2016年04月04日

ハンダ付け用フラックスの仕組み

 今野氏のブログでフラックスの話が出た。ご指名で少し解説をさせて戴く。
 
 ハンダ付けをするには新しい金属面を出さねばならない。そこに融けたハンダが接触すれば、合金化が起こり、金属結合ができる。以前にも書いたが、それはアメルガメイションであり、スズ特有の性質を利用している。
 新しい金属面が出ればハンダ付けが可能だから、酸化されやすいアルミニウムもハンダごての先でがりがりと擦れば、ハンダ付けが可能である。もちろんこの操作は融けたハンダの池の中で行わねばならない。すべての面を均等に擦って新しい金属面を出すのは、かなり難しい。そこで超音波などを当てて、酸化被膜を壊すわけだ。工業的にはこの方法を採っている。

 相手がブラスや鉄の場合には、ある程度の酸化被膜を取ってから、フラックスを塗ると、酸性であるから酸化被膜が溶ける。そういう意味で、塩基性のフラックスは考えにくい。通常の金属の中では、亜鉛、スズ、鉛程度しか塩基と反応するものは無いし、その反応速度も極端に小さい。

 プロは塩酸(塩化水素という刺激のある酸性の気体を水に溶かしたもの)を用いる。塩化水素という気体は水分子と強く結びつくので、 塩酸は高温でも塩化水素がかなり逃げ出しにくい。 しかし多少は飛び出してあちこちの金属類を錆びさせる。塩酸は金属酸化物をよくぬらし、ハンダが浸み込むのを助ける。
 塩化亜鉛はどうだろう。塩化亜鉛の飽和水溶液は、その沸点が300 ℃を超える。ということは蒸発しない。これを用いれば、ハンダ付けの時に飛び散ることがないはずだ。塩化亜鉛はわずかに加水分解して、酸化亜鉛と塩酸になる。このうちの塩酸がフラックスの効果を発揮する。酸化物を溶かして、新しい金属表面を出すのだ。塩化水素は少量しか発生しないし、直ちに金属酸化物と反応するので、飛び出す量は少ない。すなわちあまり臭いがしない。

 ここで大切なのは飽和溶液を使うことだ。ほとんどの方は薄めて使うとおっしゃるが、本当はそれは正しい用法とは言えない。 結晶が沈んでいる上澄みを使うのが良い。少量でよいのだ。薄めたものは沸騰するから、ビチビチと飛び跳ねて、周りのものが錆びる。沸騰して水が飛んでいくと、飽和溶液になって安定化する。すなわち薄めると、大半が無駄に飛んでいくのである。飽和溶液を使うと、跳ねないことに気が付くだろう。
 しかし、場合によって弾かれてしまうことがある。それは下地処理が不十分なのだ。界面活性剤(要するに洗剤)を少し足すと、ぬれを良くするから、フラックスが良く付着するようになる。筆者はトイレの酸性洗剤を一滴足すが、これは妙な香料が入っていて、臭い。
 筆者は、塩化亜鉛を使うハンダ付けする時は必ず外のデッキの上でやる。家の中でやると、鉄レイルが錆びる。         

コメント一覧

1. Posted by ゆうえん・こうじ   2016年04月19日 09:11
板金用フラックスも薄めずに原液使うと、確かにはねないですね。ただしフラックスの蒸気に臭いは強烈です。
2. Posted by dda40x   2016年04月21日 08:05
臭いがするものは、塩化アンモニウムが入っているのではないでしょうか。
塩化亜鉛だけの飽和溶液は、ほとんど臭いませんし、全く跳ねません。
3. Posted by ゆうえん・こうじ   2016年04月21日 10:41
そういえば、塩酸臭というよりアンモニア臭がします。
塩化アンモニウムが配合されているのは何か理由があるのでしょうか?


4. Posted by dda40x   2016年04月21日 18:38
塩化水素を発生させるためです。ステンレスは表面に緻密な酸化被膜があるので、それを溶かすには必要だという考えです。 要するに軽くヤスリを掛けてからハンダ付けすれば、塩化亜鉛だけで完璧に付きます。
相手がブラスであっても、接合面には軽くヤスリを掛けるのは常識のはずです。錆びているものを付けようとは思わないでしょう。

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