2006年11月06日

プライマーの原理

paint-stripped caboose 一昨日、接着についてさらりと書いたが、実際は簡単な話ではないのだ。
 
 表面にきずをつければ食いつきを良くする事(投錨効果と呼んでいた)ができそうに思うが、これは実験により効果が完全に否定されている。塗装と接着は全く同じ概念である。母材と塗料あるいは接着剤は分子間力という力によってくっついているのである。分子間力は弱い電気的な力であり、イオン間の力があればそちらのほうが遥かに強くなる。
 
 たとえば、生ゴムに硫黄を混ぜ加熱する加硫というプロセスによりゴムを強くするのであるが、そのとき磨いた銅の棒を入れて加熱すると銅とゴムとの間に異常な接着力が生じることが、昔から知られている。
ここでは、【銅】…イオン結合…【硫黄】…共有結合…【ゴム】という経路で力が伝達され、はがれなくなる。これは昨日のスティール・ラジアル・タイヤの銅めっき鋼線に応用されている。

 これと同じ事ができればはがれない塗膜になるはずだ。塗料側に金属を酸化し陽イオンにする何か(酸化剤)が入っていれば金属と塗料側をイオン結合させることができる。しかし酸化剤は塗料のビヒクル(ラッカーで言えばクリヤー・ラッカー)と反応する可能性があるので長期の保存はできないはずである。2液性になっているのは使う直前までビヒクルと接触させないためである。1液型のものは寿命が短いはずである。常温でたなざらしになっていたようなものには効果は期待できないだろう。

 「エッチング」とは、酸化により金属表面を溶かす操作であるが、塗装しただけでは目に見える変化は無い。真鍮は屋外に置いてやや錆びた状態のほうがよく付くのはこのためである。洋白はニッケルを含むので錆びにくく困難だ。どちらにしても塗装前の脱脂が大切である。

 亜鉛にはややこしい理屈があり,塗装が難しい素材である。ダイキャスト製品には脱脂してラッカー系塗料を塗るのが最も楽な方法だ。油脂系塗料(亜麻仁油をベースにした塗料で模型に使う人は稀だ)にはなじみが悪いことが分かっている。したがってトタン板に普通の油性ペンキを塗ってもすぐはがれる。合成樹脂ペイントを塗らねばならない。最近は亜鉛にも有効なプライマーがある。2液形のものはOKのようだ。

 プラスチック用のプライマ−にはすべて個別の事情があり、この項でお話するべき内容ではなさそうだ。

 シール剤は、本来多孔質の材料に塗る吸い込み防止剤であり、金属工作物には無縁のものである。

 エッチング・プライマ−を塗ったらある程度の高温にすると化学反応が良く進んでよりよい結果が出る。私は120℃で30分ベークする。

 写真はプライマー処理後塗装し、塗り直しのためブレーキ液ではがしたもの。プライマー(黄色)は、はがれていないことに御注意。

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コメント一覧

1. Posted by エンジニア7   2010年06月09日 11:38
初めまして 私近藤と申します。
某企業にてメカニカル系エンジニアをやっておる者です。

古い内容になり大変恐縮ですが、
私は仕事上、塗装に関して調べています。
よろしければ下記記述での、アンカー効果が無いとの
話しを教えていただけますでしょうか。

表面にきずをつければ食いつきを良くする事(投錨効果と呼んでいた)ができそうに思うが、これは実験により効果が完全に否定されている。

よろしく御願いいたします。
2. Posted by dda40x   2010年06月09日 20:11
近藤様
 接着力は相手の物質と接着剤の親和力で、接着剤自身がちぎれないように結びついている力は凝集力と呼ばれます。
 一般的に、凝集力は接着力よりも小さいのです。すなわち相手に食い込んだ接着剤(塗料も含む)は、接着が剥がれる前にちぎれます。
 なぜ凝集力が小さいのかという理由はいくつかありますが、硬化時の体積変化の効き目が大きいことになっています。どんな接着剤、塗料も硬化時には体積が変化します。

 そこで接着剤にゴムのような弾力性を持たせることに着目しました。すると体積変化によるヒキツレ(内部応力と言います)がほとんど現れません。
 両面テープは軟らかいスポンジのような中間層があります。するとかなりはがれにくくなります。しかし、接着力の方が強いことはよく経験することです。

 塗料、接着剤は薄く塗ると良く付きます。もちろん相手をよく洗浄し脱脂することが前提です。
 この程度の説明でお分かり戴けましたでしょうか。

 接着に関する専門書をお読みになりますと、いくらでも説明があるはずです。

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