2017年03月17日

Kimpei Sofue’s life  (9)

 祖父江氏のハンダ付けのテクニックは白眉である。常に完璧なハンダ付けをするから、彼の模型でハンダ付けが外れるということはない。 
 棚にハンダは何種類もストックがあった。また、ブラスの材料も何種類かあり、より楽にかつ、正確に工作できるものを用意していた。
 最終期の特製品には、彼独特の仕上げ加工が随所にみられる。ブラスの針金を切ると、すぐにヤスリでその断面は面取りされる。シャァで剪断加工された板は、全ての切断面をヤスリで加工して直角にする。彼は大量のヤスリを持っていた。すべてのヤスリは使用前にsafety edgeを油砥石で擦って、準備する。そうしないと、削れて欲しくないところが削れてしまうからだ。
 足踏みのシャァは完璧に研がれ、薄いティッシュの一枚を置くと、真っ二つになる。彼の工房はすべて整頓され、美しかった。

 25年前、私は再度アメリカに居て、祖父江氏の望むものを送って差し上げていた。日本に戻って、彼に会いに行った。祖父江氏はドイツの機関車のスポーク動輪の原型を作っていた。私と話をしていても、手を休めない。眼はこちらに向いているのだが、糸鋸でブラスの円盤を切り続けていた。指に目が付いているのか!と思ったほどだ。
 お茶と菓子を戴きながら話をするのだが、彼の手はテーブルの下で動いている。突然彼は、言った。
「ほら、できた!」
 彼は小さなキサゲを用い、手の感触だけでスポークの断面の丸味を付けていたのだ。

 アメリカの模型人で、祖父江氏の工房を訪ねたのは二人で、ペンシルヴァニアのBill Pierson氏と、Original Whistle Stop のFred Hill氏だけである。 

 祖父江氏はKTMで長く働いたが、要求される以上のことをしていた。それは彼のプライドである。彼は世界最高の機関車が作りたかった。そして、彼はそれを成し遂げたのである。

コメント一覧

1. Posted by brass_solder   2017年03月17日 13:57
和訳の掲載ありがとうございました。
Oゲージ(Oスケール)を知らない私には祖父江氏は名前を知ってるだけの存在でしたが、おかげさまで偉業を知ることが出来ました。
エピソードの随所に熟練した職人さんを感じますし、熟練だけではない天性のセンスもかなりのものだと思います。
私は素人ですから同じように出来るはずは有りませんが、工作する者としてあやかりたいと思います。
2. Posted by dda40x   2017年03月21日 04:24
コメントありがとうございます。
祖父江氏は職人ですが、趣味人でした。
根っから汽車が好きなのですね。
新しい工夫を思いついて、それを話すと、眼を輝かして、
「そいつは面白い、やってみよう。」
というわけで、製品に取り入れられたものがいくつかあります。
道具を自作するのが、プロと素人の違いであることはよくわかります。いとも簡単に作って、焼きを入れて研ぐのですが、これがよく切れるのです。

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