2006年10月31日
急カーブを曲がるには
軸重が小さい時はさほど大きな問題にはならない。摩擦力は軸重に正比例するからである。しかし重い車両のときはカーブでの抵抗は無視しえない。市電が交差点を曲がるとき、キュンキュンという音を立てている。あれはこの車輪のスリップ音である。標準軌の半径250Mでさえも、スリップ音が聞こえる。この音をフランジがすれる音だと勘違いする人は多い。超望遠レンズで前方から覗いてみても、フランジ側面が当たってはいない。
しばらく前、近所のボランティア団体で15インチ軌道の豆列車を作ろうということになった。半径4Mを廻る必要がある。いきさつ上、筆者がその走り装置を作る羽目になった。計算してみると、人間が5人も乗っているとその摩擦力はかなり大きく、連結器端での出力500ワット程度の動力車でも、秒速0.5Mくらいが限度であった。要するに摩擦力はすこぶる大きい。並みの動力車では牽けないことが判明したのである。しかも、2台の客車を牽きたいという。
こうなれば、左右の車輪を別回転にする以外ない。近くのNTNの技術者の長と知り合いになれたので、思い切ってお願いしてみた。ボランティア団体ですのでお金がありませんと。
するとその方のお計らいで「研究用」としてサンプル供与をして戴いた。自動車の前輪用複列ボールベアリングその他一切を戴いた。簡単な作図の後、旋盤作業に取り掛かった。熔接機も出力7KWのを別の方から戴いた。
鋼材屋からアングル、チャンネルを買い、チップソウ(鋼材を切る円鋸)で切断、ボール盤で穴を開け、組み立てた。近所の人は鉄工所を開業したと思ったらしい。1ヶ月ほどで2両分が完成した。
内側揺れ枕付きで、この台車1つが39kgある。早速車体を取り付け試運転した。半径4Mでも走行抵抗は直線とほとんど変わらなかった。