2014年02月20日

続 水蒸気と湯気

 蒸気機関車のボイラー内の圧力は高い。温度は200 ℃を上回る。さらに加熱されるが、それはこの問題とはあまり関係がない。シリンダ内で仕事をしたのち、やや圧力、温度が下がった水蒸気は煙室内のノズルから煙突へと噴き出す。この時、煙室内の空気が蒸気の噴出によって吸い出され、火室の通風が良くなって燃焼を助ける。

 日本型蒸気機関車には排気膨張箱という不思議な箱があって、排気の脈動を抑えるという言い伝えがあったそうだが、実際には役に立たなかった。諸外国の機関車でそのようなものを付けている例はまず見ない。排気音が、小気味よく弾けるように聞こえるのはそれが無いからである。
「背圧が少ない方が、仕事量が大きくなって効率は上がる」
というのが物理学的な思考である。一部の古い国鉄の機関車はこの膨張箱を付けていなかったので、明らかに排気音が異なった。走りだすとき、パッ、パッ、パッという音がした。

凝結開始 さて、蒸気機関車の排気はどうして白く見えるのであろうか。
 排気はおそらく大気圧の1.5倍ほどの圧力をもっているはずだ。温度は120℃ほどだろう。それが大気の中に放出される。すると、水蒸気は急速に膨張し、大気を押し退ける。その時仕事をしてしまうので、温度が下がる。
 すると、その下がった温度で許される飽和水蒸気圧は小さく、たくさん存在する(濃度の高い)水蒸気の大半は、凝縮して水滴にならざるを得ない。すなわち断熱膨張が起きた結果、水蒸気の濃度が高いまま、温度が下がったのである。

 グラフの右の部分から、左へと行くわけだ。実際には排気は空気と混じって薄められるので、やや下の方に行く。また、このような過渡現象は直線上ではなく、複雑な曲線上にあるはずだが、そのことはここでは無視する。

 「断熱膨張」がキィワードである。この言葉が無いと、説明が出来ない。
 
 結論を言うと、ボイラを持たない模型からは湯気は発生させられない。先回に書いたボイラもどきの蒸気発生器は、大気圧下でやっている限り、湯気は見えない。2,3気圧のボイラがあれば、盛大に湯気を上げて走る模型になるだろうが、怖くてそんなことはできない。

 昨年、伊藤剛氏にお会いした時、氏も同じ質問を受けたことがあると仰っていた。その時、断熱膨張という言葉が出たので、さすがだと思った。

コメント一覧

1. Posted by skt   2014年02月20日 07:37
中学で真空実験したフラスコのコックを開いたときに内側がすこし曇ったのを覚えてる人もいるかも。そのときの湿度にも依るかな?ボイルシャルルの実験も大きなシリンダのプランジャにアルコールかなんかをすこし入れておいて急速に引っ張って一瞬曇るのを見せてたように
なつかしいですね
最近はこういう実験をやらないでシミュレーションか教科書丸暗記だから、連想が効かないかも

2. Posted by dda40x   2014年02月21日 11:30
空間中に大量に存在する水蒸気が、急に冷えて蒸気でいられなくなるというのがミソなんですね。
最初の状態の温度が低いと蒸気の量が少ないので、意味がないのです。

昔、京大の宍戸先生が、「水は蒸発潜熱が大きいから駄目です。」と言ってらした記事を読んだ覚えがありますが、この解釈は正解とは言い難いですね。そのファクタもあるけど、他の部分が大きいのです。

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