2006年11月26日

定電流制御装置

Fuel and Water-level simulator 効率が高いとどのような挙動を示すであろうか。これは高校生のとき友人と議論したことの延長にある。

電車通学だったので、毎日運転台の後ろにかじりついていた。起動電流は580 Aで、減流継電器が働いている様子がよく分かった。加速が終われば電流がなくなる。減速は電気ブレーキで、停車すると床下の抵抗器から発する熱気が立ち昇った。冷房のない時代の、窓が開放されていた懐かしい思い出である。


 モータは電流で廻る。当たり前のことであるが、意外と抜け落ちていることである。電圧は分捲特性があるマグネット・モータだからこそ多少は意味があることであり、本来は電流制御でなければならないと考えていた。電流がトルクを決める。ここまでは高校生でも分かった。  
 
 1983年に定電流電源装置を作った。ゼロから任意に指定した電流値までは出る。電圧は24Vまで掛け放題という恐ろしい電源だ。これでFEF-2を制御すると、まるで本物の蒸気機関車を運転しているような錯覚に陥った。
 単機では消費電流が少ないのでうんと絞って起動させねばならない。勾配で長い列車を牽き出すときスリップする限界電流値で起動すると、本物が出発するようなスリップぎりぎりの加速をする。巡航運転に入ったら電流を絞るとその速度を保つ。急停車をさせるときは数オームの抵抗器を用いて短絡する。するとグググッと減速する。同時に抵抗器がわずかに熱くなる。 

 これはちょうど弁装置をフルギヤにして起動し、巡航に近づくと絞るのに似ている。違うのは、ボイラの能力が実物と異なり、無限大であるということだけだ。
 これを定電圧電源と組み合わせると面白いことになると思った。電圧を制御することはスロットルを絞ることに対応する。

 二つを直列につなぎ、最初は電流を流し放題にしておいて、電圧を上げていく。ある程度の速度になったら電流を絞りながら電圧を上げる。このようにすると、あたかも自分が機関士になったような気がした。今ある「電車でGO」とは全く次元の異なる『実感』であった。

 これもミルウォーキィ に持っていった。Model Railroaderの電子工作の記事を書いていたDon W.Hansen氏に見せた。運転させてみるとすごく感動していたが、この機関車を持っている人以外、誰もその意味を理解できないよ。」というので、「それでは10年後に発表しよう。」ということになった。
 
 そのとき蒸気機関車の運転台型のパワーパックのスケッチも持っていった。スロットルが上からぶら下がっていて、あまりにも大掛かりな雰囲気であった。その後、MR誌は、ウォーク・アラウンドの方に興味が向いてしまい、DCCの台頭で筆者自身の気持ちもやや離れてしまった。しかし、DCCでもう一度この形でできないか、と考えている。
 次に実現する時はボイラの容量、水位、テンダの水量もパラメータとして入れる。このアイデアはDonのものである。'85年5月号に発表されている。

dda40x at 07:26コメント(2)制御  この記事をクリップ!

コメント一覧

1. Posted by 愛読者   2006年11月28日 21:35
「モーターは電流で回る」、確かにそのとおりですね。しかし電圧で回ると思っている人は多いと思います。

Don Hansen氏にお見せになったというその電源装置の威力、目に見えるようです。電流でトルクを決めるわけですから、蒸気機関車の逆転機レバーの動きと似ていますね。

いつも思うのですが、どこからそんな発想が湧いてくるのでしょうか。今までのどんな模型雑誌にも載ってない話ばかりで、毎日とても楽しみにしています。
2. Posted by dda40x   2006年11月28日 23:15
愛読者さま.いつもコメントありがとうございます。

 この定電流装置は蒸気機関車の運転から思いついたものです。TMSに素晴らしい記事を書かれた故井上豊氏は元国鉄の機関士で、私の高校生のころから親しくお付き合い戴いていました。蒸気機関車の運転に関しては、この方からの情報が非常に大きいです。

 レバーを最大限に倒してフルギヤーで走らせると、蒸気の使用量が多くてたちまち蒸気の発生量が追いつかなくなる。その代わり、力はあるから、スリップしやすい。ドラフトが強くなって火床が飛び上がるから、焚口戸を少しあける。とか機関助士の仕事まで習いました。

 時々我が家にも遊びにいらしたこともあり、電流の増減でレバーの代わりができそうだというアイデアを披露したところ、「それは面白い、やってみろ」とけしかけられたことが元になっています。

 いろいろなアイデアは本物を観察していて思いつくことが多いですね。

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