2011年09月04日

フラックスの役目

 帰国して3日目だが時差調整が、なかなかできない。どうしても朝早く目が覚め、夕方から眠い。以前は2日で何とかなった。これも老化の一つの形なのであろう。
 炭素棒ハンダ付け装置はたくさんの申し込みを戴いたので、電気屋の社長にも頼み易くなった。これで申込は締め切らせて戴く。

 留守中に戴いたコメントに興味深いものがあった。アース板に鉄板を使うというものだ。これは一理ある。鉄の電気伝導度は比較的大きく、厚い板でしかも距離が近いから、電気伝導性ということでは全く問題ない。磁石が付くからそれで押さえるのは良い考えかもしれない。問題は錆びである。
 
 日本の模型人でブラスのハンダ付けにいわゆる油性ペーストを用いる人はほとんどいないだろう。筆者はたまに使うが、塩化亜鉛水溶液の方が楽である。接合部をあまり磨かなくても必ず付くからだ。すなわち、塩化亜鉛は表面の酸化被膜を溶かす力がある。塩化亜鉛の水溶液は酸性が強く、金属酸化物を溶かし金属面を露出させる。そこに融けたハンダがその表面をぬらし、金属結合を形成する。ペーストは磨いた母材金属面を覆い、酸化されないようにするのが主目的で、積極的に酸化被膜を取り除くわけではない。
 日本では松脂を使うことが多いが、昔、他国では獣脂を使うこともあった。すなわち、油気を取らねばならないというのは説得力がない説明であり、むしろ良く磨くべきというべきである。

 さて、鉄でも油性ペーストでハンダ付けができるが、かなりきれいに磨かないと付きにくい。塩化亜鉛であれば、一瞬でハンダが母材をぬらして滲み込むのが観察される。塩化亜鉛は鉄の表面も溶かしているのである。

 「鉄は錆びにくい金属である」と書くと、正気を疑われそうであるが、事実である。磨かれた鉄の表面には水を含んだ酸化被膜(不動態膜)が形成され、そう簡単には錆びない。現実には大気中の硫黄酸化物、海塩の微粒子などが結合し、その酸化被膜を破るので錆びが進行する。
 例えばこのような実験が可能である。鉄板を磨き、机の引き出しなどに入れて十日ほど待つ。たぶん錆びていない。その一部に塩化亜鉛水溶液を付け、5分経ったら、水で洗い落とす。乾燥してから、また引き出しに入れ、十日ほど経ってから観察する。
 不思議なことに塩化亜鉛水溶液が付着したところだけ、錆びが発生する。塩化物イオンが不動態膜を壊したのである。全体をよく磨けばまた錆びにくくなる。ハンダ付けの時に押さえに使うペンチなどは、いくら洗っても赤さびが発生するのはこのせいである。
 筆者は高級な鋼製工具はハンダ付けの現場周辺には置かない。押さえには、某国製の安物しか使わない。また、発生する煙霧(fume)は全て強制的にフィルタでろ過する。塩化物イオンを含む霧が拡散すると、機械、レイル、車輌、配線が腐食されるということである。

 要するに塩化亜鉛を使うハンダ付けを常套手段としているアマチュアは敷板として鉄板を使うことは避けるべきである。毎日多量のハンダ付けを行うプロであるなら、錆びる暇がないだろうから、それはそれで価値があるかもしれない。亜鉛めっきした鉄板は錆びにくいが、いずれ亜鉛が擦り減るので同じことである。

 アルミ板を敷板にするのはどうかという質問もあった。利点としてはハンダが付かないということであるが、厚いブラス板は、熱容量が極端に大きく、そう簡単にはハンダが流れることがない。そこまで加熱すると、ワーク(工作の対象物)がばらばらになるであろう。また、アルミ板の表面は透明な酸化被膜で覆われていて、電気伝導性が良いとは言えない瞬間がある。その時火花が散って、ワークにキズが付くこともあるだろう。

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