2017年09月28日

poling

 アメリカの蒸気機関車のパイロットとテンダ後部の連結器梁には、必ず付いている凹みが poling pocket である。Big Boyにさえも付いている。この凹みの中心線は外向きであるのだが、魚梁瀬森林鉄道のシェイのポケットはどういうわけか上を向いている。 輸入したものの、部品を組み付けるときに意味を計りかねて、上向きに付けたのだろうと推測する。当時の日本では、ポーリングを誰もやっていなかったのだろうし、その後もやっていたという話は聞かない。

 その凹みに木製の棒を当て、相手の貨車の端梁のポケットに合わせる。そうしてそおっと押せば貨車は動き出す。棒は、力が掛からなくなれば落下する。田舎の側線ならそれで全く問題ないが、大規模なヤードでは、落下した丸棒が事故の元になるだろう。

S5_Poling_Car_No_data 落ちなければ問題ないわけだから、専用貨車の側面に関節を作って一端を付け、重心を小さなクレーン等で支えたものが現れた。それがpoling carである。この専用車を用いて、poling はより安全にはなった。この写真は L&N 鉄道のものであるそうだ。紐で棒を吊っている。この写真はMRの掲示板から借用している。

 しかし、1970年頃に何かの法律ができたらしく、大手の鉄道会社ではポーリングは廃止されたようだ。筆者の持っていた Indiana Harbor Belt の 0-8-0 のテンダにはこのpoling poleが専用のホルダに掛けてあった。

 Pennsylvania州のEast Broad Topというナロゥの保存鉄道では、このポーリングをやっていた。実際に筆者の目の前でやったのを見た。棒を手で抱えたまま推進したから、棒は落ちない。2002年頃の話である。商業鉄道では禁止されているのだろうが、観光鉄道にはその法律は及ばないのだろう。

 筆者は、この poling car を用いて、さらにもう一つ向こう側の線の貨車を動かす話を聞いたし、何かの文献でその図も見た。そのことを紹介する記事を、さるサイトに書いておいたのだが、文献が見つからないから誤りであると、削除されてしまった。否定の証明ほど難しいものは無いのだが、ご理解戴けなかった。今回、デニスに話を聞いてみた。
「その写真を見たことはないが、当然やっているだろう。出来ることはやらないわけがない。しかし危険な作業だから、やったとは言えないだろうな。」ということであった。読者の中でそのような文章、写真、図などをご覧になった方はお知らせ願いたい。

コメント一覧

1. Posted by YUNO   2017年09月28日 11:55
軽い貨車は斜めに押せば簡単に脱線するでしょう。法で禁止されなくても、鉄道会社が自主的に廃止した可能性もあります。
日本は鉄道の技術をすべて輸入したのに、貨車の入れ換え方法が輸入されなかったのは不思議です。アメリカ製の輸入機関車をざっと調べてもポケットの付いた機関車はほとんど見当たらないので、会社ごとの方針の差も、かなりあったのかもしれません。
2. Posted by たづ   2017年09月28日 23:21
日本の場合、貨車入換動車が入るまで80〜90年もの長きに亘って、貨車(軽量な二軸貨車主体に)を手押しで動かすという慣行があり、ヤード作業(飛乗り制動など明らかに不適切ですが)全般が人件費をかけて当たり前という感覚では、こういう工夫は導入の機会がなかったのでしょう。
日本人が運営していても、純然たる米国流だった満鉄では、どうしていたのでしょうか。貨車は手押しでは動かない大きさです。

3. Posted by Tavata   2017年09月29日 07:54
失礼ながらYuno氏への反論になってしまうのですが、軽量な2軸車でも脱線せずポーリングはできると思います。
アメリカのポーリング控車自体が相当軽量な車両ですし、ポール自体の強度が貨車を脱線させるほどの荷重に耐えられないでしょう。
実物の貨車は車重の0.5%(≒5パーミル勾配)以下で転がるので、10tの貨車で50kg以下、50tでも250kg以下です。真横からこの力で押しても脱線はしないと思います。編成のまま入替するなら軽い2軸車が脱線するかもしれませんが、そもそも編成のまま押せるほどポールの強度がないでしょう。

ポーリングの禁止は、貨車の大型重量化でポールに負荷が掛かり、ポールが折れる座屈事故やポールが滑って抜ける事故が起きるようになったことが理由ではないでしょうか?
また合理化で数両まとめたままでの入替が増えて、このような事故が起きやすくなったのかもしれません。
圧縮荷重の掛かったポールはどこに飛ぶか分かりません。最末期の近代的な控車(の模型を見た記憶があります。ロードネームはたしかBN)では、ポールが、かなり太い金属製(模型も骨太の鋼線)にして強度を稼いでいたかと思います。

私も満鉄のポーリング有無に興味があります。
ただ、満鉄はアメリカ的とは言っても、ヤード有効長はアメリカほど長くないと思いますので、ポーリングは無かったのではないかと推定します。入れ替え用のプレニ型でもポーリングポケットは見あたりません。

ポーリングは結局、アメリカの20世紀初頭までの「編成やヤードは長いが貨車一両はそれほど重くない」という特定条件での合理化の結果と推定します。
なお、隣の線の貨車をワイヤで引張って動かすことは、東ヨーロッパでもやっていたようです(たしかYouTubeにルーマニアの森林鉄道の動画があったかと)
4. Posted by nextcube   2017年09月30日 10:37
5 パイロットの窪みが何なのかずっと疑問だったのですがすっきりしました。ありがとうございます。位置からして連結に関係していると想像していたのですが貨車には窪みがありません。まさかこんな使い方をしていたとは!勉強になりました。
5. Posted by dda40x   2017年09月30日 19:06
貨車は1960年代までの製造ですと窪みがあります。
それ以降は無くしてしまったのです。ほぼ同時に屋根のラニング・ボード、ハシゴ等もなくなりました。危険な業務をさせないことになったのです。
6. Posted by YUNO   2017年10月01日 21:25
文献を調べましたところ「Trains and Technology」の175ページにポーリングの解説が少しだけありました。

それによると、推進運転中にポールをうっかり落としてしまい、それに機関車が乗り上げて脱線することがあったそうです。
少しでも空転すると機関車の速度が落ちて貨車との距離が離れてしまいますから、ポールの落下は日常的に起こっていたと見てよいのではないかと思います。非常にデリケートな運転が要求されたはずです。
そして落下対策としてポールがフレームに固定されたポーリングカーが発明されたようです。
ポーリングが廃止された理由としては、ハンプ式ヤードの発明によって必要がなくなったため、とも書かれています。

少し分からない単語があったのを飛ばして読んだので、間違いがあるかも知れません。
7. Posted by Inocchi   2017年10月02日 17:58
初めてお便りを差し上げます。
何時もブログを楽しませていただいております。鉄道模型社ファンの16番ゲージャーと言えば、私の歳も大体知れると思います。
poling pocket は、16番のDD12を作った時に、真似して「窪み」をエンドビームに作りました。
TMSでも見たような気がしていたのですが、他の探し物をしていて偶然に見つけました。通巻535号(1990年)のミキストで触れています。 poling car は出てこないようですが、隣の線の貨車を押す略図は、載っています。何かのご参考になれば幸いです。
8. Posted by dda40x   2017年10月06日 22:11
たくさんのコメントありがとうございます。
ポールは木製で、尖端にスティール製の「キャップ」と「たが」が嵌めてありました。
先端がつぶれにくいようにしてあるのです。持ち運びのできる重さですから、太さがなく、どう考えても2,3両を動かすのが限度です。
向こう側の車輛を動かすのは最低でも2輌動かすのですから、なかなか難しい条件ですね。
9. Posted by dda40x   2017年10月10日 21:28
満鉄でもポーリングをやっていたという証拠を見つけた、という連絡がありました。
いずれ写真等が送られてきますので、紹介します。
テンダの後端にポーリング・ポケットがあるそうです。
機関車前端にないのは、どうしてでしょうね。

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