2007年01月03日

Tomの家

DDA40X w/circus train and Amtrak Tomの家はワイオミング州Rawlinsにあった。彼はここで生まれ育った。彼の父Dickはイギリスからの移民で、客船の罐焚きの仕事をする契約でアメリカまでただでやってきたという。

 肉体労働をしながら勉強して、機関士になったそうだ。努力の人であった。

 Rawlinsはローリンズと発音し、UPの重要な補給点であった。東の方から言えば、標高1850mのCheyenneを出るとSherman Hillという2440m位の峠を越えて、57マイルでLaramie、さらに120マイルでRawlins、そしてもう一つの峠を越えて140マイル離れたGreen Riverに達する。

 Sherman Hillはこの鉄道の最高地点であると同時に、この鉄道建設当時、鉄道の世界最高地点であった。地名はアメリカ陸軍の中で最も背の高いシャーマン将軍の名をとって付けられた。峠といっても単なる丘陵地で、ほとんど木も生えていない砂漠であるが、平均15パーミルの勾配が続く。Cheyenneから西に下るとその峠がある。Laramieは標高は2200mくらいである。Rawlinsは標高2000mほどでそこから西へは単調な坂道で約10パーミルであるが30マイル以上続いている。最後はやや急になって11.4パーミルになる。

 Big Boyという機関車は、この峠を単機で3300トンを引っ張り、時速32キロ程度で登れたというから凄いものだ。この数字だけから計算される出力は5750馬力である。実際はその20%増しの出力が必要とされた。すなわち6900馬力で巡航する実力を持っていたということである。

 Tomは、父親とこのSherman Hill越えの機関車の運転をしていたのだ。父子で乗務することも多々あったという。騒音の激しい運転室での意思疎通は目くばせ一つで行うものだったそうだ。親子なればこそ可能なもので、鉄道随一の高速運転を可能にしていたという。

 蒸気機関車の世界最高速は、公式にはイギリスのマラード号という3気筒グレスリー弁の機関車による202キロ/時ということになっている。それを言うと、Tomは鼻で笑って、「俺たちは毎日130マイル出してたぞ。」という。「しかも16両牽いて。」

 これは時速208キロに相当する。もっとも機関車の速度計は120マイルまでしかないから、マイルポスト間を走る秒数で算出するのだそうだ。1マイルを30秒で走れば120マイル/時、27秒なら133マイル/時である。いつも28秒を切っていたそうだ。

 この速度を出せるのは"Mighty 800"という4-8-4の急行用機関車だけであった。動輪は80インチ(2032ミリ)であった。その中でも822号機が最高でその次が837号機であったそうだ。844号機は保存機で健在である。これもなかなかよい機関車であったという。

 Tomは"Flying Machine"という言葉をよく使った。「とにかく凄いんだ。駅を出て加速するとき、このまま飛び上がるのではないかと思うほどいい加速だった。」という。

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コメント一覧

1. Posted by shonencamera   2014年07月09日 23:27
最近ひょんなきっかけから鉄道模型を始めました。車両も子供時代からそれなりに好きでしたが、機関車を識別できる程度で、細かいことに関してはほぼ知識ゼロでしたが、各社モーターライズ模型のメカニズムがとにかく楽しくて徐々にハマりました。とあることから低抵抗の車輪があれば・・・となんとなく検索しまして、こちらを知りました。他の違う内容の記事も拝見し、それが延々と続いてしまいました。とにかく記事レベルの高さに驚きました。鉄道模型に関しながらもその分野以外の圧倒的な技術、知識と知恵の量がすさまじいです、それに感動しながら、今は最初から貪るように読ませて頂いています。
私は単車、自動車の修理をしておりますが、メカに興味を持つ子供たちへの教科書にすべき内容だと感じます。興味に値する高レベルなきっかけを与えれば、今の若い子でも吸収力とそれからの自己向上する能力は無限にあると、いつも歯がゆく感じてましたので。

現役時代のTomとお父さんのこのお話は読んでて身体中がビリビリきます。自信家Tomの自信は親への誇りであり自分の生き様なんでしょうね。大排気量車は米の得意とする分野でそれは今でも日本は敵いません、反対に小型車や効率的な内燃機は日本が得意とします。それは鉄道車両への思想に関してもなんとなく似てるような気がします。能力と努力と結果の無いただの自信家が今だに蔓延する世の中で、読んでてとても清々しく気持ちの良いお話で何度も読んでしまいます、大好きです。
2. Posted by dda40x   2014年07月12日 00:18
アメリカの機関士の話は日本ではあまり知られていないので、良い機会かと思い、訳を付けました。まだ半分くらい残っています。いずれ書きます。

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