2014年05月17日

「銅喰われ」という現象

 最近使われるようになった言葉である。世の中のハンダが、突然無鉛ハンダに切り替わってから出てきた言葉だ。

 ハンダ付けがなぜできるかということの、根本原理について触れた本はあまりない。以前このブログで扱ったアマルガメイションがそれである。水銀、スズ、インジウムなどは他金属と接触すると拡散し、合金を作り易い。他の元素では起こらないかと言うとそうでもないが、目に見える顕著な例を作りだすのがこれらの3元素である。水銀を使う人はいないが、インジウムを主体とするハンダは使われている。1000年以上も、鉛とスズの合金であるハンダは金属接合材として使われてきた。専ら銅合金を接合している。1000年以上前の遺物のハンダ接合がほとんど変化しているように見えない。それは鉛が入っているからであろう。

 鉛を含まぬハンダはこの15年くらいの間に業界を席巻してしまったが、果たして安定性はどうなのであろうか。まだ問題が顕在化していないが、そのうちに世界中で恐ろしい事件が起こりそうな気がする。コンピュータの暴走などが起こりうると思う。どうして1000年もの実績を捨てて、怪しい無鉛ハンダを使う方向に走ったのだろうか。ぬれ性も良くない。

 製造上では、コテの異常な消耗が報告されている。無鉛ハンダは銅を溶かすのである。それを「銅喰われ」と呼ぶのである。しかし、普段鉛ハンダのみを使う筆者は銅のコテ先が顕著に減った経験がない。Oスケールだから、HOの人の4倍ほどハンダを使っているはずだ。大半は炭素棒だが、たまには銅のコテも使う。ポイント作りには欠かせない。ハンダの中で銅がすぐ飽和するとも思えないが、次々と新しいハンダを大量に供給しないと溶けないだろう。HO以下の方がそれほどハンダを使うであろうか。筆者は年間500 g以下である。1年で棹状のハンダ1本を消費できない。

 鉛ハンダが銅を喰うのなら、銅の風呂釜などすぐに駄目になってしまうのであろうが、実際には長持ちする。 空釜さえ焚かなければ、数十年持つ。筆者の実家にあったのは、家を取り壊すまで30年ほど無事故であった。近所にあった職人の仕事場で、友人のお爺さんが丹精込めて作ってくれた美しい釜だった。筆者は幼稚園児であったが、その工作を横で毎日見ていた。リベットを打って留め、炭の上で加熱し、コバを丸めてカシめる。そしてハンダを流して隙間を無くすのだ。炭の上で予熱しておいて、焼きゴテでジュンと付けた。

 銀は鉛ハンダとよく反応することは、学生時代から知っていた。無線マニアはよく知っていることだが、銀を厚くめっきした銅線で高周波コイルを作る。それをハンダ付けすると、約1年で割れて来る。銀がハンダに移って来るのだ。それを防ぐために、予め銀を飽和させたハンダを作った。2%が良いと文献にあったので、その配合のものを作って、友人たちに分けたことがある。しかし銅についてはそのような話は見たことがない。十分長持ちしている。また、アマルガメイションは液体でないと起こらないというのは、勘違いである。
 アマルガメイションは鉄に対しては起こりにくいから、水銀の容器には鋼板を使う。最近のハンダゴテの先は鉄をめっきしてからハンダめっきしてある。鉄の層はハンダによるアマルガメイションを防ぐためである。無鉛ハンダが出てくる前から存在するから、その防止には多少の効果があることが確かめられたからであろう。
 

 ネット上の文献らしきもの(決して文献ではない)には諸問題があり、信用できないものが大半である。書いている人は専門家ではなく、思い違いなども多い。  

コメント一覧

1. Posted by たづ   2014年05月17日 11:51
5 はじめまして。
長らく拝読しております。
自身はNゲージャーですが、参考になる技法やお話を興味深く読んでおります。
先日の線路の敷き方、特にバラストの固着方法は目からうろこでした。TMSあたりが原点の、木工ボンドの固着法(またはその亜流)しか方法がないものと思っていましたから、固着剤に防音材の役割を持たせる方法は新鮮でした。
今回の無鉛ハンダの件ですが、端緒はアスベストあたりから欧米で環境有害物質に過敏になり、それが水銀、鉛、と対象が広がってきたため無鉛ハンダなるけったいな代物の登場と相成ったのでしょう。
これを規制するRoHSなる規格も、ある意味得手勝手なもので、蛍光灯の水銀は代替物が事実上ない(あるにはあるが桁違いに高価)という事で外れています。
欧米の電子機器メーカーが半導体技術で日本より不利な立場にあるのも一因に思えますが、確証はありません。
ただ、これらはあくまで頻繁なリサイクルが想定される電子機器については要るかもしれませんが、工芸品である鉄道模型や、腐食が危険なボイラー(もちろん風呂釜もですが)は対象から外すべきではないでしょう。
日本の場合、アメリカのようなアラーム(貴ブログで拝読しました)ではなく、最終手段の溶け栓で保護しているのですから(まあそれをリベットで殺して水漏れ補修をしたというある意味猛者な機関区もあったそうですが)、なおさらです。
ハンダが環境に影響を及ぼすとすれば、どこぞの発展途上国でいい加減リサイクルをして、不用品あるいは無価物として放置ないし排出したらば、の話です。
私も中学生の時多少板金で半田を扱いましたし、母が内職で電子部品のハンダ付けをやっていました。
ハンダごてから上がる煙はペースト・フラックスのそれで、鉛の沸点までいっているとはとても思えません。

2. Posted by ゆうえん・こうじ   2014年05月18日 14:21
無鉛ハンダというのは、産業廃棄物として捨てられた時の環境負荷を考慮して出てきたものだと思いますが、模型機関車 少なくても自作品は産廃にはならない、なってほしくないので鉛入りハンダでよいと思いますが、いかがでしょうか?
とこで鉛入りのハンダは今後も入手できるのでしょうか?
3. Posted by dda40x   2014年05月18日 23:18
RoHSは本当に困ったもので、原理主義者でありながら、意図的な例外を設けているのですね。SonyのPlay Stationの電線の被覆に黄色着色料の硫化カドミウムが入っていただけで、数億円分の輸入キャンセルをしてきましたことを覚えています。カドミウムが危ないと言っても、人類にとっては不可欠元素で、なければ生きていけないのです。そのあたりが分かっていない人が規則を作って運営しています。道路の黄線もカドミウムが入っていますが、それで中毒が起こったなどという報道もありません。ドイツには黄色の線が無いのでしょうか。
鉛ハンダは実績がありますが、銅ハンダは怪しいですね。
水道用の銅合金は、快削性を持たせるために鉛を少し混ぜていましたが、それも禁止されました。それで死んだ人がいるのでしょうか。どうかしていますね。

模型用は鉛ハンダに限ります。ぬれ性が良いので美しい仕上がりになります。また、長持ちするはずなので、我々が死んでも確実に残ります。

鉛ハンダはたくさんストックがありますので、ご希望に応じておわけしますよ。色々な配合のものを作っています。



4. Posted by 森井 義博   2014年05月19日 20:08
私も模型製作では鉛入のハンダしか使いません。
無鉛ハンダを使用して失敗したり、気分を害したりする位なら、多少有害(自分に)でも鉛入ハンダの方が良いと思っています。
東京ならば秋葉原へ行けば普通に売っています。
需要はかなりあるのでしょう。
5. Posted by dda40x   2014年05月19日 22:09
模型工作に無鉛ハンダを使う人がどの程度いらっしゃるのでしょうね。
水道工事にはしばらく前から無鉛ハンダを使っていますが、流れが悪くて感心しません。
鉛ハンダを使った場合、水道水に溶け込む鉛の量がどの程度なのかという測定値には随分とばらつきがありました。はたしてこれで健康被害を防いでいるのか、怪しそうです。

当家の熱水配管は一部を自前でやりました。

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