2012年01月06日

続々 Etchant

 エッチャントは酸性のものばかりではない。アンモニア水でも効果がある。昭和40年代のTMSにも載っていたように記憶する。アンモニアは酸化剤があれば銅と良く反応する。
 昔の冷凍機はアンモニアを使用していた。その中に空気が混入していると、銅パイプは腐食されてしまう。故障した冷凍機の中には、青い結晶が見つかることがあった。それは銅イオンとアンモニアとの化合物である。

ammonia as a ligand 要は金属が溶ければ良いので、「酸化剤 + 溶解を助けるもの」 があればよい。アンモニアは銅、亜鉛、ニッケル、銀に対して良く働く、錯イオンをつくる配位子(ligand)である。鉄、鉛やスズとは反応しないので、青銅、快削黄銅、ステンレス鋼、炭素鋼などには意味がない。 酸化剤としては酸素でも十分であるが、酸素を供給しようとして空気を吹き込むとするとアンモニアが逃げてしまう。それを避けるには低温にするので反応速度が小さくてうまくいかない。
 過酸化水素を加えれば低温でも働く。生成する液が銅をたくさん含んでいれば、極めて濃い藍色になり、美しい。
 快削黄銅は鉛を含み、多少反応しにくい。スズを含んだ合金も困難だ。

 非酸性エッチャントの必要性を感じている。アンモニアより効果が大きく、また蒸発しにくく、さらに臭いが無いものが欲しい。ある程度の候補は見つかっているので、検証実験をする。公表するからには、毒性が低いものでなければならない。
 いずれアマチュア用として良い候補を用意できるだろう。

 もう25年も前に「醤油で機関車を洗うときれいになる」ということを、所属クラブで発表した。これには誰も乗ってこなかった。会報には”Hint of the Mouth" という題でコラムに載った。そのタイトルのつづりがMonthではなく、Mouthだったので、真に受ける人が減ったのかとも思ったのだが、そうではなく、本当に誰も興味がなかったのだ。

 醤油には各種のアミノ酸が含まれ、それらは銅イオンとかなり安定な錯イオン(キレート)を作るので、酸素の助けを借りて銅を溶かす。10円玉を醤油で拭くときれいになる事実をご存知の方も多いだろう。
 もちろん、「醤油+過酸化水素水」 でもよく働く。

コメント一覧

1. Posted by DD51   2012年01月06日 11:57
TMSのヒント欄にソースで洗うと綺麗になると載っていましたが、それと同じでしょうか。
2. Posted by dda40x   2012年01月06日 13:27
メカニズムが多少違います。いわゆるソースは酢酸などの有機酸がたくさん含まれていて、弱酸性です。醤油も多少はそれらが含まれていますが、効果がはるかに大きいキレート剤としての各種のアミノ酸が含まれています。食塩はほとんど関係ありません。
3. Posted by YUUNO   2012年01月08日 01:43
醤油を使う方法に対して反応が薄かったのは、化学的に正しくとも、食品を工作に使う事に対して抵抗があったのではないでしょうか。
コスト面ではどうだったのでしょうね。
4. Posted by dda40x   2012年01月08日 06:45
たまに古くなって始末に困る醤油がありますので、それを使っていました。浸す必要はなく、すくって掛ければよいので量は要りません。
固定観念から抜け出せない人が多いということを知った次第です。

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