2018年01月04日

続々々 困った3条ウォームギヤ

 歯車は奥が深い。筆者は父から聞いた話と、数冊の本を読んだ程度の知識しかなく、高度な計算を伴う設計はしたことが無い。ウォームギヤについて知っていることは、
・バックラッシを小さくできること、
・摩擦を低減することができれば効率は上がること、
・進み角を大きくすると単純な滑りではなく、転がりに近くなって効率が格段に上がること、しかし、進み角が18度を超えると、歯形を変更しなければならないこと、
である。
 先日来、この項目で、某模型店製の進み角の小さな3条ウォームを紹介しているが、ある方から次のようなお便りを戴いて、新年早々大笑いした。

 3条ウォームの件は本当にお気の毒様です。私に言わせれば、小さな進み角の制限のもとで3条もの溝を成立させる方がよほど難しいです。故にこれは、貴殿の方式を貶めるため、相当頭の切れる策士が緻密に練った謀略に違いありません。

 これはジョークにしても、どうやって考えるとあんな結果になるのかは、本当に不思議だ。



 話は替わって、スパーギヤ(平歯車)の効率は100%ではない。この動画は歯車が摩擦しながら動いている様子をよく表している。この線の角度が圧力角である。中心から遠い部分と近い部分での周速度は異なる。その速度差分が損失を生じる。ピッチ円上だけが、完全な転がり摩擦だ。
 スパーギヤの効率を上げるには、ピッチ円付近でしか接触しないようにすることが必要である。径を大きくすると、ピッチ円付近しか接触しなくなる。即ち、相対的に大きくするにはモジュールを小さくすることが同じ働きをするだろう。その他、高度な工夫もあるが、結局は摩擦から逃れることはできない。即ち効率は100%にはなりえない。

 しばらく前、ある実物業界の方が、インボリュート歯車は完全な転がり摩擦だとおっしゃるので、質問してみた。どうやら歯車メーカの効能書きの受け売りをしているようで、実際に運転時に触ってみたことは無さそうだ。100%なら発熱は無く、潤滑も要らないだろう。
 人の言うことやカタログを信用する人は進歩できない。しかし、その方は筆者に「もっと勉強せよ。」としか言わなかった。ご自分がどんな勉強をしたのかを、聞いてみたかった。



コメント一覧

1. Posted by にゃんこのおひげ   2018年01月04日 10:38
インボリュートギヤは転がり滑り接触ですよね、歯面にはちょうど円錐を逆向きに押しつけて回転させたような力が働きます。
学生のころ出回りはじめたパソコンで何日もかけて応力解析をしたことを思い出しました。
2. Posted by 関西私鉄同好会   2018年01月04日 21:27
この動画を見れば歯先が滑り摩擦することが良くわかりますね。歯先が相手に当たって摺動しています、ピッチ円付近では転がっていますね。
つまり歯先は摩擦仕合っているのでここで損失が発生するというメカニズム。
効率は100%ということは現在ではありえないので、もしそうなれば永年の懸案である永久機関ということになりますが、摩擦があれば熱となり音となり損失が発生するので100%はあり得ません。そのメーカーのカタログを見てみたいですね。鉄道界では主電動機をダイレクトドライブで動力伝達を行い歯車を排して効率を上げようとしているのですが、その努力は必要なくなります。嘘ですね。
3. Posted by 私も技術者   2018年01月06日 16:30
このブログを10年以上愛読していますが、私たちのような技術者と理学者との違いを顕著に感じます。絶対に譲れない線があるのですね。
10年前の建築の話で、結露を防ぐという記事がありましたが、建築士と思しき人たちが攻撃してましたね。自分たちがその状況になく、実験をやってもいないのに、拡大解釈でこうだと決めつけるのは、自称技術者に多い悪癖です。いつも自戒しています。私は、問題が大きくなる前に、数学者と物理学者に話を聞く様にしています。思わぬことを教えてくれるものですね。
きっとその方は出世できなかったと思います。こういう人は結構多いのです。高校まではよくできたのでしょうが、その先の世間が狭い人です。ブログ主様のように非常に広い交友関係と科学的常識を持っていれば、たちまち見抜かれてしまいますね。
博物館の完成を待ち望んでいます。また素晴らしい車両工作を見せてください。
4. Posted by dda40x   2018年01月07日 21:01
 コメントありがとうございます。そういう見方ですと、確かに譲れない一線はあります。
 我々は真理を求めています。客観性が命です。仕事は辞めましたが、その姿勢は保っていますし、最後まで保ちます。
 役にも立たない理屈を振り回す人は多いのです。「『あの先生がそう言っている』と言われても、あなた実験して確かめたの? 」と聞くと答えられない人はいくらでもいます。結果が出るような実験を構成する人も、いっぱいいます。以前、梁の撓みがどのような曲線になるかという話も、適当に話をすり替えています。その数学の教師とはよく気が合うので、いろいろな話ができます。物理の教師も面白いのがいますから、何でも聞けます。どちらも筆者より少し若いので、当分大丈夫です。

 懐かしい家の結露の話が出ましたね。筆者は”化学的に正しい家”を建てるために最大限の努力をしました。絶対ミスの無いように、計画には3年掛けた実験住宅です。アメリカに居る時に、友人の大工の棟梁に弟子入りして仕事を学び、アメリカから呼んだ大工とともに建てた家です。どこにも理論的な隙はありません。壁の孔からの漏れを言うとは思いませんでした。そんなことでは、アメリカでは検査に通りません。穴がない材料と穴を塞ぐ工法を取らねばなりません。電気の管からの漏れを防ぐノウハウも、日本にはまったくありませんでした。自らの知識量が少ないことを認識していないので、言いたい放題です。自称専門家の陥る穴です。

 自分が知っていることより、もっと知っている人が居るはずだという謙虚さが大切でしょう。しかし、理学は少し違います。誰も気が付いてなくても、こうすればこうなる、ということが分かれば、たった一人でもその人の勝ちです。ここは本人の科学者としての心構えに依るでしょうね。
5. Posted by dda40x   2018年01月07日 21:03
続きです。

 以前”文系”と称する人が書き込んだことがありました。「理系の人は〜」と批判していましたが、全く外れていました。
 理系は論理だけで生きています。論理が分からない人は最初から相手にしません。分からせることは不可能だからです。法律も経済も論理なのです。情理しかなくても良いのは宗教くらいでしょうか。

 以前、コンピュータの進歩により、”ウェブ上にあるものは自分の頭の中にあるもの”との思い込みが発生して、それを指摘しても気が付かない、という話が出て来ました。宗教が病気かもしれないとありましたが、その通りだと思います。そこには論理性が全くありません。これもそうかもしれません。
6. Posted by 私も技術者   2018年01月08日 12:20
あの役に立たない3条ウォームを作ったのは、そういう文系の人だったのでしょうか。指摘を受けても恥じるところがありません。インチキだという方向に持って行ったのですから。論理を完全に無視しています。
文系の人たちには気をつけねばなりませんね。
7. Posted by northerns484   2018年01月08日 21:47
きわめて優秀な文系の知人がいますが、彼は私の周りの理系の人間よりよっぽど話が論理的です。

現実世界で起きていることを冷静に観察でき、その裏側に隠れている真実なり法則、場合によっては仮説、を論理的に導き出せるかあるいは説明できるか、ということが大切だと思っています。困った三条ウォームを作った人は、単にそういう姿勢に欠けていただけで、それは、理系だから、文系だから、以前の問題だと思います。

理系の場合、最終的に数式等で厳密に議論することが必要なために、そこだけ取り出せば論理的に説明しているつもりで、日本語での説明を論理的にしようとする努力が足りない人が少なくない、というのが私の実感です。なまじっか数式等で定式化できるだけに、かえってたちが悪いと思います。その欠陥が顕著にでるのが、英語の文章を作成するときで、何を言いたいのかよくわからない文が並び、指導に多大の労力を要した経験があります。そこから何を言いたいのかを読み取って徹底的に赤ペンを入れてゆくのは面白い作業ではありましたが。
8. Posted by dda40x   2018年01月16日 19:33
northerns484氏にすべて書かれてしまいましたが、文系理系という分け方は意味がないと思っています。優秀な人は両方できます。
問題は自分で分類してしまう人です。片方を考える能力がない、と最初から降参しているのです。
今回の変な3条ウォームにしてみても、小学校の理科の問題です。できないはずはないのですが、最初から考えることを放棄しているのですね。

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