2011年07月29日

続 ロクロ作業

1405 これは材料が入る穴である。ここによく給油しないと焼きついてしまうそうだ。
 材料はボール盤を横に寝かせた物で廻す。そのボール盤のモータはスタータ用のキャパシタ(コンデンサ)がなくなっていて、手回しスタートである。すなわち正逆どちらにも廻るのが面白い。「逆回転は、ネジ切りには必要なのです。」と仰る。

 さて、この作業はどのような姿勢で行うのだろうか。ゴザを敷いた部屋で座布団に胡坐(あぐら)をかいて行う。切り粉は膝の上に落ち、前掛けをしているので、その中に溜まる。左手でボール盤のスイッチをOnにしてドリルチャックを廻すと回転が始まる。回転数は1000rpmくらいだ。右手で「ハシ」を突っ込み端面仕上げ、切断という具合に進む。切り粉(ダライ粉)は一斗缶に入れて溜めておく。
 一つあたりの作業時間はわずか5秒だ。僅かな時間の内に数十個の円柱ができた。端面は両方とも平面だ。もちろんそこまで行くためには切断バイトの側面のカーヴが所定の曲率を持たねばならないから、かなりのオシャカを出しているに違いない。このバーサインを消す方法は伊藤氏のアイデアで、今まで門外不出だったそうだが、もう見せても構わないとのことで公開した。

 ロクロ作業を見て思うのは、旋盤作業でも細いものを仕上げるのに用いる「ボックスツール」というものと同じだということである。ボックスツールは久島諦三氏著の「ミニ旋盤を使いこなす本」の第9章に書いてある。
 平岡幸三氏の言葉で説明すると、「ワーキング・パス(working path)が短い」と言うことになる。刃物とワークを支える部分が近く(道程が短く、テコが短いから)、剛性があまり大きくない構造であっても精密な仕事ができる。浮津信一朗氏が発表された記事の中にもあったし、先回の記事にコメントを戴いた鹿ケ谷氏のウェブサイトにも写真がある。

 昔はこの手の職人は数限りなく居て、段付きネジ、ピンなどは、ほとんどこの職人によって作られた。土間にモータを置き、それからベルト駆動でいくつもチャックを廻して仕事をしていた。常に注油せねばならないから、焼けた油の臭いが充満する空間であった。目盛などあってないような仕事であるから、頻繁に寸法を測りながらの作業である。設定が狂うと全てオシャカになるから、みな真剣に仕事をしていた。

 当時は「ハシ」を作る鍛冶屋がたくさん居て、必要なものを選んで買うこともできたし、目的を告げると専用工具として作ってくれたそうである。しかし、もう、そのような職人は居なくなってしまった。ロクロ職人はそれをさらに加工して自分専用の道具をたくさん持っていた。伊藤氏も20本近く持っていらしたように思う。
「だんだんガタが出てくるので、カシメてガタを無くすのですが、それも限度があります。」とのことである。

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コメント一覧

1. Posted by フレッド折澤   2011年07月29日 09:45
「ロクロ」も「ハシ」も名前は知りませんでしたが、子供の頃に近所の町工場で、これの職人仕事を飽かず眺めていた記憶があります。

それは旋盤の主軸側だけを机の上に据え付けたようなものでした。
回転するチャックに正対して座り、テーブル上の穴に挿したバール様の棒をテコにして、ハシを奥に送り込みます(これはたぶん段削りの工程)。主軸は足踏みスイッチで逆転するらしく、内ネジ/外ネジからローレットまでこれでこなしていました。

私の見たものは、ワークを切断するときはハシをカナメの軸方向に差し込んで、ハシのストッパに当たったら握る、というものでした。旋盤の突切りと同じ方向の動きだったはずですが、考えてみるとすくい角が微妙に変化する気もしますね。

大人になったらこの機械欲しい、と思ったものですが、NC以前にカム式自動旋盤に駆逐されてしまったのでしょうか。
2. Posted by dda40x   2011年07月30日 17:34
>すくい角が微妙に変化する気もしますね。

工具の回転半径が小さいので、それは無視できませんね。
大きく削るときは何段階かに分けるとか、その種の工夫があったかもしれません。

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