2007年11月09日

可塑剤

 可塑剤はPlasticizerの訳語である。ドイツでポリ塩化ビニルが実用化されたときに、混和されて、柔らかな膜を作ったのが最初らしい。

 硬いプラスティックは、「結晶性が良い」という。規則性が良かったり、直線に近い形の分子で、分子間力が強い。可塑剤はその分子間に入り込み、分子間力を減少させる。可塑剤が抜けると、硬くなって割れやすくなる。すなわち可塑剤は蒸発しにくいものを用いなければならない。溶剤をつけると可塑剤が洗い出されて割れ易くなるのは、よく体験するところだ。加水分解も起きて、脆くなる。

 ポリ塩化ビニルに多量の可塑剤を混和したものがプラスチック消しゴムである。鉛筆の芯の黒鉛と、可塑剤のフタル酸のベンゼン環は形が似ているので、よくぬれ合う。化学的に吸着され、剥がし取られるのであって、物理的にこすり落とされるのではない。

 もちろん適度な硬さであって、表面が剥がれ落ちて新しい面が露出することにより、次々と吸着が起きる。

 問題はその可塑剤が他のプラスティックに拡散することだ。事務机の保護マットや床タイルに、消しゴムかすが落ちたままにしておくと、必ず溶けたようになる。しかし隙間に紙一枚があるだけでそれは阻止できる。消しゴムには必ず紙が巻いてあるのはそれが目的だ。

 塗装した床に落ちても塗装が傷む。全て剥がして塗り直さねばならない。ポリスチレンに接触していると、それを溶かしてしまう様に見える。

dda40x at 11:09コメント(4)ぬれ | 接着 この記事をクリップ!

コメント一覧

1. Posted by Jackdaw   2007年11月10日 23:03
消しゴムのお話は初耳でした。
確かにベンゼン環の炭素間結合と、黒鉛の炭素間結合は距離が近いですよね!
でもこれは、可塑剤がフタル酸でなければならないのでしょうか???
2. Posted by dda40x   2007年11月12日 22:04
コメントありがとうございます。

可塑剤は、分子の間に入り込み分子間力が小さくなるようにふるまう必要があります。
なるべくかさ高くするためには枝分かれが大きいほうがよいはずです。
また、昇華するといけないので、蒸気圧が小さい方のがよく、価格、つくり易さなどからフタル酸が選ばれたものと思います。

消しゴムは偶然見つかった性質を使ったものでしょう。ベンゼン環を持たない可塑剤では、当然効果はないものと思われます。




3. Posted by モッチー   2007年11月13日 12:21
5 久しぶりにコメントを書かせていただきます。
今回のお話を読み、幼少の頃、消しゴムがプラスチックを変形させることに気づき不思議だったことを思い出しました。
この現象に温度は関係するでしょうか?
子供ながら「日光があたる方が変形が大きい」ような気がしていました。
測定条件が同じではないので子供の浅知恵かなと思いますが…。
鉛筆で紙に字が書けるのは物理的、消えるのは化学的、そう考えると非常に身近に自然科学があることを実感します。
4. Posted by dda40x   2007年11月13日 20:01
モッチーさま、コメントありがとうございます。
拡散速度は温度の関数ですから、当然温度が高ければ早くなります。

>>鉛筆で紙に字が書けるのは物理的、消えるのは化学的

ほんとにそうですね。こするのはただ新しい面を次々に繰り出す手段であって、化学的吸着力で消しているわけです。

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