2007年07月25日

続々々 UPHILL DOWNHILL

 下りの速度は、機関士が一人で決める。罐焚きが「速すぎる」とか「遅すぎる」と言ったためしはない。

 Creston峠からの「高飛び込み」について、もう少し書いておきたい。ブレーキ弁には一切手を触れず、ただ重力に任せて下っていく。Cherokeeという場所にカーヴがある。そこで転覆するのではないかと考えるだろう。

 どの機関士もここでは同じようにぶっ飛ばす。でも誰も脱線したものはいない。旅客列車は120マイル(192km/時)以上出る。

 下りの運転は機関士にとっても罐焚きにとっても楽しい。しかし機関士の方がもっと楽しいはずだ。速度を決めているのは機関士だからだ。当然なことに現場の指揮者は機関士だ。

 機関士になるには長い経験が要る。もしあなたが"Right Stuff"(機関士になるための資質)を持っているなら、その一瞬一瞬をちゃんと見ておくが良い。勝つか負けるか。ゾクゾクするだろう。経験の無いものには話しても分からない。

 あえぎながら峠を越えるのは、エヴェレスト山に登るようなものだ。多分、ヒラリー卿は登頂の瞬間に「やったぜ!」と叫んだに違いない。俺たちもそうする。

 機関士が下りでつぶやく言葉は特にない。Creston からRawlinsに向かって滑り降りる時の表情を見よ。彼らは特別に楽しそうな顔をしているはずだ。 


 筆者註 "Right Stuff"という言葉は映画の題名にもなった。宇宙飛行士になるための資質という意味であった。ここでも、機関士になるのは難しいという意味で使っている。

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