、それを口に出すと一生懸命教えてくれた。フライス番は切粉が飛び散るので、飛ばない方向からしか見られなかったが、すごいものだと思った。仕事が速いのだ。父に聞くと、「セーパー(型削り盤)は刃物が一つしかないが、フライスはたくさん付いているからな。」と言う。それはそうだが、あの速度で焼けた切粉が煙を上げて飛んでいくのは凄い眺めだった。超硬の刃というのも初めて見た。

 旋盤とフライスで家が建つほどの金額だと聞いたので、自分で趣味で持つことはできそうもないと思ったが、のちにアマチュア用のものがアメリカ、イギリスを中心に出ていることが分かった。

 様々な分野の職人と話をするのは楽しかった。図面を描いて注文すると、面倒そうな顔はするけど、受け取りに行くと得意満面で、腕自慢する。その自慢を良く聞いて、さらに面倒な注文をする。だんだんとエスカレートするのが面白かった。職人は学校には行っていないが、知識がある人が多かった。父は、
「分からないことは、工場に行って職人の頭に聞くんだ。賢い人が居るからな。」
とよく言っていた。
 現場でなければ分からないこともあるのだ。本を読んだだけではできない仕事だ。まさにプラグマティズムの世界である。 

 祖父江氏と知り合ったのはその頃で、模型職人なのに機械工学の基礎を完璧に知っているのには、驚いた。そういう人は見たことが無かった。
「14枚以下の歯車は、歯車じゃねえよ。」
 この言葉が模型職人の口から出るとは思わなかった。すっかり参ってしまって、通うようになった。

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