2014年01月24日

続 フランジ

 フランジが摩耗した車輪で手を切った方は少ないであろう。”ピザ・カッタ”と揶揄する人もいたが、本当に切れる。
 筆者には経験がある。昭和30年代の3線式Oゲージで、EB電気機関車の動輪が摩耗したのだ。軟らかいブラス鋳物を挽いた動輪と、ブリキ線路とが擦れるわけだから、当然のことながらブラスが負けるのである。擦り切れるまで走らせたわけで、動輪を嵌め替えて、さらに走らせた。
 ライオネルは極端に固い焼結合金(sinteredという)の車輪だから、レイルには負けない。すなわち、手を切る心配はない。

 フランジでカーヴを曲がるということに異存はない。それは当然である。レイルヘッドの食い違いを乗り越えることにフランジ角が効いていることは、筆者も小学生のころから気が付いている。 フランジが擦り減った車輪は脱線しやすく、新品の車輪は多少フランジ角が小さいので脱線しにくかったのである。フランジ角を小さくしようと、減った車輪を父親の電気ドリルに銜えてヤスリを当てた。いわゆるドリルレースなのだが、あっという間にフランジが丸坊主になって泣きべそをかいた。

 フィレットがレイルヘッドの食い違いを乗り越えるというMR, TMSの説明が明確な間違いであることは1987年に吉岡精一氏から知らされた。彼は国鉄の研究所の友人から教えられたそうだ。ナダルの式もその時知った。その結論は当然であるが、このような数式を生み出した能力には畏敬の念を覚えた。

 フランジ角は脱線抗力を決める。直角では最大値になるが、別の原因で直ちに脱線する。ここでも摩擦係数が絡んでくる。摩擦係数が小さい材料を使えば、フランジ角が小さくても良いのである。
 フィレットは何のためにあるかということは、実物の専門家が解説されているが、その概略は、圧力が一点に集中して金属組織が破壊されるのを防ぐためである。実物と模型は同じ理屈によると、力説されているが、圧力が異なるので、理屈は正しいが応用する必要は全くない。ステンレスの摩擦は小さいので、フランジ角に到達する前にフィレットを滑り落ちる
 すなわち、模型ではフィレットの効用が別にあるわけだ。先回のLow-Dの写真でフランジにほとんど擦過痕がないのは、この結果である。

 昨年から、フィレットについてかまびすしい論議があった。どうして反論しないのかという問い合わせは多くの方から戴いていた。専門家だという方の論理展開は全て同じで、「素人は知らないだろうが…」という書き方になっている。素人も観察くらいは出来る。模型の走行を時間を掛けて観察するべきである。観察に時間を掛けないと、理論に振り回されてしまう。
 不思議なことに、専門家が「こうだ」と言うと、「私もそう思っていました」という意見が出てくる。ものを言う前に観察しよう。
 Low-D車輪をカーブ上で乗り上げるように押しても、フランジの円錐台面に当たる前にずり落ちるのが観察できる。撮影は非常に困難であるが、望遠鏡で覗くとよく分かる。半径の大きなフィレットはよく働いている
 模型と実物は大いに異なるのである。フランジが接触しなくなるだけでも、曲線抵抗はかなり小さくなることを、だれも否定することはできないだろう。

 実物の技術者は、鋼と鋼の接触を考えているが、模型には異なる材料が使われている。当然のことながら圧力が異なり、曲率も異なる。さらに速度も異なる。フランジ塗油器もないし、散水装置もない。 フィレットが大きいと走行が安定しないそうだが、模型には誰も乗っていないから乗り心地は考慮する必要はないだろう。

 観察はまだまだ続く。

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コメント一覧

1. Posted by 読者   2014年01月24日 18:38
このへんの話ではありませんが、「専門家」には、多々思い当たるところがあります。

業界内の会話では、前提条件の類はお互いに認識済ですから省略します。これは当然ですが、前提条件が違う、あるいは昔と環境条件が変わっているのに過去の知識をそのまま当てはめるのは、困ったことです。
2. Posted by dda40x   2014年01月24日 20:08
 専門家がジェネラリストである保証がないので、専門家の言うことは常に疑わねばなりません。私は商売柄、教科書、学術論文をいつも読んでいますが、それらは全て専門家が書いています。怪しい話が五万とあります。
 一般人は、専門家には弱いですね。

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