2006年10月19日

ブラスの鋳造は難しい

電気炉 ベリ銅とブラスとは何が違うのだろうか。
 
 ブラスは黄銅と呼ばれ、銅に亜鉛を混ぜたものである。快削性を持たせるには鉛を添加する。亜鉛の代わりにスズを入れると青銅になる。

 青銅と較べるとブラスの実用化はかなり遅い。ブラスが大量に用いられるようになったのはせいぜい300年くらい前からである。イギリスは亜鉛の製錬法を東洋から導入し、大英帝国の発展とともにブラスは世界中に広まった。

 なぜ亜鉛は製錬が難しかったのか。それは沸点が907℃と低いからである。融点は420℃である。還元炉の中で亜鉛が生成するのと沸騰するのは殆ど同時に起こりうるからだ。せっかく還元して生成した亜鉛は、煙とともに消え、煙突の上部で青い火を上げていたのだろう。

 金属が沸騰する様子を見たことがある人は少ないはずだ。亜鉛の兄弟元素の水銀は357℃でポコポコと音を立てて沸騰し、蒸気を冷やすと忽ち液化する。減圧下ではかなり低い温度で沸騰する。

 燃えさかる火の中に亜鉛のたくさんついた釘を入れると亜鉛は気化し、青い炎を上げて燃える。昔、暖炉の中でよくやったものだ。

 融けたブラスの温度が900℃に近くなると明らかに亜鉛が気化し始める。温度を上げないと粘り気が大きいし、上げると亜鉛が気化する。ぎりぎりの温度で鋳造するのだが、泡が入る可能性は否めない。特に真空鋳造では深刻な問題である。また、高温では埋没材と反応して表面が変化する。

 ベリ銅は全く泡が出ないので、温度をかなり高くできる。また、埋没材と反応することもないので、素人でも美しい鋳物ができることになる。O氏がおっしゃるには、「ブラスで良い鋳物を作ろうと思うのは、はっきり言って、無いものねだりだね。」

 写真は電気炉。煤けて黒くなっているのは脱ロウ後も多少残っているロウが燃えた時のもの。

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コメント一覧

1. Posted by sec   2006年10月19日 22:45
5 毎度凄い物を見せて頂いてます。

色々この所の装置など仕事先で見た事がありますが
この様に説明して頂けると嬉しいです

この形の電気炉
十年以上前には沢山作っていましたので懐かしく見ています

もう、プロ以上の幅と深さの情報量を駆使されている作品が続々出てくるので
刺激的です、感謝です

2. Posted by dda40x   2006年10月20日 07:39
secさんおはようございます。

もう10年近く、自宅での鋳造は休止しています。忘れそうになっていることを、備忘録としてまとめておいたのを、細切れにしてUPしています。

電気炉のコントローラーを作られたのですか。電気炉は温度が上がると漏電する物なので、コントローラーの絶縁方式が難しいですね。

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