2009年04月09日

Stainless Steel

 被牽引車の車輪にはステンレスが適する。なぜかというとそれは摩擦が少ないからである。すなわち動力車には本当は適さない。普通の鋼材に比べると摩擦が70%位である。

 しかし本物の車輪には使えない。それは塑性変形しやすいからである。この種のステンレスはオーステナイト系といって、簡単に変形する。すなわち本物の車輪のように大荷重が掛かるものには使えない。建築物の構造材にも使えない。クリープが起きて伸びてしまう。たとえば庇の鉄骨に使えば、いずれ垂れ下がってくるだろう。また、実用機器にステンレスのボルトを使う場合もあるが、強く締めると伸びるので、本当は使うべきではない

 ピヴォットの先端が曲がりやすいのも、オーステナイト系だからだ。何か硬いものに当たるとつぶれやすい。工場からトレイに入れて納品された時は全く問題なかった。
 箱に入れ替えて運ぶと100軸に一つくらい、このような事故が起こるようだ。また、人に見せると、見たあと無造作に放り込む人がいて、先端が潰れるようだ。ここまで精密に作られた部品に接したことは、ほとんどの人にはないだろうから、ついやってしまうのだろう。

 しかし、他の利点がこの欠点を補って余りある。また、模型程度の荷重ならクリープは起きない。

 ジャーナル部を円筒型に研削し、マイナス17μにした。ボールベアリングの滑り嵌めを実現するためである。工場では全数検査をしてくれたので、間違いなく嵌まる。さらに、面取りを大きく施したので、多少の打痕が生じても問題なくはまるはずである。このあたりのノウハウは、経験上確立されている。


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コメント一覧

1. Posted by gallopinggoose   2009年04月09日 15:26
こんにちは。
オーステナイト系というと、SUS304とかSUS316ですね。やわっこくて、粘るものだから、私としては出来れば敬遠したい素材です。
かといってフェライト系はすぐ真っ赤に錆びるし・・・
その昔、原子力発電所の中の構造材にSUS316Lで設計させられました。しかも、海の中で使われるもので・・・
私がいくら鉄のほうがいい、ステンレスは塩水に対して、鉄より弱いから、と言っても、聞き入れてもらえませんでした。
仕事やめました。だって、それで事故が起きた時の責任、私、とり切れません。
あはは。昔の思い出です。
2. Posted by dda40x   2009年04月09日 20:06
SUS316Lなら、海水に対してかなりの耐食性があるのではないでしょうか。これにニオブを加えたものはさらにすばらしい性能を持ちます。
核爆弾の材料精製に不可欠ですから、これを注文した途端に公安の尾行がつくでしょうね。
3. Posted by 01175   2009年04月10日 10:39
gallopinggooseさんのブログにステンレス・タイヤへの苦言を書かせてもらったばかりでタイムリーな話題に少しビックリしています。

うちには30年モノ(?)の鉄タイヤの車輌があるのですが、今のところ錆びていません。おそらく駆動系へ差した潤滑油がまわって防錆効果をもたらしているのだと思います。

ロッドピンとか棒型モーターのシャフトなど、やはり軟鋼ですが普通に管理していれば錆びませんよね(うちは、一時期、汀線から50メートルの海の家みたいなところに居ましたが大丈夫でした)。

意外に錆びるのがescapのコアレスのケースです。油気が廻りにくいし、手で触れてしまうことが多いのが原因だと思います。



4. Posted by dda40x   2009年04月10日 21:25
 井上豊氏の話によると、「快削鋼でもよく磨けば錆びにくくなる。旋盤の挽目が見えるようでは錆びる。」とのことです。それは事実で、論文も見つけました。水蒸気圧は、細かい傷があるとその中では小さくなり、水滴ができやすくなるらしいです。
 井上氏は、タイヤを快削鋼で作り、、それを2000番くらいのサンドペーパで磨いていらっしゃいました。「ピカッと光れば錆びるもんか。」ということです。「牽引力があっていいよ。」とおっしゃいました。
 私のMGの機関車は快削鋼にニッケルメッキしたものです。鉄レールの上をガンガン走らせるとメッキがとれて鉄の色が出てきます。よく牽きます。
5. Posted by コタロウ   2009年04月15日 11:27
>水蒸気圧は、細かい傷があるとその中では小さくなり、水滴ができやすくなるらしいです。

その通りです。
1μm近傍を境として、水蒸気圧に変化が見られると言われています。
ブログを読ませて頂いて、前々から博識な方だと思っておりましたが、改めてすごい方だと実感しました。
6. Posted by dda40x   2009年04月19日 20:37
 小さな窪みでは水滴が蒸発しにくいだろうということは、微視的に見れば推測可能な範囲にあります。その水滴に、空気中の二酸化硫黄等が溶け込めば、不動態膜は容易に破られるであろうと思われます。

 これは、新しい鉄釘の一部にサンドペイパを当てて表面を荒らし、それを軒先に放置すると荒れた面だけに錆が発生しやすいことからも分かります。もちろん全体を脱脂した上の話です。

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