2006年10月30日

スラックとカント

superelevation 鉄道模型を楽しむ人が、実物を縮小した世界を実現したいのは当然である。鉄道の知識が増えてくると、鉄道工学書を読むようになる。するとスラックとかカントという言葉に出会う。実物の線路脇にはスラック値、カント値が表示された標識があり、それを見て納得するようになる。

 模型でもそれをやってみたくなるが、前述したようにスラックはすでにレイル・ゲージとホィール・ゲージの差が大きいのでつける必要はすでにない。もし、さらにスラックをつけると、二軸台車の後ろの車輪はカーブでより内側に引き寄せられる。内外レイルの行路差により、その現象が起こる。すると台車はますます外側に向き、フランジが接触することになる。軸数の多い蒸気機関車の場合も、ほとんどはスラックをつける必要がない。むしろ、機関車の内部の設計で解決できる場合が多い。

 カント(米語ではsuperelevation)は全く意味がない。遠心力を計算してみると、スケールスピードでは重力加速度の数百分の一以下の値となる。要するに外側のレイルを軌間の数百分の一以下しか持ち上げる必要がない。これは誤差範囲以内であろう。

 すなわち模型でのカントは「気分の問題」である。外側が持ち上がっていると気分がよいのである。筆者のレイアウトにも、ごくわずかであるがカントはつけてある。Sカーブの前後で列車がうねる様子が見られて楽しい。ビジターが喜ぶ箇所である。

 あまり調子に乗ってカントを大きくすると、列車が内側に引き倒される可能性がある。上り勾配でスパイラル線であれば、むしろ逆カント(negative superelvation))が望ましい。観客から見えない部分であればぜひ逆カントにすべきである。  

 実物でも超低速運転の鉱山列車ではカントを逆につける例がある。アメリカ東部の炭鉱地帯の上り専用のスパイラル線では、そのような例が多く見られた。乗り心地を考えなければ、そのほうが安全であるのは自明である。

 ちなみに、かの有名なテハチャピ・ループではカントは少ない。

 写真はSカーブを通るピギ−バック列車

dda40x at 10:30コメント(0)線路 | 工学 この記事をクリップ!

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