2006年11月09日

歯車の潤滑

M5 Worm gear set ウォーム歯車は、スパーギヤに比べて摩擦が多いので、極圧剤が配合された潤滑剤を使用すべきである。自動車のハイポイド・ギヤ(FR車のデフ・オイル)には極圧剤が入っている。これと二硫化モリブデンを使用すればうまくいくはずである。

 模型用の潤滑剤としてテフロン入りグリースと称する物が市場にある。筆者はこれに対して大きな疑問を抱いている。

 テフロンは極圧潤滑には向かないはずだ。層状構造をもたないからである。黒鉛は層状構造を持つが、誰も歯車潤滑剤としては使用しない。黒鉛は50気圧で流動する。鉛筆の芯が滑らかに文字を書けるのは、紙上の摩擦で、瞬間的に50気圧程度の圧力が容易に生じうるからである。

 余談であるが、鍵穴に鍵が挿しにくくなったときは、この黒鉛の粉を使うのが正しい解決法だ。CRCなどを噴射すれば一時的には解決するが、後日ますますひどい状態になる。油分が埃を集めるからである。アメリカで鍵屋に行くと、この黒鉛粉末を噴射するスプレイ(と言っても単なるゴム製の浣腸器みたいなもの)が売られている。ヤスリで軟らかい鉛筆を粉にして、なすり込めば十分である。

 二硫化モリブデンは層状構造を持ち、それが極めて大きな圧力に耐え、層間のすべりを生じながら金属同士の直接接触を阻止する。自動車用品店に行けば、ワイパ・ゴムのビビリを防ぐと称するゴムへの塗布スプレイがある。あれは二硫化モリブデンが主成分である。新しくギヤボックスを組んだときは、それを歯面に付けて、軽く負荷を掛けて慣らし運転すると。数分でよくなじむようになり音が極端に静かになる。

 日本の模型の歯車は、ブラス同士の組み合わせというのが多いが、これは歯車の常識に反する。同じ材質同士では摩擦が大きいことが証明されている。歯車の本を見れば、最適な組み合わせとして、快削鋼とリン青銅の組み合わせが紹介されているはずだ。
 プラスティックの歯車を使うのであれば、熱の逃げやすい金属と互い違いにするべきなのに、守られていない場合が多い。熱は瞬時に発生し、それが逃げられないと歯面の変形を引き起こす。小さいから大丈夫と思っても、ちょっとした過負荷で極めて短時間に起こりうる。お手元の機関車で異音がするものがあれば、多分それが原因だろう。 

 写真は電車の制御機駆動用のウォームギヤ(の廃品)

dda40x at 07:09コメント(2)潤滑  この記事をクリップ!

コメント一覧

1. Posted by 寺久保 敦己   2006年11月09日 11:55
毎回有効情報有難うございます。初めて知ることが大半ですが、目から鱗もあります。二硫化モリブデンは私の仕事の中では大変お世話になりました。工業製品ですが”モリコート”という商品名で売られていたと思います(メーカー名は失念しました)。
カメラのギアトレインに使い、潤滑はもちろん消音効果が絶大で、一般的にプラスティックギアにも問題ありませんでした。まだ重宝しているはずです。
2. Posted by dda40x   2006年11月10日 11:51
寺久保さんこんにちは。
二硫化モリブデンはほんのちょっと塗るだけで十分な効果を発揮します。もったいないので極端に少量を塗布します。

手に付くと、いくら洗っても落ちませんね。よほど粒子が細かいのでしょう。

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