2006年10月24日

ロウ以外の材料

 GTEL truck sideframe
 ロウを用いて空洞を作り、そのなかに熔湯を流し込むという基本的な概念は、おそらく2000年以上前から存在していると思われる。

 「奈良時代の仏像もロストワックスでできている」と言うと驚かれる方も多いはずだ。粘土で作った内型にロウを塗り、彫刻を施す。それにさらに粘土を塗りつけ、外側で大規模な焚き火をすれば空間ができる。そこに融けた銅合金を流し込んで外型を壊せばよい。

 日本ではロストワックスの基本特許が成立していない。戦後、アメリカの業者が特許をいくつか申請したらしいが、全て拒絶されている。そのとき、この歴史的事実を示すと出願者は退散したそうだ。これは特許庁の役人の談話としてO氏から聞いたことである。

 ロウは取り扱いが容易で便利な材料だが、熱膨張率が大きい。すなわち、加熱すると埋没材にひびが入る可能性がある。だから、加熱速度が非常に大きな問題になる。

 他にはよい材料がないのだろうか。尿素がよいことが分かっている。尿素は133℃で融解し、簡単に熱分解する。しかも熱膨張率が極めて低い。ただし、水に溶けやすいので、水ベースの埋没材では扱えない。水中で尿素が使える工夫があればロストワックス技法は大きく変化するだろう。

 

 簡単に書くつもりであったが、ずいぶん長くなった。ロストワックス鋳物を手にご覧になるとき、じっくり眺めて戴きたい。そのなかには長い歴史が潜んでいるのだ。

 写真は3-unit GTELの台車。Billの原型を用いて鋳造した。   


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コメント一覧

1. Posted by 浮津 信一朗   2006年10月28日 21:52
 鋳造に関しては全くの門外漢なので、コメントも忘れて読み入っていました。
そういえば、昔、鉄道模型社で手に入れたロストパーツに銅色で硬いものがあった様に記憶しています。あれはベリ銅だったのでしょうか? 模型社で作ったものかどうかは分かりません。
シリコンゴムによる型取りは、ウレタンレジンで複製パーツを作るためにやったことがありますが、これはプラモ屋さんの方がだんぜんうまい様です。あれは脱泡がカギですね。
2. Posted by dda40x   2006年10月29日 22:31
それは多分違いますね。私も見覚えがあります。ただ表面が赤いだけです。塩酸ででも洗ったのでしょう。表面も内部も「ス」がありました。ベリ銅には「ス」が出来ません
脱泡用に、大きな真空ポンプを用意しています。これは埋没材の充填時に使います。
3. Posted by 佐々木精一   2009年10月22日 22:03
 奈良時代にはロストワックスで仏像を作り、大仏を鋳造して、戦国時代には地方の武士までもが個々にロストワックス製法の仏像を持仏として持つようになりました。そんな日本で、ロストワックス製法の基本特許が成立する訳がありませんね。
 数年前の事ですが、江戸時代の紀行家・菅江真澄の「雪の出羽路」の中に馬頭観音石碑の記述を見つけました。
 その場所が父方の従兄弟の家から数百メートルと離れていないこと、川上幸義先生が書き残した1100系の内務省千住工場製Cタンクの目撃地点から数キロメートルであること、羽後交通横荘線大森駅跡からも数キロメートルであること、などと魅力的です。従兄弟に連絡を取って御世話になることとなり、出掛けました。
 ところが、事前に町の教育委員会とも連絡を取った為に、地元の菅江真澄研究会の方から、千手観音の仏像の鑑定を依頼されることになりました。
拝観すると十数センチの実に美しい観音様でありました。
戦国時代に羽後国の一部を治めていた小野寺一族ゆかりの鳥海山修験の持仏か神社の神体と推測されました。
 彫刻技巧も優れており、戦国時代に出羽の奥地にも、かような優れた仏像が達していたことが知れました。
 ロストワックスの技法は、模型の本のみならず、仏像の本や、指輪やブローチの作り方の本などに学んでも良いと思います。
 奈良の大仏の製法については、草思社の「日本人はどのように建造物をつくってきたかシリーズの2奈良の大仏」が解かり易く参考になると思います。図版も楽しいです。
4. Posted by dda40x   2009年10月23日 07:07
> ロストワックスの技法は、模型の本のみならず、仏像の本や、指輪やブローチの作り方の本などに学んでも良いと思います。

コメントありがとうございます。
 模型のロストワックスはどうしてもブラスにこだわる人がいるので難しくなります。これが貴金属であれば、非常に簡単です。昔のTMS(100号前後)には、そのあたりのことを誤って解説した記事がありました。湯流れのよい銀を使うとありましたが、銀だと温度管理がいらないので簡単だということなのです。
私はべリ銅以外使いたくないですね。
5. Posted by 佐々木精一   2009年10月24日 02:33
生半可にロストワックスを知っている為に製品化したトンデモナイ特製品とされるモノを見たことがあります。
もとよりロストワックスではなさそうですが、当人は大真面目でロストワックス・パーツと呼んでいました。
アメリカのプラの部品を特別に吹いて貰ったと言っていました。
スだらけで、凄いシロモノでしたが、当人は大真面目だったのです。少なくとも私には、そのように見えました。
ブラスのロストワックスだったとしても不良品そのものです。
彼が騙されたのか、製造元がはねたモノを貰い受けて特製品を装ったのか。知っていて知らぬ顔をしていたのか。
ともあれ情けない話です。
半可通が、如何に愚かな状態を醸し出すかを記して置きたいと思います。

ブラス以外を何に求めるか、ワックス以外を何に求めるか…。勉強させて頂きたいと存じます。

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