2006年11月05日

スティール・ラジアル・タイヤ

steel radial tire 戦後長らくスティール・ラジアル・タイヤが普及しなかった原因は、おそらく鉄とゴムとの接着性の悪さに起因している。
 
 ゴムと鉄とはくっつかない。しかしゴムと銅とは、化学結合に基づく極めて強力な接着が可能である。それでは、鋼線に銅メッキを掛けたらどうであろうか。このアイデアはタイヤ業界では、最大の発明として、知られている。

 タイヤに入れられているスティール・ワイヤは銅めっきをした上で入れられている。戦前ミシュランがスティールベルト入りタイヤを発明したとき、銅メッキは無かったはずである。戦後特許が成立したはずだが、それには銅メッキのことが書いてなかったと記憶している。浅学にして、この銅メッキを誰が発明したかは知らない。

 ゴムは硫黄を数%入れて加熱し、流動しないようにしている。これを加硫という。この硫黄と銅は極めて強固なイオン結合を作る。これを利用するのだ。

 銅線にゴムをかぶせたキャブタイヤ・ケーブルのゴムが極めて外れにくいことは、古くから知られていた事象である。だから、銅線には紙などを撒きつけてからゴムに封入してある。また、エボナイト(硬質ゴム)と強く接触しているブラス(真鍮)のボルトが外れにくくなるのはよくあることだ。

 1970年代のスティール・ラジアル・タイヤのワイヤは、既に銅メッキであった。現在はブラスメッキになったはずだ。より強度があるからである。ブラスメッキは銅と亜鉛を陽極に並べてメッキするもので、理論的には怪しいところがあるのだが、現実には極めてうまくメッキできる。銅と亜鉛がよくぬれあうからだ。
捨てられているタイヤに切り込みを入れると鋼線に薄くメッキしてあるのがよく見えるのでお試しあれ。

 最近は鋼線とゴムとの接着を界面活性剤で解決する方法が見付かったそうだ。ナフテン酸コバルトというものを介在させる方法である。実はこれが環境にやさしくないものらしく、業界では対応に苦慮している。

 いずれにせよゴムと鋼線とのぬれを改善することが、タイヤ工業の最も大きな問題なのだ。

 ところで、ミシュランが作った鉄道用ゴムタイヤを装備した車両があったのをご存知だろうか。もちろんガイド用の車輪はフランジ付き鉄車輪だが、駆動用、荷重受け車輪はゴムである。どんな音で走ったのであろうか。

 佐野衡太郎氏のBugattiの車輌には、ゴムを挟んだ車輪が装備されている。これは弾性車輪のさきがけとなったものであろう。

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コメント一覧

1. Posted by Jackdaw   2006年11月05日 22:06
銅とゴムがよく接着することは知りませんでした。
真鍮もそうなのですね。ということは亜鉛は影響を与えない(それとも、亜鉛もゴムと密着する)のでしょうか。

ナフテン酸コバルト・・・聞くからに環境に優しくなさそうです。
2. Posted by ワークスK   2006年11月05日 23:19
5 ゴムは、金属材料と違って、経験的にはナマモノという印象ですね。

思い出せば、天然ゴム、合成ゴム、ウレタンゴムが浮かびますけど、台車周りには空気バネのダイヤフラムをはじめとして、高周波成分の絶縁のためにも多用されています。
ゴムのブロックで非線形的なタワミが得られることから、鉄道車両には適したバネのはずですが、実際には余り使われません。これだけで大きなタワミを得ようとすると横にハミ出してしまうということなのでしょうか、ゴムと鋼板とを何段か重ね合わせた「シェブロン・ゴム」というものが流行ったことがありました。多分、dda40x氏のいわれるように銅メッキか何かを施して一体化したのだと思います。「加硫接着」という言葉を聞いた記憶がありますけれど……。
3. Posted by ワークスK   2006年11月05日 23:20
5 アメリカのEMD、4軸ディーゼル機関車の台車(ブロンバーグM型)の枕バネにも使われましたが、いつの間にか従前の板バネに換装されたのは、経年で変形などの不具合があったからだと思います。日本の連結装置の緩衝器でも同じ様な話がありました。弾性を重視すると、特に難しいようです。

ところで、ゴム=護謨は日本語ですね。英語ではラバーrubber、エラスティックelastic、エラストマーelastomerなど、言葉の上でも使い分けが難しいようです。
4. Posted by dda40x   2006年11月07日 11:44
Jackdawさん、ワークスKさん コメントありがとうございます。
真鍮は8割ほどの銅と2割ほどの亜鉛を含みます。ゴムは銅、亜鉛のいずれとも反応し、固着します。亜鉛との合金にすると硬くなって、さらに有利なのでしょう。

そのシェブロンゴムは今でも使われていますね。ALCOの台車には大きく飛び出しています。これは空気との接触面が少ないので永持ちするのでしょう。しかし、確かにブロンバーグ台車のゴムのボルスター・サスペンションは最近見ませんね。
困りました。その台車の在庫があります。切り離してスウィングする板バネを入れてみるべきでしょうか。

自動車のサスペンションにもゴムは多用されています。空気との接触があるので、 5年くらいで寿命が来ます。私はサスペンションリンクのゴムブッシュを全て自力で取り替えます。かなりの手間ですが新車の感覚が戻ります。日本車は多少長持ちしますが、取り替えると、その差にきっと驚かれると思いますよ。

エンジンマウント、変速機マウントもゴムですからすぐ駄目になります。これを取り替えると変速ショックがほどんどなくなります。

ゴムはワークスKさんのおっしゃるように生ものであり、賞味期限があるということですね。


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