2007年02月01日
機関士が手を振るとき

誰か特別な人が手を振り合図を送っていても、目を向けて「君がそこに居るのは分かっているよ」とうなづくだけで、手を振ることはしない。顔はいつも前を向けて、手はスロットルに掛けている。舞台の上の役者が、客席の友人が手を振ったからといって、手を振るわけはない。
ここに書いた一連の動作は、駅に停まるときの旅客列車の機関士の自負心の現れである。駅では、格好をつけなければならない。しかし、町を出れば大きく手を振ることもある。
Road foreman(保線作業員の長)に向かっては、いつも大きく振った。機関士はロード・フォアマンをよく知っていたし、向こうもよく知っている。
駅を通過するときは大きく手を振るが、腕を肩の高さ以上には上げない。少し肘を曲げて2,3度速く振る。
罐焚きはよく手を振る。機関士とは違う。機関士は顔が知られている。列車を動かす人だ。機関士が居なければ列車は動かない。しかし、罐焚きは順番に廻ってくるだけの仕事だ。
旅客列車の機関車の右側に座っている人(機関士)には、日々このようなドラマがあったのだ。しかし、それももうなくなった。
筆者のメモ
あっという間に一月経ってしまった。この間、個人的には大事件があったりしたが、書き溜めていた原稿を自動的に送り出してくれるので、欠けた日はなかった。
しばらくこの調子で続けさせていただきたい。まだ、数倍の手記が残っている。手紙と聞き取りメモをあわせるとあと200回近くありそうだ。
模型の方も書きたいことが溜まってきた。何かリクエストを戴くと、方向性が定まりやすく、助かる。
この絵はKotowski氏の水彩画(筆者所蔵)
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コメント一覧
1. Posted by great 2007年02月01日 16:59

客観性に富み、日常とサイエンスとがしっかりと結びついていて、これほどまでに面白い文章はなかなか読めないと思いながら読んでいます。
ありがとうございます!これからもそういった内容を書いて頂く事を期待しています。
2. Posted by モッチー 2007年02月02日 01:01

幅広い知識と、鋭い観察眼を持たれた方なのだなと、尊敬しております。
特に鉄道模型に興味があったわけではなかったのですが、鉄道模型の魅力に惹かれつつあります。
これからも、このブログ内でしか読むことができないようなお話を楽しみにしております。