2007年01月04日

チャレンジャとビッグボーイ

blowdown valve on Challenger fire box チャレンジャは、関節式機関車だ。動輪はやや小さく69インチ(1752ミリ)である。走り装置のバランスがよく、高速運転に耐える。100マイル/時くらいが力行時の最大速度であったが、下り坂で120マイル出したことがあったそうだ。さすがにそのときは「壊れる」気配があったそうで、恐ろしい思い出の一つだそうだ。

 チャレンジャは旧型も新型もよく走る機械で、当たり外れがなかったそうだ。一方ビッグボーイは当たりはずれがあり、4005号機以外は良くないと言い切った。

 4005に当たったときは、「今日はキャディラックだ!」と叫んだそうだ。4005号機はほとんど"Automatic"だったそうだ。ストーカ(自動給炭機)を動かし、排気インジェクタを作動させておけば、時々水面計を見るだけで機関助士は何もすることがなかったそうである。外れに当たると死に物狂いで給炭し、機関士側のインジェクタを作動させて水を足さねばならないのだそうだ。

 機関車を受け取ると、全ての動輪のタイヤ(踏面)を素手でなで、減り具合を確かめる。磨り減ったタイヤの機関車は、注意して走らせないと脱線転覆事故を起こすという。

 西部の砂漠地帯を走る機関車に入れる水は、全て炭酸ナトリウム等で処理してある。これはカルシウム塩が缶内に析出するのを防ぐためである。ナトリウム塩は水によく溶けるので問題ないが、調子に乗って入れすぎると、ボイラ内の塩濃度が上昇し、プライミングが起こりやすくなる。"Priming"とは水面で魚が跳ねることから来た言葉で、水がシリンダの中に入るとシリンダの底抜けや、ピストン抜けが起こる。

 これを防ぐには、注入した水の1%弱は常に抜かねばならない。これが"Continuous Blowdown”である。これは火室の下から抜いて線路に向けて噴き出させる。このあたりの蒸発量が一番多く、濃縮されやすいためである。また給水はボイラの前の方の比較的温度の低いところからなされる。温度差が小さく、ボイラの鋼板に熱的ショックを与えないための工夫である。

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コメント一覧

1. Posted by harashima   2007年01月04日 22:01
このあたりのお話はどこにも発表されていないのではないでしょうか。
私は米国鉄道のことはまったく無知ですが読み物として大変興味深く、無料で読んで良いのだろうかとさえ思います。
2. Posted by dda40x   2007年01月05日 07:47
Harashimaさん、あけましておめでとうございます。

 本当は本にするべき内容ですが、少しずつ出していきます。実は、Tomの残した手記、私の聞き取りメモがたくさんあります。ここで一部を紹介しながら、出版に備えています。写真もたくさんあります。

 前回の出版は完全な失敗で、全く校正がしてない(出るまで見せてくれなかった)上に、勝手に地名人名表記などを間違って書かれてしまい、ひどい目に遭いました。表紙のカラー写真さえ「無くした」と言って返してこなかったのです。
Wasatchをワサックと読むような間違いはありえないと思うのですが・・・。
Harveyも正しくはハーヴィーですが、ハーベイ、ハーヴェイの二種類が使われています。

出版社としての常識がない会社でしたから、版権のない写真を他所から引用したりして、ひどいものでした。

インターネットの時代は、いろいろなことを可能にしてくれます。

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