2006年11月21日

誤解

UP9000 3-cylinder  押して動くギヤを装備した機関車を持ってあちこちに出向くうちに、「そのギヤを売ってくれ」と頼まれることが多くなった。

 ギヤセットとボールベアリングを渡すと喜んで受け取る。しばらく経つと不思議なうわさが流れてくる。「あいつのギヤはインチキだ。全く動かない。」

 親しい友人が様子を知らせてくれた。なんと、コアレスモータを使わないで、ごく普通の有鉄心モータをつけていたのだ。モータそのものの軸をまわしても廻りにくいものを、その数倍の速度で廻せる訳がない。スラストベアリングが入っていなければ、力任せに廻して、たちまちラジアルベアリングがパンクしたであろう。

 大抵の場合は、御本人に連絡すると「なあんだ、そういうことか。」と納得して戴けたが、最後まで御理解を得ることができなかった方たちも複数あった。

 このあたりのいきさつを父に話したところ、「新しい技術を導入すると、そういうことが起こりうる。」と言った。要するに100%そのまま使わない人がいるからだ。
 
 父は昭和10年頃に某電機メーカーの技師になった。その頃は欧米からの新技術の導入が猛烈な勢いでなされていた。100%のコピイを作ればそれは問題なく作動した。ところが日本の技術者が「こうするといい」と、一部の改変をする。すると不都合が生じるのだそうだ。改変する人は自信があり、改良だと思うのだろうが、実はそこに落とし穴が潜んでいることが多かったという。総合的な力が不足している場合は、全てを受け容れるべきであった。

 旧国鉄のC53の開発にもそのような部分があったようだ。3気筒機関車が欧米でかなりの成功を収めていたのに、日本のそれは極端な短命で終わった。最も大切なヴァルヴ・タイミングの遅れを小さくする工夫(剛性のあるテコ)を無くしてしまった(軽め穴を開けたこと)のがその原因という説がある。

 かえって、低開発国においては輸入品に手を加えずに使うので、技術導入が成功することが多いと、友人から聞いた。

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コメント一覧

1. Posted by ina   2006年11月30日 13:08
ここの所色々忙しく久しぶりにブログ拝見しました。なかなか読み応えがあります。
この記事の内容は特に興味深く読ませて頂きました。技術の開発、その実用化を出来上がった物からだけ見て猿まねしてもうまく行かない事例は、現在でも多く身の回りにありますね。数年前の回転扉の事故などはその悪い事例でしょう。模型の設計でも、そのような物がまだまだ多く見られます。私自身係わる分野でも多くある話です。しかしその本質を見抜ける人はごくわずかであるのが現実ですが。
2. Posted by dda40x   2006年11月30日 21:53
inaさんご無沙汰しております。
父の話によりますと、慣性モーメントという概念がどうしても分からない人が多かった時代があったそうです。慣性は殆どの人が理解したそうですが…。
たわみも意外に理解しにくい概念だそうです。
面白いことに今では分かりやすい概念になった加速度は、昭和の初め頃は、まだまだ分かる人が少なかったそうです。
普段の生活の中に加速度を感じる経験が殆どなかったからでしょうね。汽車の出発時も加速度が小さい時代ですから。

ところでこの話題の誤解された方々は、いずれも高名な模型人であられたことが引っかかっています。こんなことが分からないはずはないと思ったのですが……、私が甘かったですね。反省してます。 

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