2011年09月08日

津波被害の機関車の修復

 津波で海水に浸かった機関車を修復するプロジェクトがクラブ内で進んでいる。捨て去るにはあまりにも惜しい記念碑的な機関車をなんとか救いたいと、クラブ員が努力されているのだ。頭が下がる。
 筆者も、アドヴァイスを求められている。

 モータはまず駄目である。というのは海水に浸かっているうちに、イオン化傾向の差で鉄が急速に溶け出し、錆になる。銅と鉄が組みあわさっているので、全体が電池を形成することになる。コイルは絶縁してあるのだが、水につかれば絶縁紙が膨張し、あちこちでショートして部分的な電池を形成してしまうからである。真水であれば洗って乾かせば何とかなるが、塩水ではどうしようもない。伊勢湾台風の時、水につかった機械の修復を父が指導していたが、海水に浸かったモータは全部ばらしてコイルを巻き替えていた。模型用モータのコイルを巻き替える人はおそらくいまいし、より高性能なモータに取り換えるのが普通だろう。

 ブラス部分は物理的に錆びを落とせばよいが、問題はダイキャストである。これは亜鉛合金を高圧で型に入れたものである。亜鉛のイオン化傾向は大きく、銅合金と接触した状態で海水という電解液に入れられたので、亜鉛は急速に溶けていく。尤も、中性条件なので反応速度は多少小さく、溶けだしたイオンは水酸化物として析出する。亜鉛は両性元素なので、その水酸化物は酸にも塩基にも溶ける。酸で洗えば他の金属が溶けるが、塩基なら水酸化亜鉛だけが溶ける。
 
 強塩基は危険で一般家庭にはない。その代わりになるかなりの強さの塩基の作り方を紹介する。炭酸水素ナトリウム(いわゆる重曹)を水に入れて3分間煮沸すると炭酸ナトリウムに変化し、pHは12程度になる。この操作はステンレスなべ中で行う(アルミの鍋は反応するおそれがある。)
 
 はたして錆を落としただけでよいのかどうかは分からない。亜鉛ダイキャストは、粒間腐食割れという現象が起きて体積が膨張して割れる。腐食によってそれが助長される可能性もある。それは何年後に起こるのかは分からない。しかも、一部の亜鉛合金の中にはマグネシウムを含むものもあるので、それは海水中ではかなりの速度で溶け出す。
 もし筆者が「どんなことをしても良いから何とかせよ。」と言われたら、真空電気炉で加熱し、中に潜り込んでいる水、気体を排除し、そのまま真空樹脂充填する。しかしあまりにも高度な処理で、それを一般人が行うのは無理だ。

 クランクピンが鉄であると、その部分は電位差の影響で錆びやすい。これはブラスにねじ込まれた場合である。
亜鉛ダイキャストにねじ込まれている場合は亜鉛が犠牲電極になって、ピンは錆びにくい。
 ダイキャストは、色々な意味で不安定である。筆者がブラスにこだわるのは、それが一番安定であり、1000年以上の寿命を持つからである。ダイキャスト部品は外して、ブラスのロストワックス鋳物にするのが筋であろう。

 錆を落とす物理的方法は、サンドブラストが一番楽である。これは最近ホームセンタで安く売っている。少々埃が出るので、屋外でやるのがよい。そのあと超音波洗浄機で良く洗って注油する。

dda40x at 09:08コメント(0)錆び | 化学 この記事をクリップ!

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
Recent Comments
Archives
Recent TrackBacks
Categories
  • ライブドアブログ