2011年01月17日

磁気回路

 磁気回路という言葉をご存じない方が多いと思う。モータ、変圧器などの中を通っている磁力線の通り道が一周しているその通り道である。筆者は幼少のころより、父から散々聞かされて育った。

 最近話題のネオジム磁石を模型用DCモータに使うとどうなるだろうか、という話を土橋和雄氏とした。土橋氏は本物の電車の電路屋さんだ。
 既製品のモータはアルニコかフェライトの磁石を使用している。直巻モータよりは省電力(界磁を励磁する必要がない)だが、界磁の磁束密度が高いとも思えない。これをネオジム磁石にすれば単純計算で10倍くらいにはなる。すると逆起電力は10倍になるから回転速度は落ち、トルクは増大するはずである。いろいろなファクターがあって一概には言えないが、全て良い方向に行くはずである。

 改造すべきモータをジャンク箱から探し出した。

①Lobaughの直卷モータ コア厚み38.0mm(1.5インチ)電機子径31.75mm(1.25インチ)7溝
②KTMのマグネット・モータ コア厚み32mm 電機子径32mm 7溝
③All-Nationのマグネット・モータ コア厚み25.4mm(1インチ)電機子径25.4mm(1インチ)7溝
④中村精密のマグネットモータコア厚み20mm 電機子径12.5mm 5溝

 磁石はNeoMag社から購入した。注文すれば即日送ってくる。ぴったりの寸法がなければ軟鋼板を削って隙間に入れれば改造完了である。

 久しぶりに糸鋸で鉄板を切った。バローべの2番でがしがしと切り、ニコルソンのヤスリですり落とした。普段のブラス工作とは違い、刃物の切れ味がもろに分かる。ニコルソンのヤスリは鉄工には不可欠だ。
 よくブラス工作にもニコルソンでなければ…と言う人がいるが、筆者にはどれでも良いと感じる。ブラスは軟鋼に比べればはるかに快削であって、どんなヤスリでも大差なく削れるはずだ。

Modified Nakamura Seimitsu MotorOne magnet is removed to ensure bertter performance 最初に④のモータをばらして磁石を捨て、25x5x10というサイズの磁石を嵌めた。吸引力は5.1 kg重(52 N)もある。もちろん軟鋼板を隙間に入れた。
もともと二つの磁石があったが、磁気回路を考えると無い方が良いということになって、ひとつだけ嵌めた。

 これは失敗であった。磁力が強すぎて、電機子の鉄心が吸い付けられ、コッギング(英語ではTeething)が起き、電流を通じてもそれを引き離すだけの磁力が生まれなかった。もっと弱い界磁にしなければ動かない。これは5溝しかないことも大きなファクタである。完全に磁極にはさまれる瞬間があるからだ。多少電機子をねじった(Skewed)状態にしても追っつかない。
 5 A も流せば吸引力から逃れることが出来るだろう思ったが、とても無理で焼け始めた。この種のモータにはもうすこし弱い磁石が適する。しかし現況のは弱すぎて全く力がない。電機子の巻き数も多くすると良いだろうが、磁気飽和を考えると無駄かもしれない。薄くて安いものを買ってみよう。

 後述のOゲージ用モータに比べると、当時のHO用のモータの設計は見るからに駄目そうである。  

コメント一覧

1. Posted by 森井義博   2011年01月17日 01:56
私も、ずっと前にサマリウムコバルト磁石を使用したキドマイティというモータでネオジウム鉄磁石への換装をしたことがあります。
http://www.morii.jp/railmodel/etc/kido.html
にその時の事を書いています。
特性自体は改善されていますが、コギングが大きく、回転音、振動も大きくなって、あまり良くない結果でした。(元々剛性のないモータなので振動しやすいです)
そのページに載せてあるのは平板の磁石ですが、ロータに向かい合う面が円筒状になったネオジウム鉄磁石でもテストをしたのですが、さらに音、コギングがひどくなり、磁気飽和しているのか特性も向せず、使い物になりませんでした。
2. Posted by 村田   2011年01月17日 10:16
中村精密のモータということは、鉄道模型社時代からのものですね。
大変興味深い実験であると感心致しました。
磁石が強力ならモータも高性能になる・・という簡単なものでないことが理解できて、勉強になりました。
3. Posted by 01175   2011年01月17日 13:12
HOサイズのモーターをネオジム磁石に換装して成功しているらしいデータがありましたので御知らせしておきます。

http://webspace.webring.com/people/ib/budb3/arts/motor/pit71nmag.html

中村精密のモーターというのは鉄道模型社から継承したものが多くありますが、写真のものもそれですね。実際に製作していたのは世田谷の桜新町にあった種田製作所で、ここは電機子を古市など他のメーカーから購入し、界磁廻りやブラシホルダーを自社で造って完成品にしていました。
4. Posted by dda40x   2011年01月17日 20:36
 御三方からコメントを戴きました。感謝します。

 この実験は、結論を予想はしていたが、やってみないことにはということでやってみました。
 HOモータはエアギャップが大きく、鉄心は小さいので、性能向上は望むべくもありません。
 この磁石の1/10くらいの磁力のものを選べば多少向上するでしょう。その点、後述するOゲージ用のものはかなり期待できます。

 01175氏のご紹介の記事を精読しました。基本どおりの話が書いてあります。その中でMP(マウス・パワー)の話が出てきて懐かしく読ませて戴きました。
 伊藤剛氏が馬力ではなくチュー力(りき)で表すとおっしゃった話が思い出されます。 
 
alfa様よりもコメントを戴いていますが森井様の記事のリンクでしたので割愛させて戴きました。

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
Recent Comments
Archives
Recent TrackBacks
Categories
  • ライブドアブログ