2017年11月21日
第6章 各種等角逆捻り機構の使い分け提案
最後に、ここまでの考察を通して各機構の使い分けについて考察します。なお、ここでは「ロンビック」を強制的に等角逆捻りさせるリンク機構の代表としています。魔法使いの弟子やヨー軸シーソーの方式もロンビックと同等でしょう。
それでは、
「ロンビックイコライザ(以下Rh式と略)」
「フカヒレイコライザ(同F式)」
「ロール・トーション・バー等角逆捻り(同RT式)」
「ピッチ・トーション・バー等角逆捻り(同PT式)」
の4つについて考えます。
Rh式は基本的な原理が確立していますし、ガタや弾性変形を伴う動きが無いので、等角捻りを必要とする任意の車輌に搭載できると思います。
次にF式は図3のように斜め軸を回転軸としているので、厳密にはロール以外の運動が含まれてしまいます。そのため、ボギー車の場合、台車の回転に伴って、回転軸と台車ピッチング軸の成す角が近付くと、レイルのピッチングの影響を受けやすくなります。この条件になるのは、全長が短く、車幅の大きい(つまり回転軸がロール軸に対して大きな成す角になる)車輌で、しかも台車の回転角度が大きい、つまり急カーヴを曲がる車輌の場合と考えられます。これはちょうどナローのカブースなどではないでしょうか。このような車輌ではF式はピッチングの影響を受けやすいと推察します。
RT式は、既に説明したとおり、軽量の小スケール車輌に簡単に組み込むのに向いていると思います。ボギー車の場合は、台車回転軸がロール以外の動きをしないように、何らかの形で拘束しないといけないでしょう。捩じりバネだけで輪軸を支持するには帯板の使用が有用と思われます。根本的には短編成に用いる二軸車に使用する簡易な方式だと思います。
PT式も前述のとおり、ピッチ剛性が弱いので全長が短い車輌が向いていると思います。あえてピッチングを弱くするのも、動きに面白味を与える上では良いかもしれません。
最後に、これらの使い分け案を表1にまとめて掲載します。
表1 各等角逆捻り機構の使い分け案まとめ
名称 |
提案名 |
原理 |
動作 確実性 |
調整性(下) |
考察結果 |
ロンビックイコライザ |
リンクによる |
|
△ |
工作が可能ならば全般的に良好 |
|
フカヒレイコライザ |
上記を簡易化し、 |
|
○ |
台車が大角度で回転する小型ボギー車には懸念有り |
|
天秤棒イコライザ |
ロール・トーション・バー等角逆捻り |
バネ釣合による |
|
○ |
小型二軸車などに容易に設置可 |
90度捻り天秤棒 |
ピッチ・トーション・バー等角逆捻り |
上記のピッチ軸版 |
|
△ |
短尺小スケールの |
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コメント一覧
「ロンビックイコライザ」と「フカひれイコライザー」の大きな違いは、ロンビックではイコライザー自体が軸重を受けるので強度が必要であるのに対して、フカひれであれば、二軸車なら車軸の中点上、ボギー台車であればセンターピン上に支点を置けば、理想的にはイコライザーには車両の荷重はかからないので、角度の捻りに耐えられればイコライザー自体にはあまり強度は要らないということだと思います。
なおバネ式等角逆捻りについては、どちらの方式もどこに支点を設けるかということで違ってくるように思います。
またイコライザーの形状を考えると、動力車にはフカひれは向かないように思います。
sktさんのいわれるよな、荷重を持たせる点と車体姿勢制御のためのロンビックイコライザーを分離させるというのもひとつの方法だとは思いますが、本来のロンビックイコライザーとは違う機構のような気がします。
ゆうえんさまの仰る「実際の設計や工作の都合」というファクターが実製作では大切ですね。
作れない機構は意味がないのですが、今回は仮に機構選択を迷った場合の参考条件として、「どの方式がどのような力学的特性を持っているか」を示したつもりです。
ご指摘のようにロンビックとフカひれは車重の支持点が異なるのは確かです。
ロンビックの場合、全構成要素が剛体であるとすれば、構成要素の二等分点を回転支点としている構造上、宿命的に各支点の支持荷重が同じになります。
ここで、sktさまの仰るように、「あえて」台車や輪軸直上のセンターピンやヒンジに荷重を支持させる方策を考えます。その方策とは枕梁の剛性をイコライザ梁よりも強くする、言い換えれば、イコライザ梁を弾性体とすることだと思います。それではイコライザを弾性体(線バネ)に置き換えてみると…もうお分かりですね。
ロール・トーション・バー等角逆捻りと力学的に等価になってしまいます。(厳密にはイコライザ支点の回転拘束をかけると完全に等価となります。)
フカひれは支持荷重とロールモーメントを完全に切り離していますね。裏を返せば、モーメント荷重0で釣り合っている状態から、わずかなモーメント変化を伝達して動作させるため、荷重支持剛性(曲げ剛性)は不要でも、捩じり剛性は通常のイコライザ以上に必要と考えます。
支点位置に関しては、どの方式も「等角」を実現させるために2等分点支持は譲れないので、高さ方向の議論になると考えております。
なお、動作の確実性という観点では、
・フカひれの動作がヒンジのガタを介在していること
・通常のイコライザが常に支持荷重を受けていて荷重変化に鋭敏に反応できること
・模型の機構は曲げ剛性が十分強いこと
という観点からロンビックの方に軍配が上がるとしています。