2007年10月02日

ドリルレース

 ドリルレース(Drill Lathe)という言葉があった。最近はとんと聞かないから、死語になってしまったようだ。
 要するに電動ドリルのチャックにワーク(工作物)を取り付け、回転させておいてヤスリを押し付ける。昔のTMSにはよく紹介されていた技法である。やってみたけれど、ヤスリに切り粉が完全に詰まってしまう。ヤスリを動かしながらやってみても、うまく行かない。

 ヤスリは次々と新しい刃が接触しながら移動する様に作られているから、同じ刃にワークがこすり付けられることを想定していない。ロクロならば固定された刃で削るのだから、旋盤と同じだ。

 金鋸の刃を折ったものを研いで、それでやってみるとうまく行くが、刃先が安定しなかった。仕方がないので刃物を載せる簡単な台を作ってみた。何のことはない。一種の旋盤である。
 よし、旋盤を買おう、ということになって小型旋盤を入手した。その旋盤は、引っ越すとき神戸の友人に貸してそのままになっていたところ、地震で壊滅した。現在のは3代目である。

 著名な模型人で、ドリルレースで何でも出来ると強調される方がいらした。素晴らしい工作ではあったが、走るところは見たことがなかった。あるとき、初めてその走行を見るチャンスがあった。驚いたことに、動輪の芯が出ていない。ぐらぐらと揺れながら走った。見てはいけない物を見てしまったような気がした。

 その後、何を思われたか、その方は筆者に話しかけてきた。

「『ドリルレースで何でも出来る』というのは、あれは私の強がりだった。反省している。旋盤を購入すべきだった。しかしもう遅い。私にはもう時間がない。あなたは偉い。最初から旋盤を使っている。それが正しい。私にはそれを褒める勇気がなかった。旋盤の価格など知れていたのに。」

 心に残る言葉であった。その後まもなく、その方は亡くなられた。

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コメント一覧

1. Posted by 浮津 信一朗   2007年10月08日 20:54
ご無沙汰しております。
ドリルレースの話が載っていましたので久しぶりに投稿したくなりました。
私も旋盤を買う前は電気ドリルを台に固定してドリルレースしていましたが、ヤスリではすぐにキリコがつまって能率の悪いことおびただしいので、組みヤスリの先端をバイト状に研いで削る事を覚えました。
こけし職人の仕事を見てヒントにしたものですが、一種の手バイトの様なものでワークの前にバイトの支点となる台をおいて作業するとウソみたいにうまくいきました。美しいキリコがシュルシュルと出てきたときの感動は今も覚えています。
旋盤を購入してからもドームやベルなど曲面の切削には欠かせない技法になっています。これも一種のロクロなのでしょうね。ヤスリ先端は削る形状に合わせて様々な形に研いであります。
TMSの記事でも何度か解説した記憶がありますが、どの程度理解されているかは疑問です。
2. Posted by dda40x   2007年10月08日 23:51
浮津様 コメントありがとうございました。

全くその通りですね。私もその手を時々使います。旋盤職人に教えてもらった方法です。
刃物台に長いバイトを取り付け、ワークと平行にします。そしてそれを支点にして長い刃物で削ります。
快削材なら、本当に楽しく削れます。

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