2006年10月12日

ロストワックス鋳造法

Billの工房 錆について書き始めたら、読者数が3割以上も増えたので驚いている。また、いろいろな方からコメント、メイルを戴き、感謝している。

 取り挙げる内容についてはいくつかリクエストもあり、その順に書いていく。
 
 最初の頃のロストワックス鋳造の話を読まれた方から、もっと詳しく書くよう要請があったので、しばらくはその話をしたい。

 ロストワックスは熱によってロウを流し出して作った空隙に、融けた金属を流し込む鋳造法である。厳密にはinvestment鋳造法という。investmentとは詰めたものという意味である。ここでは石膏などの材料をいう。

 まず、このウェブサイトをご覧戴きたい。これは宝飾用銀製品を作る方法を示している。ただ、テクニックを紹介しているだけで、技術的なことは何も明らかにされていない。写真を見て判ることは、ピンクのロウを加工して造形し、埋没材(investment)に埋め、乾燥、加熱してロウを流し出す。焼成して熱いうちに融けた銀合金を何らかの方法で強制的に流し込み、その後、その鋳型ごと水中に投下して破砕する。磨いて出来上がりというだけである。

 技能的にはこれでよいが、技術的にはかなりの工夫が必要である。わが国では「技能」という言葉と「技術」という言葉が混同されている場合が多い。殆どの場合「技能」と言うべきところを「技術」と表現しているように感じている。

 「技能」は経験のあることを間違いなく実行する能力であり、「技術」は経験のないことまで、持っている知識を活用して演繹する能力である。いわば、科学的思考力を用いて見えない山の向こうを透視する能力であるとも言える。

 
 鋳造ほど難しいものはないと思う。筆者は3人の優れた鋳造技術者に出会った。
 最初はBillである。彼は「一応大学には行ったのだ。でもあそこで教えることは知っていることばかりで、意味がなかったからやめたよ。」と言っていた。確かに金属加工、鋳造、鍛造については大変な知識の持ち主で、新しい情報も雑誌で得ていた。何を聞いても、非常に筋の通った答が返ってきて、いつも感心した。
 プラスティックを使った鋳造法はかなり古くからやっていたようだ。

トラックバックURL

コメント一覧

1. Posted by 愛読者   2006年10月12日 07:48
内容が深く、客観的であることに毎回感動しています。
他の主観的なサイトとは根本的に違う「何か」に惹かれています。
これからもよろしくお願いします。

2. Posted by dda40x   2006年10月12日 21:03
愛読者さん、こんにちは。
客観的であるというのは私の職業上のくせだと思います。
特に意識しているわけではありません。
ご期待に沿えるようにしたいと思います。

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
Recent Comments
Archives
Categories
  • ライブドアブログ