2010年10月13日

”まねる”ということ

"まねる"ということは、学ぶということでもある。まねられるということは、それが優れていることの証明でもあるのだから、決して悪いことばかりではない。
 さて、筆者は長年「鉄道模型を科学する」という姿勢で楽しんできた。いくつかの工夫は製品化されて、鉄道模型のレベルアップに貢献したという自負もある。

 しかしその"まね"の質には問題があり、過去にいくつか指摘してきた。
 まねるのであるならば、完全な形でまねをして欲しいと考える。押して動くウォーム・ギヤも13mmゲージで製品が出ている。しかしその歯数は割り切れる組み合わせになっている。歯数が「互いに素」でないと良い結果が出にくいと、発表した雑誌の記事にも書いておいたが無視されている。スラスト・ボール・ベアリングも使ってあるが、ラジアル・ベアリングのインナレースにも当たっているから無用の摩擦が生じる。
 この写真を見ればスラストベアリングの方が大きいので、その段差でスラストを受け持たせ、ラジアル軸受は接触していないことぐらいわかるはずだ。
 模型といえども小さな機械であるから、設計者の意図を汲むべきである。それが読みとれないのならば真似などしない方がよい。似ていれば同じような性能だろうというのは、根本的に間違っている。設計者は、限られた条件の中で最大の効率を発揮するように設計している。
 その押して動くウォーム・ギヤは怪しげなグリースを詰めて売られているようだ。これも記事の中にきちんと書いておいたモリブデン・グリースを使わねば所定の効率が出ない。最近はモリブデン・グリースなど安いものであり、簡単に手に入る。しかしそれを使わないのは一体何だろうか。そんなことはどうでも良いことである、と思っているのであろう。潤滑は奥が深い。調査の結果、それを使わなければならないと書いてあるのだから、ひとまずそれを使って、それから次の段階に行くときは、別の工夫をしても良いはずだ。その時は当然比較試験をしてどちらが優れているかを調べた上の話だ。

国鉄の図面による3気筒弁装置 話は変わるが、先日関西合運で1番ゲージのC62を3気筒にした機関車を見せて戴いた。C53のグレスリー・リンクをそのまま載せていらっしゃる。あまりにも細く、驚いた。図面通りですとおっしゃるのだが、その図面を描いた人の素養を疑う。アメリカから輸入されたALCO製C52のリンクは太い。魚腹のように丸く作り、曲げに対して耐えられるようになっている。それと比べてあまりにも細い上に、軽め穴まで開けてある。これでは剛性が無いのは当然だ。このような薄い部分の軽め穴など、ほとんど効果はない。

Mr.Sofue's SP5000 これは祖父江欣平氏製作によるAlco製のSP5000である。試作時の写真が出てきたので、掲載する。実物のSP5000 と C52 の製作時期はほとんど同時であり、動輪径も同様である。この太さにご注意戴きたい。十二分に強度を持たせている。
 
 C53がどうして短命に終わったかはいくつか原因がある。その中の大きな部分はこの剛性の足らないリンクにあると思う。このような構造では高速時に大きな撓みが出て、ヴァルヴ・イヴェント(弁を動かすタイミング)に遅れが出る。軸受が少しでも減れば、それはとんでもない動きを始めるであろう。
 C53の設計者がこの部分を設計するとき、オリジナルの部品の通りに作っておけば、異なる結果になったであろうと思う。この手のとんでもない設計は近代日本の形成過程に多く存在するが、その間違いのプロセスを検証するということはほとんどなされていない。写真は土橋和雄氏撮影。

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コメント一覧

1. Posted by 鹿ヶ谷   2010年10月13日 13:59
C53のグレスリー弁に関してはリンクの剛性に問題があったっていうのは「蒸気機関車200年史」って言う本のC53の項にも記述が有りますね。ちなみにこの本とても面白かったです。特にアンドレ・シャプロンのあたりなんか。
また、どこで読んだか覚えていませんが島秀雄がC52の設計をそのまままねず勝手にリンクを軽量化したのがC53の失敗の原因だとボロクソに書かれていました。
9600も変な設計ですね。クランクの位相が他のと逆、前進でラディアス・ロッドが上に行くなど。設計者が武士道汽罐車だなどと馬鹿なことを言ってたみたいですが、どうして二次生産分から間違いを修正しなかったのでしょう?なんなんでしょうね、こういう意味のない頑固さって。自分の設計ミスを認められない設計者は最低だと思います。
2. Posted by dda40x   2010年10月14日 06:42
> 「蒸気機関車200年史」って言う本のC53の項にも記述が有ります。

その本を読んでいないのですが、おっしゃることは良く理解できます。私は、日本人の「上の者には逆らわない」という習慣、事勿れ主義という性癖がこの種の問題を大きくしていると思います。
明らかに間違っているのに、それを指摘しないというのは、指摘した場合にどうなるかということが分かっているからです。
模型界も全く同様であると思います。最近はいやがらせも減りました。
3. Posted by 村田   2010年10月14日 07:07
私は16番で吊掛モータの実用化のテストを行っていますが、ある程度効果がわかってきたので、製品に出来ないか?ということで、モータ屋さんと話(注:実際は間に人が入ってますが)をしたことがあります。
ギアについては、私は市販品をスライスして使用(共育歯車のモジュール0.3)を使用しているため、14:28=1:2となるのですが、このように減速比が低い訳ですから、「互いに素」にしておいた方が調子が良いはずなのですが、モータ屋さんはギア比をちょっきりしたがっていた・・とのことでした。
割り切れない数字だとダメかも?と思うのは、日本人特有の几帳面さ?などと思ってしまうのですが、プロでもそうだというのはなんとも不思議だと思っています。
4. Posted by dda40x   2010年10月14日 23:30
> プロでもそうだというのはなんとも不思議だと思っています。

いや、その方はプロではないと思いますよ。
最近の超高精度の歯切り装置で作った歯車は別として、汎用の歯車の精度は知れています。割り切れる組み合わせでは、変な音がし始めます。
過去に相談を受けた変な音のする機関車は、全て割り切れるようになっています。互いに素だと、はじめはぎくしゃくしても、そのうち静かになります。
5. Posted by 森竹   2010年10月30日 00:12
横から失礼します。
村田さん
>モータ屋さんはギア比をちょっきりしたがっていた・・とのことでした。
悪い言い方をするとモータ屋はモータ屋なのです。
自分の専門に関してはプロでもその他はからっきし…なんて事は結構多いですよ。

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